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2002年6月の図書館長日誌

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サロニア私立図書館・玄関へ戻る日誌収蔵室で過去の記録を閲覧する

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  • 2002年6月24日 21時44分16秒
    選挙もペーパーレス

    昨日は、「選挙は紙でやるもの」という常識が打ち破られた、記念すべき1日となりました。
    岡山県新見市で行われた市長・市議会議員選挙で、日本初の電子投票が行われました。

    今回の選挙のやり方ですが、体験版が置かれていますので、一度お試し下さい。
    試すのが面倒な方の為に御説明しますと──

    (1)投票に使われる機械は銀行のAT機を思わせるタッチパネル式の装置。
    (2)投票所を訪れた有権者は、投票用紙の代わりに投票装置にさし込む為のカードを受け取る。
    (3)カードを受け取った有権者は、投票装置にカードを入れる。
    (4)あとは銀行のATMのように、タッチパネルの指示に従って投票をするだけ。
    (5)使用されたカードは選挙終了時に回収される。


    ──というもの。
    投票の記録は、各機械に1枚ずつ取り付けられているカード式の記録媒体(コンパクトフラッシュ)に記録されます。
    選挙終了後、合計113枚のコンパクトフラッシュを開票所に移送してから集票機に読み込ませ票を集計し、
    不在者投票(こちらの投票用紙は紙なので、手動で回収・集計されます)の結果と足し合わせて
    最終的な得票数を確定させるわけです。
    電子投票を導入した結果、選挙の体勢が判明したのは電子投票の結果が確定された午後9時50分のこと。
    全ての票を手で集計していた時と比べれば、各段に早いスピードで票の集計を行うことかできたわけです。
    一方、一連の作業で発生したトラブルは合計4つ。
    選挙が無効になるほどの致命的なエラーは発生しませんでした。

    総じて見れば「成功である」ということができる日本初の挑戦に、
    地元出身の片山総務相はじめ、国会議員の方々は御満悦の御様子。
    半ばノリノリになって、国政選挙への電子投票の導入をお考えの御様子です。
    しかし、電子投票の本格的導入の為には、越えなければならないハードルがいくつもあります。
    まず、電子投票を国政規模で展開することに伴い──

    ●電子投票装置設置のコスト
    ●投票形式の変化に伴う選挙活動への影響


    ──という問題が発生します。
    これに加え、票の集計をインターネット経由などオンラインで行うことになった場合には──

    ●サイバーテロ及びネットワーク上での事故対策
    ●秘密投票の保障方法(投票の暗号化など)


    ──などの問題点が追加で発生。
    電子投票の究極形態である「自宅にいながら選挙で投票できる」ことを目指すとなれば、その上に──

    ●投票者の「本人認証」の方法(第三社による成りすましの防止)
    ●自由意思による投票の保障方法
    ●ブラウザ上での秘密投票の保障方法
    ●パソコンを持たない人々に対する投票の自由の保障方法(投票所が減らされた場合など)


    ──といった問題まで発生。
    そして、「国民の電子投票に対する不安の払拭」もしなければなりません。
    越えなければならない問題は非常に多く、選挙の完全電子化はまだ遠い未来の話です。

    個人的には、セキュリティーや障害対策などの点から見て、
    新見市が行ったような電子投票のスタイル(票の集計作業に限定して電子化)が最も好ましいように思えますが、
    みなさんはいかがお考えでしょうか。

  • 2002年6月20日 15時27分40秒
    政界ドラマ『再編』・第6話感想文

    「疑惑の総合商社、ついに店じまい」
    ──こんな見出しが似合う、昨日のニュース。
    ワールドカップの試合が無かったせいなのか、昨日のニュースは
    衆議院議事運営委員長の地位にまで上り詰めたことのある大物政治家・鈴木宗男代議士が
    斡旋収賄の容疑で逮捕されたことで大騒ぎになっていました。
    決して裕福とは言えない(本人は「貧しい」と語っていた)農家の出身で、
    有名代議士の秘書を経てから国会議員に転身するという鈴木氏のサクセスストーリーは
    鈴木氏自身が司直の手に掛かるという形で幕引きを迎えることになりました。

    鈴木氏に対する国民のイメージはかなり悪いものがあります。
    多数の政治疑惑を抱えているわけですから、白眼視されても当然という部分はありますが、
    そのことを抜きにしたとしても、鈴木氏は田中前外務大臣と仲がよろしくなく、
    昨年辺りからテレビ・女性週刊誌などを中心に、前外相を善玉に、鈴木氏を悪玉にするような報道が多数為されていました。
    疑惑が存在する以上、それを追及すること自体は別に悪いことではないのですが、
    個人的には若干やり過ぎの感が否めませんでした。

