地球の神話には多数の神が登場する。しかし、彼らは全て「神を超越した存在」から命令されてこの星に降り立った、とされている。この「神を超越した存在」(宗教学者達は便宜的に「超神」と呼んでいる)について知識を得ることは不可能である。超神について知識を得るためには、そのことを神々から聞き出すしか方法がない。だが、神々は超神に関して何も語ろうとしない。また、地球に神々が現れる以前に、別の文明──一般には「超古代文明」とされている──が存在している可能性も指摘されているが、その真偽は不明のままである。 |
地球に降り立った神々は、その偉大なる力を用いてこの地球に生命をもたらした。その創造された生命の中で、人間やエルフなどのヒューマノイド、そしてデーモンのような知的生命体が地球の上に文明を築くのに成功する。この文明は魔法に極度に依存しており、その故に第1魔法文明とされている。魔法が使えるかどうかは、各個人が生まれ持つ体質によって先天的に決定されるので、魔法が使えなかった者達も多数存在した。そして、第1魔法文明期では、魔法が使えない者は奴隷という身分に置かれていた。この第1魔法文明は魔法を基準にした実力主義の社会だったのだが、基準を超えられずに落ちこぼれとなった人々は動物以下の扱いしか受けなかったのである。 だが、時が経つにつれ、これら落ちこぼれの人々も団結を強めていった。この「落ちこぼれ」に相当する人々のことを大地の民、第1魔法文明で繁栄を謳歌していた人々のことを天空の民と呼んでいる。この両者の中は年を追うごとに険悪となった。そして、天空の民のとある貴族の幼児が大地の民のテロによって殺害されたのを契機に、2つの民族の大戦争が始まった。旧太陽歴2604年5月20日のことである。 |
開戦直後は、この戦争は天空の民が圧勝するものと思われていた。しかし、大戦争が始まってから間もなく、道徳神ラミアの呼びかけに応じ神々の約半数が魔法文明を見限って大地の民の側に参加した。それと同時期に、第1魔法文明による支配の外側で独自の文化を築いていたエルフなど人間以外のヒューマノイド(以降「亜人間」と表記)達やデーモン達も、この大戦争の最中に二手に分かれて争うようになった。こうして、この戦争は文字通り「世界を二分する戦い」へと変化した。 |
この大戦争は1000年以上もの間続けられた。そして、2人の偉大なる英雄同士の対決によってその幕が下ろされることになる。 天空の民の英雄は、リーダーであったルテナエア・ベルフェランザという名の老魔術師だった。統率力・カリスマ性・魔力・知識では及ぶ者の無い逸材だった。そして、彼は天空の民から寄せられた期待を裏切る事なく、世界各地で華々しい戦果を挙げた。彼が登場した時には、誰もが──大地の民ですらも──天空の民の勝利を予期した。 だが、ルテナエアが天空の民のリーダーになってから6年後、大地の民のリーダーにナディール・ラント・インダールという名前の少女が就任した。もう1人の英雄である彼女は、天空の民との戦いに新たなる兵器を次々と開発した。その1つが、現在我々が使用している色彩宝石魔法である。彼女は天空の民の専売特許だった魔法の技術を極秘に盗みだし、知性を持つ生物ならば誰でも使用できるように改造した。ナディール・ラント・インダールの登場と活躍によって、大地の民は急速に力を盛り返し、10年も経たないうちに形勢が逆転、今度は天空の民の側が滅亡の危機へと追いやられた。 |
そこで、ルテナエアは一計を案じた。大地の民の一部を買収し、「大地の民が開発した技術を天空の民に売り渡そうとした」という濡れ衣を彼女に着せることに成功した。その後、彼女は同じ大地の民の手によって逮捕され、間もなく処刑された。享年24歳。彼女の亡骸がどうなったかについては諸説が乱立しており、正確な事実は未だに闇の中である。 しかし、ルテナエアの奇策も、大地の民による怒涛の攻勢を食い止めることはできなかった。そして、彼女が処刑されてから16年後に、大地の民は天空の民を地球から追い出すことに成功。この年(旧太陽暦3700年)が新太陽暦1年となった。そして、一連の戦いは地球解放戦争と呼ばれるようになる。 |
天空の民のうち和解に応じた者達は地球に留まったが、第1魔法文明に参加したその他のヒューマノイド、デーモン、そして天空の民を支援した神々は荒涼たる月へ追放された。そして、ルテナエアは、自らの魂を『ルナティック・ヴェノム』という名前の呪文書の中に封じ込めた。その本を読んだ者を魅了したら、犠牲者に封印を解除させて復活を果たし、その儀性者を自分の復讐と野望の道具として使わせようとしたのだ。彼の目的は破壊神レゼクトス──天空の民にとっての戦争神を降臨させ、地球を破壊・征服することであった。このルテナエアの復讐と野望の道具として、数多くの魔導師達が犠牲となり、罪のない普通の人々が、彼の復讐劇に巻き込まれて殺された。ルテナエアによる復讐劇は、勇敢なる冒険者10人の戦いによって彼が消滅する4998年までまで続けられた。 大地の民を支えた神々と中立神達は地球に残り、大地の民からの崇拝と信仰を集めている。なお、地球解放戦争後、今日まで続く文明のことを第2魔法文明と呼ぶ。 |
