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2002年6月20日 15時27分40秒
政界ドラマ『再編』・第6話感想文
「疑惑の総合商社、ついに店じまい」
──こんな見出しが似合う、昨日のニュース。
ワールドカップの試合が無かったせいなのか、昨日のニュースは
衆議院議事運営委員長の地位にまで上り詰めたことのある大物政治家・鈴木宗男代議士が
斡旋収賄の容疑で逮捕されたことで大騒ぎになっていました。
決して裕福とは言えない(本人は「貧しい」と語っていた)農家の出身で、
有名代議士の秘書を経てから国会議員に転身するという鈴木氏のサクセスストーリーは
鈴木氏自身が司直の手に掛かるという形で幕引きを迎えることになりました。
鈴木氏に対する国民のイメージはかなり悪いものがあります。
多数の政治疑惑を抱えているわけですから、白眼視されても当然という部分はありますが、
そのことを抜きにしたとしても、鈴木氏は田中前外務大臣と仲がよろしくなく、
昨年辺りからテレビ・女性週刊誌などを中心に、前外相を善玉に、鈴木氏を悪玉にするような報道が多数為されていました。
疑惑が存在する以上、それを追及すること自体は別に悪いことではないのですが、 個人的には若干やり過ぎの感が否めませんでした。
私自身が「鈴木宗男」という政治家に対して抱いていたイメージというのは、
「第2の田中角栄になり損ねた有能な政治家」といったところです。
当選回数も少なく、永田町の世界ではまだ若いとさえ言える50代の人物なのに、
外務政務次官や官房副長官など多数の要職を渡り歩き、90年代後半の日本の外交・防衛政策で重きを為したのですから、 思想・信条・清廉さなどの要素は一切に抜きにした実務能力だけを考えると、有能と言える人物だったと思います。 私服を肥やす為の道具の一部だったのではないかと疑惑の目が向けられてはいるものの、 ODAや北方領土支援事業など鈴木氏の行った事業・政策の多くは決して悪いものではありませんでした。 (ODAを血税の無駄使いと考えるのならば話は別ですが)
それから、部下から慕われていた(現在起訴されている鈴木氏の懐刀だった元外務官僚がハンストを起こすほど)点や、 裸一貫に等しいところから現在の地位にまで上り詰めたところは、田中元首相と重なって見えるところがあります。
そして、テレビなどで報道されているように、金絡みの政治疑獄に関与していると考えられる点まで田中元首相と一緒。 多数報じられている疑惑のうち1つでも事実だとすれば、 鈴木氏が「金権政治家」のレッテルを貼られても文句は言えなくなります。 自民党内での行動も、一昔前の派閥力学に則って行動していました。 まるで、田中元首相の良いところだけではなく悪いところまで真似てしまったかのよう。
「清濁併せ呑む人物」という印象を周囲に与えている鈴木氏なんですが、 現代の日本ではそういう政治家は不要になりつつあるようです。 現代の日本人の多くが求めている政治家は、能力よりも前に「清廉であること」が重要になっているようですからね。 鈴木氏が我々よりも1世代前の時代に政治家としてデビューしていたとしたら、 今回のような転落劇を味わわないまま、首相や外相などの栄誉ある地位にまで上り詰めていただろうと思います。 また、鈴木氏の政治信条となっていたのは「国益と地元の為に頑張る」ということだったようですが、 国益だけでなく地元に対する貢献(悪く言えば利益誘導)をストレートに打ち出している点も、 都会に住む現代人から見れば「古臭い」と断じられることになってしまいます。
良くも悪くも、鈴木宗男氏は「一昔前の政治家」だったと言えるわけです。
そんなわけで、今回の逮捕劇を見ていて、政治不審や金権政治などの問題に対する怒りよりも、 「歴史の皮肉」とも表現すべき得体の知れない「何か」を強く感じたものでありました。 疑惑が事実なのかどうかは、検察の捜査結果を待つことにしましょう。
なお、逮捕に至った直接の容疑は500万円の斡旋収賄という「シンプルな」事件でして、
国会で「疑惑の総合商社」と追求されたことのある同氏が持つ、疑惑の数々に比べれば、
実にみみっちいと思っていらっしゃる方が多いと思います。
これについては、「手始めに、証拠を国会に見せても実害が無くて、立件しやすい事件から」という 検察側の方針があったからではないかというのが専らの評判。
氏の疑惑追及については、これからが本番ではないかと見る向きが多くあります。
ですが、氏の関わった疑惑の中には、ODAや北方領土支援に関する疑惑をはじめ、
「海外に捜査官を派遣しないと捜査が進まない」厄介な事案が多数含まれています。
こういった場合には、相手国の同意が無いと捜査できない(警察権の行使は国家主権の行使でもある)のですが、 果たして鈴木氏の途上国支援による恩恵を受けてきた各国が素直に首を縦に振るのでしょうか? 事情が事情ですし協力してくれるとは思います……が、協力しない国が現れたとしても不思議ではありません。
しかし、このニュースを見ていて一番驚いたのは、鈴木宗男氏がまだ54歳だったこと。
外見から考えて、てっきり60歳くらいの方じゃないのかと思っていました(汗)
この他に気になっているニュースはざっとこんなところ。
●カルザイ「議長」からカルザイ「大統領」へ
混乱続きだったアフガニスタンのロヤ・ジルガですが、6月19日に何とか無事に終わったようです。 以降2年間、アフガニスタンはカルザイ大統領の元で国家再建を続けることになります。 目下の最大の難問は、アフガニスタン北部で色々な騒ぎを起こしているウズベク人指導者・ドスタム将軍への対処。
●北京ネットカフェ放火犯は13歳と14歳
6月16日に北京で発生したインターネットカフェでの火災(死者24人)で、放火犯が逮捕されました。 その犯人が、実は13歳と14歳の男子中学生だったと言うのです。動機は現場となった店で発生したトラブルの腹いせ。 「中国でも少年犯罪が問題になっているのか」とちょっとびっくり。
●戦闘再開
先週、イスラエルが「ヨルダン側西岸地区とイスラエルの境に長さ100km以上の壁を建設して テロリストを物理的に隔絶する」と発表してから、再び自爆テロと軍事報復の連鎖が始まりました。 6月18日の自爆テロでは20人が、翌19日のテロでは8人が犠牲となっています。 パレスチナ人だけではなくイスラエルの極右からも評判の悪い壁の建設は、とっとと止めたほうがお互いの為になるようですが……。
●「ワールドカップの恨みはセリエAで返せ」?
6月18日のワールドカップ・イタリアvs韓国戦で、韓国にゴールデンゴールによる勝利を呼び込んだ安貞桓さん(26歳)。 この人はイタリアのセリエAのペルージャというチームでプレーしていたのですが、 今回のゴールデンゴールが原因で職場を追われることになってしまいました。
スポーツニッポンの記事によると、ペルージャのアレッサンドロ・ガウチ会長曰く──
「安に二度とペルージャの地は踏ませない。ヤツがいいプレーをしたのはイタリア戦だけ。 彼の行動はイタリアのプライドを傷つけるものであり、2年前にチャンスを与えた国に対する犯罪行為だ。 イタリアサッカーをダメにするような者に、もう給料を払うつもりはない」 「韓国に帰って安月給でプレーしろ」
ワールドカップでは活躍中の安選手も、セリエAでは不振に苦しんでいました。 だから、ペルージャの広報によると、安選手の解雇はワールドカップ前から決まっていたとのこと。
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