    私自身が「鈴木宗男」という政治家に対して抱いていたイメージというのは、
    「第2の田中角栄になり損ねた有能な政治家」といったところです。
    当選回数も少なく、永田町の世界ではまだ若いとさえ言える50代の人物なのに、
    外務政務次官や官房副長官など多数の要職を渡り歩き、90年代後半の日本の外交・防衛政策で重きを為したのですから、
    思想・信条・清廉さなどの要素は一切に抜きにした実務能力だけを考えると、有能と言える人物だったと思います。
    私服を肥やす為の道具の一部だったのではないかと疑惑の目が向けられてはいるものの、
    ODAや北方領土支援事業など鈴木氏の行った事業・政策の多くは決して悪いものではありませんでした。
    (ODAを血税の無駄使いと考えるのならば話は別ですが)
    それから、部下から慕われていた(現在起訴されている鈴木氏の懐刀だった元外務官僚がハンストを起こすほど)点や、
    裸一貫に等しいところから現在の地位にまで上り詰めたところは、田中元首相と重なって見えるところがあります。
    そして、テレビなどで報道されているように、金絡みの政治疑獄に関与していると考えられる点まで田中元首相と一緒。
    多数報じられている疑惑のうち1つでも事実だとすれば、
    鈴木氏が「金権政治家」のレッテルを貼られても文句は言えなくなります。
    自民党内での行動も、一昔前の派閥力学に則って行動していました。
    まるで、田中元首相の良いところだけではなく悪いところまで真似てしまったかのよう。

    「清濁併せ呑む人物」という印象を周囲に与えている鈴木氏なんですが、
    現代の日本ではそういう政治家は不要になりつつあるようです。
    現代の日本人の多くが求めている政治家は、能力よりも前に「清廉であること」が重要になっているようですからね。
    鈴木氏が我々よりも1世代前の時代に政治家としてデビューしていたとしたら、
    今回のような転落劇を味わわないまま、首相や外相などの栄誉ある地位にまで上り詰めていただろうと思います。
    また、鈴木氏の政治信条となっていたのは「国益と地元の為に頑張る」ということだったようですが、
    国益だけでなく地元に対する貢献(悪く言えば利益誘導)をストレートに打ち出している点も、
    都会に住む現代人から見れば「古臭い」と断じられることになってしまいます。
    良くも悪くも、鈴木宗男氏は「一昔前の政治家」だったと言えるわけです。

    そんなわけで、今回の逮捕劇を見ていて、政治不審や金権政治などの問題に対する怒りよりも、
    「歴史の皮肉」とも表現すべき得体の知れない「何か」を強く感じたものでありました。
    疑惑が事実なのかどうかは、検察の捜査結果を待つことにしましょう。

    なお、逮捕に至った直接の容疑は500万円の斡旋収賄という「シンプルな」事件でして、
    国会で「疑惑の総合商社」と追求されたことのある同氏が持つ、疑惑の数々に比べれば、
    実にみみっちいと思っていらっしゃる方が多いと思います。
    これについては、「手始めに、証拠を国会に見せても実害が無くて、立件しやすい事件から」という
    検察側の方針があったからではないかというのが専らの評判。
    氏の疑惑追及については、これからが本番ではないかと見る向きが多くあります。
    ですが、氏の関わった疑惑の中には、ODAや北方領土支援に関する疑惑をはじめ、
    「海外に捜査官を派遣しないと捜査が進まない」厄介な事案が多数含まれています。
    こういった場合には、相手国の同意が無いと捜査できない(警察権の行使は国家主権の行使でもある)のですが、
    果たして鈴木氏の途上国支援による恩恵を受けてきた各国が素直に首を縦に振るのでしょうか?
    事情が事情ですし協力してくれるとは思います……が、協力しない国が現れたとしても不思議ではありません。


    しかし、このニュースを見ていて一番驚いたのは、鈴木宗男氏がまだ54歳だったこと。
    外見から考えて、てっきり60歳くらいの方じゃないのかと思っていました(汗)


    この他に気になっているニュースはざっとこんなところ。

    ●カルザイ「議長」からカルザイ「大統領」へ
    混乱続きだったアフガニスタンのロヤ・ジルガですが、6月19日に何とか無事に終わったようです。
    以降2年間、アフガニスタンはカルザイ大統領の元で国家再建を続けることになります。
    目下の最大の難問は、アフガニスタン北部で色々な騒ぎを起こしているウズベク人指導者・ドスタム将軍への対処。

