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設定資料集・宗教

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神殿の職制

 各神殿ごとにカタカナでの呼び方には差異が見られますが、作品中では読者と作者自身の混乱を避ける為に、全神殿について以下の通りに呼び方を統一します。なお、「神官」という言葉は、本来は司教・司祭・助祭の3種類の聖職者を意味しますが、しばしば「聖職者」と同義に使われています。

最高司祭/教皇 〜 枢機卿 〜 大司教 〜 司教 〜 司祭 〜 助祭 〜 一般信者


神殿の組織

 神殿の組織は下記の通り。これは全神殿共通であり、新興宗教団体も例外ではありません。神殿組織が確立されたのは今から4000年程前だと言われています。

総本山 〜 教管区中央神殿 〜 神殿 〜 一般信者


総本山
 各大陸に各神殿毎に1つずつ存在します。地球全体の総本山は原則として未設置(※)。最高司祭(教皇)が責任者となります。
 エルドール大陸とその周辺地域における各神殿の総本山の配置場所と、新太陽歴4999年1月1日時点の最高司祭名は以下の通り。

配置場所(現所属国)新太陽歴4999年1月1日時点の最高司祭名(年齢/性別)
運命神ゾルトス主神サロニア(デフルノール王国)※ラスター・デュライ(66/両性具有)
秩序神ウェリナス主神メテス(メテス聖王国)無し(枢機卿7人による集団指導体制)
戦争神マレバス主神オルガダ(オルテス帝国)ウィリアム・ブライトン(70/男)
道徳神ラミア主神トロイア(トロイア王国)アリス・ハーヴァー(55/女)
知識神シャーンズ主神ラーダ(ラーダ国)フェミル・ハウゼン(109/男) ※大地の民とダークエルフの混血
農業神ファルーザ主神ガイウス村(デフルノール王国)オスカー・ハーメル(60/男)
商業神シャーンズ主神オーバーン(テンバーン王国)カルトリア・ルードン(50/女)
芸術神メルデューサ主神レナール(ラドン帝国)無し(前任者が4998年12月20日に死去、現在選定中)
技術神ナランド主神ナロン(ラドン帝国)コルネオ・フランロッド(97/男) ※ドワーフ
魔法神パサロビッツ主神リマリック(シルクス帝国)無し(最高位は枢機卿)
混沌神ニスタット主神不明不明
自由神メロマラ主神不明通称「サラお姉様」(20代/女) ※大地の民とエルフの混血
破壊神レゼクトス主神不明通称「白喪服の紳士」(60代/男)
植物神エルフィール従神ユグドラシルの森(オルガダ帝国東方)ナーシウス・ミーミル(597/男) ※エルフ
伝令神アル・ラレオス従神ゴムラン山脈(レゾルシン王国西方)ジョセフ・アロット(30/男) ※アーラエ
河川神アクアルムス従神ナスタ(エルドール帝国)アデル・クローディス(71/男) ※リザードマン
海洋神マルリス従神セルド(セルド海洋国)メルティーナ・バニスター(29/女)
機械神ウロボロス主神無し(組織が存在しない)無し(組織が存在しない)
炎の竜神タンカード亜神シルクス(シルクス帝国)ジョン・フォルト・テンペスタ(49/男)
氷の竜神バソリー亜神シルクス(シルクス帝国)ステファナ・ルディス・テンペスタ(47/女)

※運命神ゾルトスに限り、「地球全体の総本山」がデフルノール王国領サロニアに設置されている。

教管区中央神殿
 原則として、神殿組織における教管区の境界線は各国の国境線と同じ。教管区中央神殿は首都に設置されています。枢機卿や大司教、司教が責任者となります。
 神殿の活動は教管区単位に行われており、聖職者達は必要に応じて教管区に属する国家のためにも働いています。神殿が超国家的に行動を起こすことは珍しく、最高司祭が単なる名誉職になっているケースが多いようです。だが、タンカード、バソリーに代表される13体の不死生命体タイプの亜神の場合は、信者の分布がある一定の地域に限定されているために教管区は設置されておらず、他の神殿と比較して最高司祭の権力が極めて強大なものとなっています。

