設定資料集・科学技術
科学技術の水準
エルドール大陸における科学技術は、我々の世界における17世紀後半から18世紀にかけての科学技術と同じ水準にまで成長しています。具体的には……
●神話上の仮説であった地動説の証明(万有引力の法則と慣性の法則も確立されている)
●地球が太陽から3番目の位置にあることが判明、7番目までの惑星が観測によって確認されている(8番目の惑星の存在も予言済み)
●血液の体内循環や細胞も発見されている
●稲妻の正体が電気であることも既に判明している
●金属活版印刷術、工業用火薬、麻酔薬も実用化されている
●真空も発見されている
●光の速さの研究も世界各地で試みられている
●気圧計と温度計も発明済み
●大砲と銃が発明され、50世紀末から実戦に配備されつつある
蒸気エネルギーを利用した機械(我々の世界では1707年に蒸気船が登場)は存在しません。グレスタット大陸では蒸気機関が実用化されており、デフルノール王国では実験段階として蒸気機関の開発が行われていますが、実用化に至るまでにはまだ困難が控えています。
科学を「生み出した」者
4800年頃のエルドール大陸の科学技術は、我々の世界における14世紀後半の水準にとどまっており、魔法中心の技術と社会が世界を支配していました。だが、2世紀もの間に、科学技術は飛躍的とも呼べる進化を遂げました。この背景には、ある人物の出現が大きく影響しています。
その人物の名前はジェシカ・ヘナトス・フレッチャー。エルフ。
彼女は4833年にエルドール大陸に現れると、大陸北東部にある小さな都市国家ジリストに住まいを定め、同国の保護を受けながら、市民達の教育と学術研究に力を入れました。彼女自身も優秀な魔術師であり、10系統の魔術を全て使いこなすことができたのですが、彼女は魔法の研究にはあまり興味を示さず、その頭脳と知識の多くを教育と科学技術の研究に傾けました。
このジェシカの研究に対し、ジリスト以外の国々の一般市民や魔術師達、そして同族であるエルフ達は侮蔑の目を向けていました。しかし、彼女を教育者として受け入れた都市国家ジリストや、魔法以外の手段による富国強兵策を模索していたテンバーン王国が、ジェシカに対して積極的な援助を行うようになってから、彼女の学術研究はめざましい進歩を遂げるようになり、両国も大きな発展を遂げました。この様子を見た各国は、今まで彼女を無視していた態度を一変させ、両国を真似して彼女に支援の手を差し伸べるようになりました。また、自国の中に科学技術の研究機関を創設する国も増え、彼女のライバルとなる優秀な科学者も多数現れたのです。こうして、エルドール大陸は激しい科学技術開発の舞台となりました。
だが、彼女はその競争の中でも活躍し、4935年2月には、地動説の科学的証明に成功したことが認められ、「『理』の賢者」の称号を獲得し、サロニアの六賢者の首席に列されたのです。また、4980年には、「国家の繁栄に寄与した」として、テンバーン王国から緑色旗勲章(最高位の勲章)を授与されました。今でも彼女はテンバーンなど各国の国民から尊敬を集めています。
ジェシカの登場から1世紀経った50世紀末、科学技術の発展に全力を傾けたテンバーン王国と、魔法文明と科学技術の両立を目指したエルドール帝国、デフルノール王国、ラドン帝国は世界有数の大国に成長しています。
戦争における科学技術
封建制度を守っている国家同士が戦う時や、封建領主間の小競り合いにおいては、昔懐かしい(?)一騎打ちの伝統が守られています。しかし、基本的には、一騎打ちは過去の遺物に過ぎず、陸軍における戦闘は魔法と剣を主軸とした集団戦が基本になっています。また、魔法よりも射程の長い銃と大砲が開発されており、テンバーン王国やエルドール帝国は50世紀末から軍隊への配備を開始しています。4998年に開始されたエルドール帝国の内戦(?)が、大砲と銃が初めて使われる戦争になります。
海軍の軍艦はガレアス船(帆と手漕ぎを併用)とガレオン船(完全な帆船)が中心。戦闘においては、大砲や火矢の撃ち合いと、接舷した状態での血生臭い接近戦の両方が使用されています。
飛行機を使う現代の空軍は当然存在しません。しかし、その代わりに、アーラエ達や、【フライ】の呪文を使って空中に飛び上がった兵士や魔術師など、空を移動できる兵士も多数存在します。
武器の大半は鉄ないし鋼鉄によって作られ(例外は矢だけか?)、その材質は科学技術や魔法文明の進んだ国ほど優れています。鎧は3300年代から軽量化されており、大腿部より上を覆う鎧や、腹部・胸部・肩のみを保護する鎧が兵士達に愛用されています。素材は鉄または鋼鉄。他のファンタジー世界で見られるような全身を覆った甲冑や、中世ヨーロッパの騎士道物語に登場するような軍馬用の鉄鎧は、今では国家の式典やランスの騎乗試合でしかお目にすることができません。ちなみに、冒険者や一般市民の使う武器・防具は鉄が主流であり、鋼鉄製品は高級品として知られています。
なお、量産化は進んでいませんが、鋼鉄以外の素材を使った武器(銀・ミスリルなど)も多数出回っています。
通信技術
旧リマリック帝国とエルドール帝国によって整備された街道網と駅伝制度、そしてマジックアイテムとして生産されている通信用クリスタル(≒テレビ電話)、伝書鳩や使い魔、【召喚魔法ペガサス】など、魔法を中心に様々な方法が開発されています。この分野に限り、第1魔法文明期に匹敵する高度な技術が今でも使われ続けています。
輸送技術
陸上の移動手段は徒歩、馬、そしてロバに限られています。馬車も存在するのですが、そのほとんどは荷馬車であり、政府高官が利用するような人を運ぶための屋根付き馬車は珍しいのです。また、河川を使った物資の輸送も一般化しており、大抵の都市では川岸に波止場と倉庫街が作られています。
海上の移動手段に関して言えば、羅針盤や磁石は4700年代に発明されており、船そのものもガレアス船やガレオン船などが登場し、遠洋航海も可能なだけの技術が整えられています。現在、エルドール大陸に存在する諸国家と遠洋航海による交易が行われているのは、エルドール海に浮かんでいる島々、エルドール大陸北西のテティス諸島とダルザムール大陸、そしてエルドール大陸の東方に位置するグレスタット大陸の4ヵ所。エルドール大陸からは小麦や米、繊維製品、学術書、鋼鉄製武具が主に輸出されています。
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