    ●北京ネットカフェ放火犯は13歳と14歳
    6月16日に北京で発生したインターネットカフェでの火災(死者24人)で、放火犯が逮捕されました。
    その犯人が、実は13歳と14歳の男子中学生だったと言うのです。動機は現場となった店で発生したトラブルの腹いせ。
    「中国でも少年犯罪が問題になっているのか」とちょっとびっくり。

    ●戦闘再開
    先週、イスラエルが「ヨルダン側西岸地区とイスラエルの境に長さ100km以上の壁を建設して
    テロリストを物理的に隔絶する」と発表してから、再び自爆テロと軍事報復の連鎖が始まりました。
    6月18日の自爆テロでは20人が、翌19日のテロでは8人が犠牲となっています。
    パレスチナ人だけではなくイスラエルの極右からも評判の悪い壁の建設は、とっとと止めたほうがお互いの為になるようですが……。

    ●「ワールドカップの恨みはセリエAで返せ」?
    6月18日のワールドカップ・イタリアvs韓国戦で、韓国にゴールデンゴールによる勝利を呼び込んだ安貞桓さん(26歳)。
    この人はイタリアのセリエAのペルージャというチームでプレーしていたのですが、
    今回のゴールデンゴールが原因で職場を追われることになってしまいました。
    スポーツニッポンの記事によると、ペルージャのアレッサンドロ・ガウチ会長曰く──

    「安に二度とペルージャの地は踏ませない。ヤツがいいプレーをしたのはイタリア戦だけ。
    彼の行動はイタリアのプライドを傷つけるものであり、2年前にチャンスを与えた国に対する犯罪行為だ。
    イタリアサッカーをダメにするような者に、もう給料を払うつもりはない」
    「韓国に帰って安月給でプレーしろ」


    ワールドカップでは活躍中の安選手も、セリエAでは不振に苦しんでいました。
    だから、ペルージャの広報によると、安選手の解雇はワールドカップ前から決まっていたとのこと。

  • 2002年6月17日 15時53分11秒
    修羅場、突破

    ここ1週間ほど日誌の更新が行われていなかったのには理由があります。

    まず最初に、図書館長自身の就職活動が山場を迎えていて、日誌を書くまでの余裕が無かったこと。
    こちらのほうは無事に片付いた(一応内定がもらえました)からめでたしめでたし、ということで。

    次に、知人から頼まれていた資料作成2種類(フリーソフト用のシナリオと『FF9』の攻略レジュメ)をしていたこと。
    こちらも無事に片付いたからめでたしめでたし、ということで。
    攻略記事に関してはURLの書かれた紙を手渡して「ここを見ろ」と言ってしまえば
    それでおしまいだったような気がしますけど、まあそれはそれということで(ぉ

    3つ目は私自身の睡眠時間の確保。
    これら2つのタスクを処理することに伴い、睡眠時間が大きく削られることになってしまいました。
    おかけで、土日はぐっすり(笑)

    で、4つ目の理由になったのが、「6月10日付日誌に対するレス」に対するレス。
    通常、私が日誌で取り上げた事物に対してレスが返ってくる場合、その多くはこの日誌と同じように
    「日誌/日記上での記述」という形式が多いのですが、
    今回は珍しく(?)、メールでの返事となっています。
    賛否それぞれ何通ずつといったところでして、内容もしっかりとしていた
    (つまり、迷惑メールとしてレスを返さずに放置することができなかった)ので、
    そのメールを書く作業にも時間を取られてしまいました。

    そして5つ目の理由は、6月14日の夕方、私が運悪く渋谷界隈に居合わせていたこと。
    歩いて渋谷駅の方へ向かおうとしていたのですが、ハチ公口周辺にたむろしていた「青い群集」のせいで、
    (生命の危険は感じなかったものの)結構大変な目に遭いました。
    あの群集を突破して渋谷駅へ行くのには本当に苦労しました……いや、マジで。
    私が通り掛った時には見られなかったのですが群衆の中には花火を使用した人もいたらしく、
    周囲で群衆の様子を観察していた人は「あっとゆー間に警察に連れ去られてしまった」と語っていました。
    私が渋谷を通過した時よりも後に渋谷界隈に通り掛った知人の方もいるようでして、
    そちらも渋谷を抜けるのには色々と苦労されていたようです。