神殿
 信者100〜5000人あたりに1個の単位で設置され、司教やそれ以下の地位の聖職者達が統括しています。各神殿の規模は人口密度や場所によって大きく異なります。農村部に設置されている道徳神ファルーザの神殿は、祠と全く変わらないほどみすぼらしい作りであることも多いようです。
 また、神殿が置かれているからといって神官が常駐しているとは限りません。教管区の中を複数の巡回区に分割し、各巡回区に司祭(助祭)を1人だけ配置して布教活動を行わせる宗派も見られます。

神官の日常業務

 神官達が行っている仕事は、基本的にその神殿の教義に沿った内容となっています。
 例えば、農業神ファルーザの場合は、布教活動や農民に対する農業技術指導や超低金利融資(凶作時に種籾を貸し出したりしています)、農村における長老的存在、村長不在時の臨時村長職への就任などが主な仕事となります。神官であるが故に一般市民(特に同一宗派の信者)からの信頼は厚く、離婚調停や他村との紛争解決に借り出されることも珍しくありません。また、農民達が政府に対して大規模な請願活動を行う時にも、神官を先頭に立てることが一般的になっています。神官には一定の不逮捕特権が認められており、身分制度が厳しく農民が領主に対して口出しできないような状態に置かれている国であっても、神官の口を介することによって、農民達は自らの意見を領主達に伝えることができるようになっています。領主達も、住民からの尊敬を集めている神官を逮捕することはできないのです──法的にも政治的にも。
 基本的には、神殿が地域社会の潤滑油的な役割を担っていると考えれば問題ありません。
 シルクス帝国など一部の国家では、政府の業務を神殿に委託しているケースが見られます。この場合、神殿の重要性は他の国々と比較して更に高まることになります。

神殿の財源

 神殿の財源は以下の5つからなります。

(1)神殿が保有する領地からの地代収入(≒租税)
神殿が封建領主を兼ねていることは結構多い。
(2)神殿が作成した各種製品・サービスの売上金
封建体制が崩れている国においては、この収益が重要な意味を持ってくる。
(3)政府からの援助・給与
運命神ゾルトス、知識神シャーンズ、技術神ナランドなどの各神殿では特に多い。
(4)一般信者からの寄付・贈与・遺贈
ラミア神殿や新興宗教団体の主な財源である。
(5)冒険者として活動している聖職者からの寄付・贈与
運任せの財源であり、財務担当者は誰もこれを当てにしていない。


異端審問制度

「異端」とは何か?
 そもそも、「異端(heterodoxy)」という言葉は、「その世界や時代で正統と考えられている信仰や思想などからはずれていること(『岩波国語辞典』より抜粋)」を意味します。
 宗教において「正当」と「異端」の区別は徹底して行われ、異端とされた者は、異宗教の信者や分派に属する者以上に激しく憎悪され、しばし追放されたり処刑されたりするなどの迫害を受けていました。特に異端者への迫害が厳しかった17世紀までのキリスト教世界においては、異端派の人々やその他の一般市民達の多くが異端審問や魔女裁判──異端審問が変質した裁判──によって「有罪」とされ、次々と火刑台に送られていたのです。「異端者に対する扱いは異教徒に対する扱いよりも厳しい」と言われており、30年戦争(1618−1648)やアルビジョワ十字軍(1181、1209−1214、1226−1229)では、民間人を含む異端者達に対し、神の名の下に合法的な殺戮が行われていました。

「異端審問制度」とは何か?
 異端に属する宗派を信奉する異端者を摘発し、彼らを根絶する目的で行われる刑事裁判制度。実際には、異端者だけではなく異教徒達も弾圧対象に加えられることも多かったようです。日本では、江戸時代に展開されたキリシタン弾圧が類似例として考えられます。