名前 | 階級、神話上の性格 |
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教義・主な信者など | |
運命神ゾルトス | 主神、唯一の中立神 |
地上召喚不可能。 この世界に「時間」をもたらした神で、現在でも時の流れを司っている。超神に次いで高い地位が与えられている。教義が存在しないにも拘らず神殿や司祭は存在し、運営には国の保護が与えられている。 | |
秩序神ウェリナス | 主神、大地の民に協力した神々のリーダー、大地の民の始祖 |
地上召喚時には40歳代の男性裁判官の姿で現れる。 社会制度や秩序の守護者で、秩序や社会通念などを尊重することを最大の美徳とし、道徳よりも秩序を重視する。また、反秩序的行動(特に犯罪)を嫌悪している。戦争に対しては特に明確な態度を示していない。信者は官僚・裁判官・貴族が中心。 | |
戦争神マレバス | 主神、大地の民に協力した神々の戦争指導者、ウェリナスの弟、天空の民にとっての破壊神 |
地上召喚時には30歳前後の騎士の姿をとる。 戦争や兵士達のの守護者であるが、守護対象は勇敢且つ正々堂々とした戦いに限定されており、謀略を弄することや非戦闘員に対する殺戮・略奪を嫌っている。なお、自殺は容認されているが、日本の武士道のような独特の自殺文化(ハラキリなど)は形成されていない。軍人が主な信者。 | |
道徳神ラミア | 主神、ウェリナスの妻、大地の民の始祖 |
地上召喚時には40歳代の白ローブを着た女性の姿で現れる。 「汝の欲せざるところを人に施すことなかれ」など、社会通念上正しい行為を推奨する神で、全ての人を薄く広く守護する。ウェリナスとの違いは、秩序よりも道徳を上位に捉えている点である。自衛戦争のみを容認している。エルドール大陸では最も多数の信者を擁する。 | |
知識神シャーンズ | 主神、大地の民に協力した神々の参謀 |
地上召喚時にはローブを着用した男性老人の姿をとる。 知識と書物の守護者で、知識の収集とそれに基づいた冷静な思索を賛美する。戦争に対しては、文化財の破壊を理由に否定的な立場をとることが多い。文科系の学者(特に哲学者など)が主な信者。 | |
農業神ファルーザ | 主神、ラミアの妹 |
地上召喚時には全裸の中年女性の姿で現れる。 農業や自然環境全体の守護者で、自然と調和した生活を送ることを美徳と説いており、テンバーン王国やダルザムール帝国などで進んでいる工業化には公然と反発している。戦争に対しては、農村の荒廃を理由に否定的な立場を貫いている。封建制国家ではラミアに次いで多数の信者を抱えている。 | |
商業神クリーヴス | 主神、大地の民に協力した神々の経済顧問 |
地上召喚時には算盤を手に持った中年男性の格好をとる。 人と物と情報の流通が幸福を実現すると説き、交易活動や旅行を高く賛美している。また、その教義から考えて、商業の守護者としての顔も持つ。戦争に対してはやや否定的。商人や冒険者が主な信者で、伝導師の数は全宗派中最多。海洋都市同盟の国教。 | |
芸術神メルデューサ | 主神、究極且つ至高の芸術家 |
地上召喚時には20歳前後のローブをまとった女性の姿をとる。 芸術を司る神で、己の感性に従って芸術作品を創造することを最大の美徳とする。ここで言う芸術作品とは絵画・彫刻・建築物・楽曲・詩歌などを指すが、書籍は除外される。戦争に対しては無関心。芸術家が主な信者だが、その数はきわめて少ない。 | |
技術神ナランド | 主神、ドワーフ族の始祖 |
地上召喚時の姿はドワーフそのまま。手にはコバルト製のハンマーが握られている。 科学技術を司る神で、新技術の開発とその鍛練、知識の蓄積及びその活用を美徳と考えている(思索よりも実践を重視している点がシャーンズと違う)。戦争に対しては、「自ら鍛え上げた専門技術を披露する場の1つ」と捉えている。理系の学者や鍛冶屋、ドワーフが主な信者。ダルザムール帝国の国教であり、エルドール帝国とテンバーン王国では国教に準じる扱いを受け保護されている。 | |
魔法神パサロビッツ | 主神、魔法を人に教えし者 |