    で、熱狂する群集を数分間だけ観察して分かったことなのですが、
    どうも「フーリガン寸前のサポーターが暴れ回る時、彼らは周囲の視線を気にしている」ようです。
    JR渋谷駅の2階から窓越しにハチ公口の群集を見下ろした時、
    群集の一部がこちら側を見上げ、観衆(野次馬)に自らの存在を誇示するかのように拳を振り上げていました。
    窓越しだったので生命の危険を感じるようなことはなかったのですが、この様子を見て
    「フーリガンが騒ぐ一因に観衆の存在があることも忘れてはならない」と実感しました。
    興味本位でフーリガン見学……なんてことは、
    自分自身の安全と公共の安全の2つを確保する為にも、控えたほうがよろしいようです。
    ちなみに、似たような野次馬の存在が問題視されている暴走族の場合、
    声援を送るなど度が過ぎた行為は「あおり行為」として、一部地方公共団体では処罰の対象になっています。


    最後に1つ。
    「ワールドカップを自らの迷惑行為の免罪符にしないように」。
    そのような行為は、マナーを守って楽しんだ一般サポーターに対して著しく礼を欠いています。


    追記:
    先日、フランスの政治情勢について触れましたが、
    6月16日の総選挙によって、シラク大統領率いる保守・右派の連合が大勝利を収め、
    「保革共存」という奇妙な政治体制は終わりを迎えました。
    保守・中道勢力が、極右勢力の躍進を踏まえて、警察組織改革などの治安対策に本腰を見せたことが
    極右勢力に流れていた一部の人々にも受け入れられたようです。
    これにより、社会党など左派勢力は議席をほぼ半減させるという歴史的大敗を喫してしまいました。
    左派勢力の凋落は21世紀最初の10年間のトレンドとして定着してしまったようです。

  • 2002年6月10日 16時08分04秒(修正1回)
    フーリガン、hooligan、“fool”igan

    昨日の夜に行われたワールドカップの日本−ロシア戦ですが、私は見ていませんでした。
    でも、部屋の窓を開けていると、隣のお宅や上の部屋からアナウンサーの絶叫と視聴者達の歓声・溜息が聞こえてきました。
    それにしても、テレビもラジオも使わず、インターネットにも繋がない状態で、
    自宅にいながら試合結果が分かってしまうというのは一体どういうことだ(爆)

    試合のほうは御承知の通り1対0で日本の勝利に終わったわけなんですが、
    試合に負けたロシアでは、モスクワ市内に集まっていたファンの一部が暴徒化し、
    死者1名・負傷者50名以上の大きな騒ぎに発展してしまいました。
    日本料理店や滞在中の日本人観光客が襲われたというありがたくないニュースも届いています。
    外務省などによると、騒ぎを起こしたロシアのフーリガンは極右勢力との関係性が以前から疑われており、
    試合前にも「ロシア滞在中の日本人は注意するように」との警告が出されていたのです。
    できれば外れて欲しかった警告なんですが……。


    さて、モスクワで騒ぎを起こした「フーリガン」ですが、英語では“hooligan”と綴ります。
    元々の意味は「ならず者」だったのですが、時代が経るにつれて、
    サッカーの試合を見て暴れ出す極端な観客に対して用いられるようになったようです。
    この単語の語源にはいくつかの説がありまして、正確なところは分かりません。
    ウェールズ出身の友人をお持ちの方によりますと──

    (1)19世紀のロンドンに住んでいたアイルランド人のごろつき“Houlihan”一家の名前
    (2)19世紀のロンドンにいた“Hooley's gang”(フーリーのギャング)のミススペル
    (3)ドイツ語の方言“Hudilump”が語源となった“Hoodlum”(無法者)のスラング

    ──などの諸説があるそうです。
    この他にも、私の耳には、「インド人の強盗・暗殺団の名前が原典じゃないのか」という説も届いています。

    ところが、今年になってからこの話を聞くまで、私は「フーリガン」の語源に関して次のような勘違いをしていたのです。

    「最初、フーリガンの綴りは“hooligan”ではなくて“fooligan”じゃなかったのか」

    「フーリガン」という発音の中に“fool”──「愚者」と重なっている部分があるだけの理由しかなく、
    思い付き以外の何物でも有り得ない、根拠薄弱で突拍子も無いアイデアです。

    しかし、海外で暴れ回っているフーリガンの姿だけでなく、
    熱狂するあまり公衆マナーを忘れて傍若無人な振る舞いを見せる「フリーガンの数歩手前」の一部サッカーファンを見ていて、
    この私見が真実の一部だったとしても不思議に思わなくなってしまいました。
    他人の迷惑を顧みないという点では、フーリガンもはめを外したサポーターも一緒ですからね。
    両者の差は行動がエスカレートしているか否ぐらいしかありませんし。

    ちなみに、「サッカーの試合に熱狂するあまり他人の迷惑を顧みない人々」という意味で
    「フーリガン」──“fool”iganでもある──という単語を用いるのならば、彼らは日本国内にも確実に存在します。
    現に、昨日の試合に関連して、これだけの「困った騒ぎ」が発生しています。