 エルドール大陸にも異端審問制度は存在しています。新太陽暦4761年、リマリック帝国がバディル勅令を公表し、帝国内における異端派の弾圧と根絶の必要性を説いて以来、13都市に異端審問所が設置され、数千人の異端者達の処断を行ってきたのです。リマリック帝国における異端審問制度は、その後エルドール大陸の各国に広がり、ダウ王国、ベルナス王国、メテス聖王国でも実施されるようになっています。

どういう神・宗教が異端とされているのか?
 リマリック帝国などで行われていた異端審問制度では、以下に示す神及び宗教が異端とされていました。

 (1)月に追放された神々
 (2)自由神メロマラなど地球に残った14体の「邪悪神」
 (3)リマリック帝国に反抗的な思想を掲げる新興宗教団体
 (4)リマリック帝国に反抗的な思想を掲げる政治団体


 (1)(2)(3)が異端とされることについては、特に異議が無いと思われるでしょう(「異端」という概念そのものに対する嫌悪感とかは別問題にして)。
 問題は(4)です。リマリック帝国では、宗教団体だけではなく、政治団体に対しても異端の指定がなされていたのです。政治思想に対して比較的寛容な政策を続けているテンバーン王国、イオ王国(後のイオ=テード同君王国)、エルドール帝国からはこの点について激しい反発の声が上がっており、リマリック帝国と各国との間に潜在的な不信感を植え付ける結果となりました。
 政治思想が異端とされた背景については、バディル勅令制定前後の公文書に欠損が多く、バディル勅令の制定過程や立法者の意図が不明であるため、未だに詳しいことは判明していません。バディル勅令起草の責任者であったケネス・バディル侍従長(4709−4775)の過去に謎を解く鍵があると言われており、現在、世界各地の歴史学者・宗教学者が、ケネス・バディルに関する文献を血眼になって探しています。

現在の異端審問所
 リマリック帝国時代には各都市に設置されていた異端審問所ですが、リマリック帝国が滅亡しシルクス帝国が建国されてからは、帝国南西部にある港湾都市エブラーナの異端審問所に一本化され、異端審問所の運営に携わる職員や裁判官も大幅に入れ替えられました。異端審問所の運営目的も、その対象を宗教ではなく政治思想を中心に変えつつあります。だが、その運営方針を巡っては、シルクス帝国の2大宗派であるタンカードとバソリーの聖職者達が内部対立を起こしており、4999年4月には対立の劇化が原因で異端審問所の活動が一時停止に追い込まれるという異常事態に発展しました。その後、異端審問所のナンバー11に過ぎなかったデスリム・フォン・ラプラス書記室長(4959−)の指揮によって、異端審問所の組織改革が開始されています。
 一方、ダウ王国では、4922年11月9日に最後の死刑判決が下されてからは1件の審理も行われておらず、その存在は形骸化していました。4999年8月27日になって公式に廃止が宣言されています。
 ベルナス王国とメテス聖王国では、異端審問制度が今でも正常に運営され続けています。

異端に指定された団体
 リマリック帝国をはじめとする各国では、以下のような政治団体や新興宗教団体が「異端」として弾圧されていました。枠内が赤く塗られている団体は4999年1月1日の時点で滅亡しています。枠内が青く塗られている団体は後に異端指定を解除され合法化されました。
 実際には、この他にも数多くの異端宗派が存在します。

