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2003年11月15日 01時03分47秒
1つの時代の終焉
今回の総選挙の結果は、既にマスコミで散々流れている通り、 連立与党が政権を維持する一方で、民主党が記録的な躍進を遂げるというものになりました。 財界・海外からは、この選挙結果を好意的に捉える声と共に、 「これで日本の政局が二大政党制にシフトする」という声も多数上がっています。 実際には、宗教団体をバックに持ち大量の組織票を集めることができる政党も残っていますので、 「2大政党」というよりも「2.5大政党」というのが実態に近いかもしれません。 この「0.5」が、当面の日本の政治においてキャスティングボードを握ることになりそうですので、 素直に「二大政党が実現する」と喜ぶのはまだ早計という印象があります。 実現するとなれば、政権交代も含めて、次回の総選挙以降ということになりそうです。
当然、二大政党が作られる過程では、勢力拡大に失敗した党が潰れて行くことが往々にして起こります。
保守新党は、党首の熊谷弘さんをはじめ候補者が数多く落選し、結局自民党に吸収されてしまいました。 政策には必ずしも賛同できないとはいえ、公共投資の重要性をマニフェストにそのままズバリ書いていた点など、 他の連立与党とは異なる毛色を見せていましたので、どういうことになるのか動向に注目していたのですが、 結局は「大きいものに巻かれてしまう」結末となりました。
ですが、本当に取り上げるべきは、戦後の日本政治史に深く関与した政党の「末期」の姿。 ……まあ、もったいぶらずとも分かると思います。こちらの党です。
選挙前は20人弱というそこそこの大所帯だったのですが、蓋を空けてみたところ、当選議員は6人。
そのうち、小選挙区での当選者はたった1人で、土井党首自身も小選挙区では敗退する有様。
(土井さんの場合、相手が拉致問題に最も積極的に取り組んだ地方政治家の1人だったことも災いしましたが……)
11月13日には、土井党首が辞任の意向を発表し、昨日から今日にかけて後任人事で色々と協議を重ねているところ。
……で、壊滅的な打撃を受け、社民党が数人の議員を残す状態で存続することになったことは、複数の事実を示しています。
(1)現行選挙制度における「敗者復活」ルールの特徴を示す好例
上でも触れましたが、今回の選挙において、選挙区から「自力で」勝ち上がったのは 沖縄2区選出の照屋寛徳さんただ1人。 残る5人の方は、いずれも比例代表からの当選となりました。 ですが、この5人の方はいずれも「小選挙区では負けた」方々。 その上、落選した方の「惜敗率」と得票数には大きな差がありまして……
社民党選出全衆議院議員の得票数 |
選挙区 | 小選挙区での得票 | 惜敗率 | 小選挙区順位 |
秋田2区 | 27624 | 25.2% | 3 |
神奈川12区 | 26954 | 35.5% | 3 |
兵庫7区 | 96404 | 86.7% | 2 |
大分3区 | 111180 | 89.8% | 2 |
沖縄2区 (照屋さんの選挙区) | 74123 | 100.0% | 1 |
沖縄3区 | 58931 | 93.8% | 2 |
(こちらとこちらも参照されたし)
……というように、ちょっと考えさせられる数値が出ております。
「比例区のみの立候補者」がいないため、こうなることは目に見えてたのですが……。
(2)日本におけるいわゆる「護憲」勢力の敗退
今回の選挙は、与野党が揃ってマニフェストを発布し、以前の選挙より政策論争の色合いが強くなっていました。
現行システムが大政党に有利である点や、マスコミが自民対民主の対立構図を煽った点を考慮しても、
比例区における全国の得票数が約560万票から約285万票へ
激減したことを、この2つの事実だけで説明し切れるとはとても考え難いです。
追加として考えられる要因としては、
●北朝鮮政府との決して細くないパイプ
●土井党首の元私設秘書も関与した疑いが持たれている秘書給与疑惑
●社民党支持者の他党への支持の鞍替え
●憲法改正反対など旧来の主張を声高に叫び、国民に支持されるマニフェストを用意できなかった事実
……など、色々なものが推測可能です。
で、個人的には、その中でも4個目に掲げた項目を重く見ているというわけです。
今回の選挙でも、社民党の候補者は党のキャッチフレーズそのままに「頑固に平和」を説いて回ったのですが、
それが受け入れられたとは思えません。
一方、自主制定憲法をマニフェストに明記した自民党は、選挙後の追加後任も含め240議席を確保。
民主党内で、改憲を積極的に主張する人達が決して少なくないことを考えると、
改憲派が衆議院の中で憲法改正に必要な320議席を確保することに成功したと見ても良いでしょう。
この調子で行けば、次の参議院選挙でも二大政党色の強い結果が出そうですので、
戦後政治史においてタブーだった憲法問題から正面に取り組むことが可能な状況が生まれることになります。
「そんなことしてる余裕があったら景気をどうにかしろ」と考える人が多いのは事実ですが、
“北の将軍様”の挙動がどうなるか分からないことを考えると、
国軍創設を含めた憲法改正に着手しても「早過ぎる」ことにはならないはずです。
なお、社民党とは異なる党の事情になりますが、今回の選挙では
「反対する為の反対が通用しなくなっている」という、非常に良い(?)傾向が現れています。
社民党と同様、議席を大きく減らした共産党は、今回の選挙で次のようなフレーズを多用していました。
「野党らしい野党は共産党だけです」(こちらも参照されたし)
いくら事実だとはいえ、これではいつまで立っても政権が取れないわけですよね……。
自分達の政策を国政に反映させたいのなら、「野党らしい野党」とは言わずに、もっと別の言い方があっても良かったはずです。
全国の小選挙区に候補者を立てている以上、理論上は政権奪取も不可能ではなかったわけですし。
もっとも、「反対する為の反対」と感じられる政策が並んでいたのは社民党も似たようなものでしたが……。
いずれにせよ、社民党の壊滅的敗北というのは、日本の戦後政治史が1つの「終わり」を迎えたことの証左。 日本の政治は、良くも悪くも新しい時代に突入することになります。
個人的には、第9条・第99条を中心に、国際政治の現実と相容れない現行憲法は早急に改正されるべきだと考えています。 ですので、今回の社民党の「凋落」という現象は、 憲法改正への道筋がつくことを象徴する出来事の1つとして肯定的に解釈しています。 無論、この選挙が、「戦後史」が「戦前史」に変化する瞬間になる可能性も否定しませんけどね。
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