    ●さいたま市営駒場スタジアム
    6月9日午後、大画面の生中継で日本対ロシア戦を観戦する会場で発生した騒ぎ。
    約7000人が整列して受付順に整理券の配布を待つ中、サポーター数十人が列を割り込んで整理券配布の受付に乱入、
    整理券数百枚を奪い周囲のサポーターに無断で配布した。この騒ぎで男性1人が顔に軽傷を負っている。
    また、試合中や試合終了後、危険物である打ち上げ花火をスタンドから繰り返し発射する人の姿や、
    グラウンドに乱入して走り回るファンの姿も見られた。
    その後の協議により、準決勝・決勝を除く全日本戦の中継中止が決定された。
    理由はサポーターのマナーが悪過ぎて安全確保が困難だからということらしい。

    ●横浜国際総合競技場近辺
    6月9日午後11時頃、JR新横浜駅と横浜国際総合競技場の間にある浜鳥橋という場所で、
    日本のサポーター約200人が大声を上げるなど騒ぎを起こした。
    騒ぎはサポーターが神奈川県警によって排除されるまでの約40分間続いた。

    ●横浜国際総合競技場
    6月9日未明、警備用仮設フェンスを乗り越えて敷地内に侵入した男性会社員(26)が建造物侵入の現行犯で逮捕された。
    男性はチケットを持っておらず、試合を見たかったがためにこのような行為に及んだという。
    この男性を含め、合計6人が横浜国際総合競技場への不法侵入で逮捕された。

    ●新横浜駅前
    6月10日午前1時頃、サポーターと共に騒いでいた男性1人が公然わいせつ容疑で逮捕された。

    ●渋谷駅前
    6月9日深夜、信号機によじ登るなどの騒ぎを起こしたサポーターに対処するべく機動隊が出動。
    結果、3人が公務執行妨害容疑で、1人が公然わいせつ容疑で逮捕され、
    駅前交差点で乗用車から花火を打ち上げた大学生らが道路交通法違反容疑で取り調べを受けた。

    ●福岡市中央区
    繁華街に集まった若者がタクシーや乗用車の上に乗り、窓ガラスを叩き割るなどの騒ぎを起こした。

    ●新宿・歌舞伎町
    興奮した一部サポーターによって電話ボックスのガラスが割られる事件が発生。
    翌朝の新宿駅前はゴミが歩道全体に「積もっている」という異様な光景となっていた。

    ●広島ビッグアーチ
    日本―ロシア戦をスクリーン中継した競技場で、試合後スタンドの観客がグラウンドに飛び降りるなど騒ぎを起こし2名が負傷。
    マナーの悪さに「きれた」主催者の広島県サッカー協会は、
    14日に予定されていた対チュニジア戦の中継を中止することを決定した。

    ●大阪・戎橋周辺
    試合終了直後から、狂喜乱舞したサポーター約500人が戎橋周辺に集結し身動きが取れない状態となった。
    一部のサポーターが信号機によじ登るなどの騒ぎを起こしたため、戎橋周辺は午後11時頃から一時封鎖されてしまった。
    その封鎖された戎橋にオートバイで突っ込もうとした東大阪市の男性が逮捕されている。
    なお、この戎橋という場所は道頓堀に掛かる橋であり、
    阪神タイガース優勝時に「入水」イベントが発生したことで有名。
    この日も100人以上のサポーターが道頓堀に飛び込んでいたそうな。

    ●甲府市・丸の内
    店内に大型テレビを置いてサッカーの試合を放送していた飲食店が「日本戦に限り」放送の中止を決定。
    店長曰く「ファンの気持ちは分かるが、マナーの悪さは常識を超えている」

    この「全国規模の『騒乱』」を受け、各地の警察は警備計画の見直し
    ──日本人サポーターフーリガン対策の立案──を迫られています。

    ……何? 「あのゲームを見て冷静でいられる方がどうかしている」?
    確かにそうかもしれません。
    でも、そのことを根拠に「他人に迷惑を掛けても良い」ことを正当化することはできません。
    事実、周囲に迷惑を掛けずマナーを守ったごく普通の「まっとうな」サポーターが大多数なのですから。
    TPOとマナーを弁えない行為は「愚者の行い」という誹りを受けても抗弁できないものですし、
    マナー違反の無様な行為が続くと、いい具合に盛り上がっている大会に水をさしてしまう結果を招いてしまいます。
    ごく一部の心無きサポーター──「サポーター」ではなく「フーリガン」と呼ぶべきかも──のせいで、
    サッカーファン全体が白眼視されるようなことだけは絶対にあってはなりません。
    サッカーフリークの知人に言わせれば、「サッカーのサポーターはすべからく『フーリガン予備軍』である」らしいんですが、
    それではあまりに寒過ぎます。