団体名成立時期創始者名(生没年)
本拠地(4999年1月時点の所属国)多数の信者が分布する地域
詳しい説明
ウェリナス神殿モブリス派3055年7月ディール・モブリス(2980−3060)
ラーダ(ラーダ国)レゾルシン王国、イオ王国、ダウ王国
ウェリナス神殿の一派で、秩序を道徳と切り離して考える点を特徴としている。リマリック帝国、ダウ王国では信仰が認められているものの、メテス聖王国、ベルナス王国では異端として弾圧されていた。
アストラル・ティア4755年10月アノス・フリージア(4732−4761)
リマリック(シルクス帝国)リマリック帝国南部
「【大宇宙の涙】と呼ばれるエネルギーの一種を体に浴びることによって健康を保とう」と主張した団体。世間一般には、民間療法の推進団体としか認知されていなかったが、一部の過激派が帝国内の医療機関や魔術師ギルドを繰り返し襲撃しており、後に大きな社会問題となった。バディル勅令制定後最初に弾圧の対象となった団体であり、4761年12月に消滅。
フォレストウォーカーズ4843年5月ガルダイル・シギュント(4810−4900)
レオラル(シルクス帝国)リマリック帝国北西部
農業神ファルーザと植物神エルフィールの流れを汲む過激な自然保護団体。当時のリマリック帝国北部で、木材加工業者を対象にしたテロを繰り返していた。帝国政府の弾圧に遭っていたが、4850年10月に闘争路線の放棄を宣言したことを機に木材加工業者との和解が成立、合法化された。現在は、植林活動や山林研究を専門とする学者達の親睦会のような存在になっている。
リバース・クルセイダーズ4905年5月オルテガ・セレティロン(4857−4910)
イドノームス(ダウ王国)ダウ王国
ダウ王国を支配するエルネスト家(天空の民の一門である)を「大地の民を汚す者」と非難し、エルネスト家打倒と「ダウ王国の解放」を掲げてゲリラ活動を展開していた人々。ダウ王国は彼らに対し、国家反逆罪ではなく異端信仰の罪を着せて弾圧を行った。4911年9月に消滅したが、残党達の勢力は50世紀末まで生き残っている。
ナディール教団4948年2月ドロイド・セヴェール(4916−4972)
イオタ(イオ=テード同君王国)テンバーン王国、イオ王国、エルドール帝国
地球解放戦争末期に処刑されたナディール・ラント・インダールの生存を信じると共に、彼女が理想郷として提示していた、身分制度が完全に破壊された社会の実現を目指して活動する人々の集団。テンバーン王国、同君王国、エルドール帝国に多数の信者が存在。現在、思索派と行動派の2つに分裂している。現在の最高指導者の氏名は不明。
ウェリナス神殿ダイダロス派4960年7月リーラ・ダイダロス(4942−4963)
ハボローネの森(ベルナス王国北方)ベルナス王国
ウェリナス神殿の一派であり、当時腐敗の激しかったウェリナス神殿ベルナス教管区の綱紀粛正を求めていた。当初は平穏な請願活動であり、教管区側も誠意ある対応を見せていたのだが、封建領主でもあったウェリナス神殿司教が同団体に弾圧を加えたことが契機となって活動が過激化、4962年には内乱状態に突入してしまう。同団体の活動には、エルドール帝国やレゾルシン王国、サロニア市立図書館などの援助が得られていた。ハボローネ十字軍によって、4963年10月に解散。創始者リーラ・ダイダロスの最期は、ベルナス王国の反政府組織の間では伝説として知られている。
グラウスシックス4970年4月不明(自然発生?)
プレデンデー(エルドール帝国)リマリック帝国北東部
混乱の続くリマリック帝国において、建国者エディオス・アリム・リマリックと5人の同士達(通称「グラウスシックス」)の再来を望む人々の集まり。勢力拡大が進むに連れ活動内容が過激化、4982年5月に異端に指定された。
第8惑星発見期成会4995年4月不明
リマリック(シルクス帝国)リマリック帝国南部
魔法文化圏に属するリマリック帝国の中にあって、科学技術による富国強兵を提唱していた団体。当初はデフルノール王国やテンバーン王国との関係が疑われ、激しい弾圧に遭っていたが、後に疑惑が事実無根であることが判明、4996年7月に合法化された。



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