地上召喚時にはローブを深々と被った人物(正体不明)の姿をとる。 魔力及び魔法(魔法技術)の守護者で、魔術師に対して手厚い保護の手を差し伸べている。この世界における魔法習得のシステム上、この神に仕える神官は殆ど存在しない。魔術師が主な信者で、魔術師ギルド内には必ず祠が設置されている。 | |
混沌神ニスタット | 主神、ウェリナスの腹違いの弟 |
正体不明の神。信仰形態や信者数は謎に包まれている。 | |
自由神メロマラ | 主神、ウェリナスお呼びニスタットの腹違いの妹 |
いわゆる「邪神」の1つ。地上召喚時の姿は巨大なツインヘッドスネーク。 各個人の自由意志の存在を認めた上で、それを最大限尊重する生き方を推奨する。法律に対して否定的な見解を採る点や、統計的に見てメロマラ信者の犯罪発生率が際立って高い点などを理由に、大抵の国では布教が禁じられている。しかし、どの国にも信者は存在する。 | |
破壊神レゼクトス | 主神、天空の民にとっての戦争神 |
いわゆる「邪神」の1つ。地上召喚時には50歳前後の男性蛮族の姿をとる。 戦争の守護者という点ではマレバスと変わらないが、謀略、無差別殺戮を容認し、自殺を否定している(=生きていてこそ復讐の機会が訪れるという発想)点が大きく異なる。また、地球に残されている神と大地の民に対しては、徹底した絶対戦争の遂行と彼らの根絶を提唱している。その結果、地球でレゼクトスを信仰する者は無差別テロなどの破壊工作に走ることが多くなり、「破壊神」として見られるようになっている。 | |
植物神エルフィール | 従神、エルフ族の始祖 |
地上召喚時には全裸で全身緑色のエルフの姿をとる。 植物と森の守護者で「人間よ、自然に帰れ」をスローガンに掲げている。その他の教義はファルーザと類似。知識人以外のエルフや猟師達が主な信者。ナランド信者とは教義面で激しい対立を引き起こしており、このことがドワーフとエルフの相互不信を引き起こしている。 | |
伝令神アル・ラレオス | 従神、アーラエ族の始祖 |
地上召喚時には虹色の翼を生やしたアーラエの吟遊詩人の姿をとる。 伝令達の守護者で、基本的な教義はクリーヴスと全く同じ。信者の大半をアーラエが占めている。また、エルドール大陸東南部にあるペルフィット王国では国教に準じた扱いを受け保護されている。 | |
河川神アクアルムス | 従神、リザードマン族の始祖 |
地上召喚時には透き通った男性リザードマンとして現れる。 河川・湖沼・湿原・船舶の守護者で、教義は商業神クリーヴスと類似。信者の大半をリザードマンが占めているが、河川を利用する運送業者・漁師の間にも信者が見られる。 | |
海洋神マルリス | 従神、マーマン族の始祖 |
地上召喚時には大型の女性マーマンの姿をとる。 海洋と海に生息する生物達の守護者で、基本的な教義は「農業神ファルーザ・海洋版」と呼ぶべき内容。信者はマーマンと海洋を利用する漁師、テティス諸島の住民など。 | |
機械神ウロボロス | 主神、天空の民に協力した神々のリーダー、天空の民の始祖 |
いわゆる「邪神」の1つ。地上召喚時の姿は巨大な機械竜。 秩序神である点はウェリナスと同じであるが、秩序は道徳に対して相対的に優位だと考えるウェリナスに対し、ウロボロスは国家の定めた法律とそれに基づく秩序を唯一且つ絶対の価値基準であると捉えている。実は、天空の民の間でも、ウロボロス信者はウェリナエ信者と比較して圧倒的に少なかったのだが、ウロボロス信者による反乱が成功し政府内からウェリナス信者が一掃されたため、この神が天空の民にとって唯一の秩序神となった。 | |
炎の竜神タンカード | 亜神、テンペスタ家の守護者 |
シルクス近郊にある火山ファリスに生息する古代竜。 火山ファリスとその周辺の自然及び住民、そしてシルクス帝国皇室の守護神。フェニックスを一度に30体まで召喚できたり、神話級武器を作成できたり、タングステンを瞬時に蒸発させるほどの高熱ブレスを吐いたりすることができる。非常に短期で猛々しい性格だが、その怒りを破壊活動に向けることはない。教義はマレバスとファルーザを足し合わせた内容。この竜の血はシルクスの封建領主・テンペスタ家に流れている。 | |
氷の竜神バソリー | 亜神、ルディス家の守護者 |
シルクス近郊にある永久凍土の岬に生息する古代竜。 永久凍土の岬周辺の守護神でもある。全ての物質の分子活動を停止させることができるブレスをはいたり、神話級防具を作成できたり、半径5km以内に吹雪を巻き起こしたりと、その戦闘能力は炎の竜神に匹敵する。また、この竜の頭には膨大な量の知識が詰め込まれており、知識の豊富さにはどの時代のいかなる賢者でもかなわないと言われている。教義はシャーンズとラミアを足し合わせた内容。この血は現在のルディス家へと流れている。 |