    スポーツを観戦する時には、「帰りの交通費」と「マナー」の携帯だけはお忘れ無きよう……

  • 2002年6月8日 03時10分33秒
    「復活」する指紋押捺

    アメリカで職員数15万人超のビッグでラージでヒュージな(古っ)新しい省庁を作る計画が持ち上がり、
    アルゼンチンとイングランドの試合が0対1で終わった今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
    本日のコラムは、先日お届けしたフランス大統領選挙に少しだけ関連するお話です。


    私くらいの年代の方でしたら、「指紋押捺」という名前に聞き覚えがあると思います。
    指紋によって個人識別が可能(異なる2人の指紋が一致する確率は極めて低い)ことを利用して、
    各個人の指紋を官公庁に登録することによって身分の証明を行おう……といったものです。
    かつての日本では、1952年の外国人登録法の制定に伴って指紋押捺制度が導入され、1955年から執行されました。
    この法案の制定目的は、日本国内に在住する朝鮮人(×韓国人)が北朝鮮の影響で左傾化することを警戒した政府が、
    在日朝鮮人の動向を把握し犯罪──特にスパイ活動などの政治的犯罪の抑止に役立てることだと言われています。
    無論、取り締まりの対象となった在日朝鮮人にとって面白い法律であるはずがありませんし、
    「巻き添えを食らう形で」指紋押捺を余儀無くされることになったその他の在日外国人にとっても不便な話。
    たまたま外国人登録証を持ち忘れただけなのに家宅捜索を受けたという笑えない話もあり、
    昔から「この法律は著しい人権侵害なので速やかに改正すべし」という声が上がっていました。

    その後、外国人登録法は小刻みな制度の緩和を繰り返しています。
    そして、人権擁護派にとっては最大の問題点と考えられた指紋押捺制度も1999年に廃止されました。
    今日では、指紋押捺の代わりに、本人の署名と家族事項の登録が行われています。


    さて、以上を踏まえた上で、現在の話に移ります。
    実は、最近欧米諸国で、この指紋押捺制度が見直されつつあるというのです。

    2002年6月4日、イタリア下院は同国に長期滞在する欧州連合(EU)域外出身の外国人労働者及び移民に対して
    指紋押捺を求めることなどを盛り込んだ新移民法案を賛成多数で可決。同法案は上院でも成立する見込みです。
    この法案は現政権を率いる中道右派連合が昨年の総選挙の際に公約として掲げた
    不法移民取り締まり強化を目的としています。
    また、同法案では、滞在許可申請や更新の際に雇用契約証明の提示を義務付けています。
    つまり、外国人失業者は国外退去させられる恐れがあります。
    導入を推進している中道右派連合には、旧ファシスト党の流れを汲む政党や、
    イタリア北部の独立を求めていた「北部同盟」といった勢力が加わっており、
    今回の法案もこういった人々が主導して作られました。

    この他にも、オーストリアでは、ドイツ語習得を外国人の滞在要件とした外国人統合法が閣議決定されました。
    今年7月に可決、来年1月に導入される予定。
    この法律には、日本などの外国企業駐在員に対する免除既定が盛り込まれていることから、
    実質的にはドイツ語を話せない不法移民などを国外に排除することが目的と見られています。

    イギリスやフランス、スペインなどでも不法移民排除の問題は頭痛の種となっており、
    各国政府が不法移民対策をどうすべきかで頭を悩ませているところ。
    5月末のEU内相理事会でも、欧州共通の移民政策を強化し、
    密入国を取り締まる為に専門の警察官を港湾に常駐させることで合意。
    今や、不法移民排除はEUのトレンドとなっています。
    全ては治安悪化や雇用不安を背景に移民排斥を唱える極右勢力の影響。
    特にイギリスのように、中道左派政権が「極右を牽制する為に」「右寄りの政策を取らざるを得ない」というのは
    皮肉としか言い様が無い状況でもあります。


    アメリカでも似たような動きが巻き起こっています。
    2002年6月5日、アシュクロフト司法長官は記者会見の席上、
    テロ対策の一環として、イスラム諸国出身者を主な対象として、米国訪問者への指紋押捺や写真撮影などを義務付ける
    「国家安全保障出入国者登録制度」を導入すると発表しました。
    これは昨年9月の自爆テロを受け、外国人の手によるテロを警戒・防止する為に導入されるものであり、
    第2次大戦直後の日本の外国人登録法に近い性格の法律になりそうです。
    もっとも、対象者を「イスラム諸国出身者」中心にするというのはやり過ぎの感が否めません。
    ちなみに、国務省は導入に反対中だそうです。


    片や治安対策、片やテロ対策……と、多少異なる理由で外国人に対して門を閉ざし始めた欧米諸国。
    今のところ、その矛先はアフリカや西アジアからの不法移民に対して主に向けられています。
    私はここに、単なる政策判断や政治的配慮を超えた、イスラム文化圏に対する偏見の匂いを嗅ぎ取ってしまうのですが、
    これは果たして考え過ぎでしょうか?


