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2002年2月26日 16時30分06秒
ソルトレークが残した「負の遺産」一覧
日本時間の昨日終了したオリンピック。
学生の方の中には、閉会式の模様を衛星中継で御覧になった方も多いと思います。
今回のオリンピックの至上命題は「テロを防いで安全に開催すること」という一言に尽きますので、
この観点から評価すれば大成功に終わった大会でもありました。
しかし、競技の中身にまで踏み込んで考えますと、成功と評価するのが不可能な大会でもありました。
不正判定疑惑が続出し、各競技の国際組織やソルトレーク五輪運営委員会、IOCに対する不信感を徒に高めてしまいました。
ここで、後学(?)の為に、私が調べた範囲で見つかった不正判定疑惑のリストを作ってみました。
●スノーボード男子ハーフパイプ
日本人選手が5位に入賞。
しかし、この時の採点ではフランス人審判が他の審判と比較して「極端に」低い(と思われる)採点を行ったため、 監督が審判長に対して非公式に抗議。
地元のアメリカ人ファンからも、この採点に対してブーイングの嵐が巻き起こっていた。
ただし、スノーボード競技の場合、審判がそれぞれ別項目の採点を行っている
(ある人は空中での高さを判定し、別の人は回転技を判定するなど)ため、
1人の審判だけが極端に低い評価を出してしまうことも時々発生する。
問題のフランス人審判が担当したのは、「スタンダード・ジャッジ」と呼ばれる回転以外の技を判定する役。
演技は2回行われたが、5位入賞の日本人選手に対するスタンダード・ジャッジの得点は4.0と6.0。
メダリスト3人の得点はそれぞれ9.1/7.2(金)、8.7/8.3(銀)、6.7/8.8(銅)。
ちなみに、5位の選手の演技にこれといったミスは見られなかった。
●フィギュアスケート・ペア
演技の結果、ロシアペアが1位、カナダペアが2位という結果に終わった。
ところが、フランス人審判が「通常の慣例とは異なる」判定を下したことが表面化すると、
アメリカを中心とする西側マスコミが問題のフランス人審判やフランス国際スケート連盟を一斉に攻撃。 IOC側が、カナダペアにも金メダルを与え、問題の審判を資格停止にするという判定を下したところ、 今度はロシア側がこの判定に対して大きな不快感を表明。
疑惑の渦中となったフランス人審判は当初「フランスのスケート連盟から圧力を掛けられていた」と説明したが、 後にこの発言を撤回している。
上述の「通常の慣例」とは、「旧西側の審判は旧西側の選手に、 旧東側の審判は旧東側の選手に高い評価を与える傾向にある」というもの。
問題の競技では、フランス人審判がロシア側の選手を高めに採点していた。
そもそも、このような慣例がまかり通っていた(らしい)こと自体が不健全なのだが、
今回の判定問題では、この慣例に加え、ロシアとフランスの「密約説」が取り沙汰されていた。
それによると、「フランスの審判員(ジャッジ)がロシアを勝たせる代わりに、
アイスダンスではロシアのジャッジがフランスに高得点を出す」との取引が行われたらしい、というもの。
1998年や2001年の世界選手権でも類似の問題は発生しているそうな。
もしも、「フランス人審判が慣例を無視して冷静な判定を下しただけ」というのが真相だったならば、 その審判にとってこれ以上の災難は無いであろう。
●ショートトラック
男子1000m準決勝で失格となった日本人選手と、
男子1500m決勝で最初にゴールしたにもかかわらず失格となった韓国人選手に関し、
「明らかな誤審があったのではないか」との疑惑が主張されている。
両国の監督などは審判団や国際スケート連盟に抗議したが受理されなかった。
韓国では「氷の上のテロ」などと過激な表現でアメリカや運営者側を批判する報道が連日続き、
選手団も閉会式への欠席を一時検討していた。
ショートトラックの判定にはVTRは使用されておらず、この点が誤審騒動の根本的な原因となっている。 韓国人選手の失格騒動の場合、実際には接触が起きていないらしいにもかかわらず、 側を走っていたアメリカ人選手がオーバーアクションを起こし、それが誤審を導いてしまったのではないかと言われている。
この他にも、地元アメリカ選手の八百長疑惑が大会前から取り沙汰されたことや、
男子500m準決勝では、日本人選手に対する露骨な反則行為があり、 「救済」措置が発動し日本人選手の決勝進出が実現したことなど、 ショートトラックは、ネガティブな話題が何かと尽きなかった競技であった。
サンケイスポーツの記事によると、現在、IOCでは「ショートトラック不要論」が急激に広がりつつあるらしい。 男子1000mで、前を走る選手の相次ぐトラブルで南半球初の冬期五輪金メダルを取った選手がいたが、 このこともショートトラック不要論の一因になっている可能性がある。
●スピードスケート
男子500mで、アメリカ人選手(金メダル)にフライング疑惑が存在。
一部報道によると、「他のレースでは厳しくフライングを見ていたのに、この時だけは見て見ぬ振りだった」らしい。
●アイスダンス
リトアニアペアが5位に終わったことに対して、リトアニアのスケート連盟が国際スケート連盟に対して抗議。
抗議によると、「転倒したイタリア・ペアが3位、カナダ・ペアが4位になったが、
審判が規則通りに、両チームに対して0.2の減点をしていれば、リトアニア・ペアが3位に入っていた」とのこと。
今期限りでアマチュア引退を決めていた男性選手は 「4回の五輪に出場して分かったのは、競技をする前から採点が決まっていること」と発言している。
●スキー距離女子リレー
レース前、ロシアチームの中心選手に対して、
「血球中のヘモグロビンが基準を超える数値を示した」との理由で出場が差し止められた。
ロシアはこの競技に出場しなかったばかりか、選手団の記者会見で同国選手への判定・反応を不服とし、 以降の競技や閉会式のボイコットを表明。 プーチン大統領が急遽出場を続行する指示を出すという騒動に発展した。
●クロスカントリー
男子50kmと女子30kmの金メダリストがドーピングでメダルを剥奪され、大会から追放となった。
これによって金メダルを1個失ったロシアはドーピングの判定に強い不快感を示している。
検出されたのは正式な禁止リストには登録されていない成分だったが、 既に禁止されている薬物の成分と酷似している上、風邪薬など普通の薬に混ざっていることが無いため、 運営委員会側が一罰百戒の意図で今回の処分に踏み切ったものと考えられている。
私が記憶しているのはこれだけですが、他にもあるかもしれません。
一部の選手の間からは
「アメリカでの競技にはもう参加しない」
「2006年に開催されるトリノでのオリンピックに出場する意欲が失せた」
という声すら聞かれるようになった一連の騒動。
一時はロシアなどが「オリンピックとは別の大会を造り運営してはどうか」という声を上げるほどでした。
会長が変わったばかりのIOCに突き付けられたこの問題は、果たして2004年までに解決されるのでしょうか? 現在のところ、悲観的な予測しか立ちそうにありません……。
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