    余談ですが、お隣の韓国では、1960年代から国民共通番号制度と住民登録証、
    指紋押捺制度(指10本)が行われているそうです。

  • 2002年6月3日 22時47分44秒
    完売、そして空席

    先週金曜日に始まったFIFAワールドカップ。
    今のところ、フーリガンの問題では特にこれといったトラブルが発生しておらず、
    会場周辺住民にとっては平穏無事な大会が続いています。
    フーリガンによるトラブルが発生しそうな試合はいくつか残っていますので警備に手を抜くことはできないでしょうが、
    この問題に限れば、先々の見通しは明るくなりつつあるようです。

    ところが、チケット販売のトラブルのほうは全然解決しそうにありません。
    逆に、本番になってから余計に酷くなったような印象すら受けます。

    大会前から、ワールドカップのチケット販売に関しては、次の各点が問題となっていました。

    ●国内販売向け車椅子席チケットの遅延
    6月8日以前に行われる試合のチケットの一部は、「会場で手渡す」ことになったらしい。
    この他にも、国外販売分のチケット発送が遅れてしまい、
    「日本に着いてから、チケットが届いたと実家(アイルランド)から連絡があった」と漏らす女性もいた。

    ●変更された名義管理
    今回のチケットには全て「名義人」が設定されており、名義人でないと試合に入れないという。
    最初は名義変更に厳しい制限が課せられていた。
    ところが、5月24日になって、日本組織委員会(JAWOC)は名義人変更手続きの詳細を決定、
    この決定によって、名義人変更手続きが簡素化され、名義変更に認められる理由も大幅に緩和された。
    元々はダフ屋の横行や転売を防ぐ為に作られたルールだったのだが、これで事実上チェックできなくなった。
    試合当日のチェックも韓国では甘いものだったらしい。

    これだけで済んだのでしたら、まだかわいい方でした。
    ところが、実際にはもっとまずいことになっていたようです。
    ワールドカップの中継を御覧になった方や試合当日に競技場までお出かけになった方ならお分かりでしょうが、
    チケットは「完売した」ということになっていたにもかかわらず、試合当日のスタジアムには多数の空席が存在したのです。
    例えば、6月2日の試合ではそれぞれ──

    カシマスタジアム …… 約7700席
    埼玉スタジアム  …… 約11000席
    釜山のワールドカップスタジアム …… 約29000席
    光州のワールドカップスタジアム …… 約20000席


    ──という空席数が算定されています。
    特に酷かったのが韓国での試合。釜山で行われた試合(パラグアイ vs 南アフリカ共和国)では、
    全座席の半分以上が空いていたという信じられない状況となっていました。

    他にも、6月1日の試合では──

    札幌ドーム …… 約11000席
    新潟スタジアム …… 約8600席


    開会式が行われた5月31日の試合でも──

    ソウル(開幕戦) …… 約3500席

    ──と多数の空席が存在。
    この空席を埋める為に、インターネット上では急遽当日券の販売も行われていたようですが、
    空席を全部埋めるまでには至らなかったようです。


    これだけ大量の空席が生じた理由については諸説飛び交っていますが、
    現時点で最も信憑性が高いとされる情報によりますと、こんな事情があるようです。

    ワールドカップの日本会場分のチケットのうち、一般に販売されるチケットの枚数は1350000枚。
    このチケットのうち675000枚はJAWOCが窓口となって日本国内に対して販売され、
    残り675000枚はイギリスにある「バイロム社」という代理店が販売を行っていました。
    で、日本国内で販売されることになっていた675000枚は無事売り切れとなったのですが、
    バイロム社が担当した海外販売分は思ったように売れ行きが伸びず、
    最初は「完売」と言われていたのにもかかわらず、実は大量の在庫を抱えてしまったのです。
    バイロムは2002年3月末までに海外販売分の売れ残りをすべて日本側に渡す約束になっており、この約束に従って、
    日本側に対して140000枚の売れ残りチケットが回ってきました。こちらも日本国内で完全に消化されたようです。
    つまり、理屈の上では、この時点で全てのチケットが「売れてなければならない」
    ──日本国内で815000枚、海外で535000枚──はずでした。
    ところが、実際には海外販売分により多くの空席が存在しており、
    その未販売分を捌く為、インターネットでの当日販売に踏み切らざるを得なかった……とことらしいです。
    しかし、それすらも完売に至らず、気が付いたら千単位の空席がスタジアムに並ぶことになってしまいました。
    とある大会関係者によると、「まとまった枚数になるスポンサー向けの印刷が遅れたとすれば、
    母国を出るのに間に合わず観戦をあきらめるファンも相当いるだろう」とのこと。
    無論、「買ったけど来場しなかった」人間の存在も考慮しなければなりません。
    しかし、それを考慮したとしても、この異様な空席の数とチケット販売に関する各組織間の連携「ミス」には驚くばかりです。

    当然、大会を運営する各国の組織委員会や自治体がこの話を歓迎するはずがありません。

    ワールドカップの韓国組織委員会(KOWOC)/6月3日付発表
    「海外販売担当の英バイロム社を相手の損害賠償訴訟も検討している」


    ワールドカップの日本組織委員会(JAWOC)/6月2日付発表
    (インターネット上におけるチケット販売について)
    「全体の正確な枚数は不明。今後、どの試合を販売するかも(FIFAやバイロム社から)連絡が無い」
    「困惑しており、法的手段も検討する」


    浅野史郎宮城県知事/6月3日付定例記者会見でのコメント
    「明らかにバイロム社が悪い。当日販売なんて本当にふざけるなと言いたい」
    「能力の低い会社に頼んだ人の責任も大きい。開催地の自治体として糾弾する。責任を取ってもらう。
    場合によっては賠償請求もある」


    釜山市が6月3日に行った行動
    パラグアイ−南アフリカ戦で大量の空席が生じた問題で、FIFAとKOWOCに対し事情説明を要求。
    担当者曰く「(W杯に対し釜山市民が非協力的と誤解され)全国民から恨みを買っている」


    民主党の菅直人幹事長/6月2日に福岡県大川市内で行った記者会見におけるコメント
    (W杯会場で空席が目立ったことについて)「大変残念なことだ」
    「多くの人が観戦できる施設を用意しながら、不手際で見られないということは、社会的に(責任を)問わざるを得ない。
    関係者のしっかりした対応を求めたい」


    新潟県ワールドカップ推進局の三宮博己推進課長/6月1日付記者会見
    (チケットの当日販売について)「連絡は全く受けていない。想定外の事態が原因でトラブルが起きたらどうするのか」
    「(JAWOC)問い合わせしても『こちらも分からない』という答えばかり」

    現在、FIFAとバイロム社、KOWOCとJAWOCの4者が事態打開を目指して協議を行っているようです。
    その結果については、本日の日誌には間に合わないでしょう。


    ……で、その怒りの槍玉に挙げられているバイロム社ですが、今日行われたイタリア−エクアドルなど一部の試合で、
    “SOLVE CONTINGENCY”(偶発事態解決用)の名義で緊急用チケットの販売を開始しています。
    このサービス自体はありがたいのですが、実際にチケットを引き換えてもらった男性によると、
    「受け渡しにあたる職員から『最初は売る気は無かったが、
    ファンサービスで急遽売ることにしたんだ』と説明された」
    とのこと。
    問題の職員がバイロム社の関係者なのかどうかは分かりませんが、氏の発言はあまり賢明ではないでしょう。

    今回のチケット印刷・発券を担当するバイロム社なんですが、
    過去にワールドカップに関連する入場券販売や旅行事業をやっていたことがあります。
    ところが、スポーツ大会のチケット発券を担当するのは初めて。
    しかし、今回のワールドカップでは、FIFAから入札無しで大会唯一の発券業者に指定されたのです。
    その結果、入場券の印刷と送付は予定より遅れてしまい、
    現地の協会からも「業務管理が崩壊している」と叩かれる始末。
    他人に疑いの目を向けるのは良くないことなのですが、
    チケット発券の経験を持たない会社が入札無しで指名されたことに対しては、裏に何かあるのではないかと思ってしまいます。


    誰の責任かを追及することは簡単です。
    ですが、本当に必要なのは、スタジアムの外でチケットが無くてイライラしているサポーターをどうにかすることと、
    次のワールドカップで似たようなチケット問題の再発を防止することです。
    ……とはいえ、前回のワールドカップでもチケット騒動を引き起こしたFIFAに対して、
    チケット問題の再発防止をあまり期待できないのも事実。
    外部の第3者によるチェックや改革は必要不可欠になるでしょう。


    ちなみに、今日行われたイタリア−エクアドル戦でも、思っていた以上に空席が目立っていました。

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