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2005年8月の図書館長日誌

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  • 2005年8月9日 00時28分40秒
    選挙のお題は郵政民営化だけではありません

    最近は仕事などがいろいろと忙しく、日誌を更新する暇があまりありませんでした。
    その結果、中国で発生しているアウトブレイク──ひょっとしたらバイオハザードかもしれない──も、
    トップページでの告示に抑えざるを得ませんでした。

    しかし、今日、永田町で発生したイベント──郵政民営化法案の否決と衆議院の解散に関しては、
    私もさすがに何か言わなくてはならないと考え、久々の日誌更新という運びになりました。


    私が一連の騒動に対して抱いている感情は、
    「小泉首相の頑固さ加減に対する多少の呆れ」
    「行財政改革の進捗を激しく妨害した自民党の造反議員に対する多少の怒り」
    「外交面・安全保障面の危機的状況の中で生じる政治的空白に対する懸念」
    「政権奪取が予想されている民主党に対する警戒感」
    「公共交通機関で発生が懸念されるテロへの恐怖」
    「久々の政治ショーが楽しめるという期待感」が入り交じった、
    極めて複雑怪奇なものとなっております。

    順番に、そのような感情を抱くことになった背景に触れておきます。


    (1)小泉首相の頑固さ加減に対する多少の呆れ
    御自身にとってはライフワークと化していた課題ですから
    (小泉さんに「郵政民営化は貴方のライフワークですか?」と聞いたら「YES」と答えるんじゃないかな?)、
    「法案が成立しなかったら絶対に伝家の宝刀を引き抜いてやる(=解散権を行使する)」と考えたとしても
    全く不思議な話ではありません。
    ただ「法案が成立しなかったら絶対に解散する」と繰り返し公言した結果、
    造反を誘発してしまった面があるのもまた事実。
    実際に、参議院議員で造反を決めた議員の中で、小泉さんの「解散」という脅し文句に対して
    感情的な反発が生まれていた
    と証言としていた方もいます。
    いくらライフワークだからって、もうちょっと上手い立ち回りかたがあったのではないかと思いました。


    (2)行財政改革の進捗を激しく妨害した自民党の造反議員に対する多少の怒り
    今回否決された法案には「穴」が多く残されていることは、
    賛成派・反対派の双方に共通した認識となっています。
    となりますと、「穴があるから法案を潰せ」と考えるか、
    「とりあえず成立させてから穴を塞げばいいではないか」と考えるかの2択となります。
    郵政民営化法案が提出された当時、私は正直なところ賛否を決め兼ねていたところがあるのですが、
    以前の日誌で紹介した「民営化してもユニバーサルサービスを要求された」という
    ドイツにおける郵政民営化の話を聞いて多少考え方が変わり、
    「とりあえずは民営化させて、問題点があると思ったら議員立法で修正すれば良いのではないか」と
    考えるようになっていたのです。

    ですので、「郵政民営化反対」を声高に叫ぶ議員の姿を見て、
    「あんたらの属している政党のマニフェストをもう忘れたのか?」とか
    「国際情勢が緊迫している時に内政問題で政治空白を作ることの危険性に
    全然気付いてないだろうが」
    というような不快感を覚えたものであります。
    まあ、危機的状況において政治危機を作り出したという点では、
    「解散」を連呼していた小泉さんにも相応の責任がありますけどね。


    (3)外交面・安全保障面の危機的状況の中で生じる政治的空白に対する懸念
    (4)政権奪取が予想されている民主党に対する警戒感
    で、今回の総選挙が行われる2005年の夏なんですが、
    第2次世界大戦終結から60年目ということもあり、中国や北朝鮮や韓国はあの手この手で
    反日ムードを国内外で盛り上げようと必死になっています。
    その結果なのかどうかは定かではありませんが──

    ・極東3ヶ国からは靖国神社問題と教科書問題でいちゃもんを付けられている
    ・竹島、尖閣諸島の領有権を巡る対立は沈静化する兆しを全く見せていない
    ・沖ノ鳥島近海に中国の海軍が頻繁に現れ、日本側の要らぬ警戒心を煽っている
    ・北朝鮮の核問題と拉致事件は、六ヶ国協議の中断により外交ルートでの解決がほぼ不可能に
    ・国連安保理改革は中国及び韓国の妨害と、AU諸国との調整失敗により事実上不可能
    (国連総会で安保理改革が可決されたとしても、中国が修正後の国連憲章の批准を拒否すれば、
    安保理改革はその時点でゴミ箱行きとなりますので、今回の改革は「最初から見果てぬ夢だった」とも言えますが……)

    ・東シナ海のガス田を巡る問題は解決の目処が立っていない
    ・台湾海峡は今年になっても相変わらずきな臭いまま


    ──というように、日本の周辺はどこも安全ではない状態が続いています。
    アジアの覇権を握ろうと膨張し日本と衝突を繰り返す中国や、核ミサイルを日本に向けているであろうと思われる北朝鮮、
    それに現政権になってから急激に赤化が進行している反日国家・韓国が日本の隣にいるのですから、
    日本との間に問題が大量に発生してしまうことは想像に難くないと思います。
    しかも、各国との間で発生するトラブルは──

    ・領土問題(竹島、尖閣諸島、沖ノ鳥島問題)
    ・歴史観や宗教観の押し付け(靖国神社参詣問題)
    ・「外交問題」と呼ぶには値しない内政干渉(教科書問題、憲法9条改正問題)
    ・日本の権益の不法な侵害(韓国の密漁船、東シナ海のガス田における中国側の試掘)


    ──というように、日本側の譲歩が極めて難しいものがかなり多いのです。
    特に、領土問題に関しては国際司法裁判所の裁定以外に基づいた行動以外には如何なる譲歩も不可能です。

    このように、日本の周辺が全般的にきな臭くなっているというのに、
    国内問題で解散・総選挙を行うことで「自分から」政治的空白を作り
    政府の対応力を弱めてしまうことが、今回の解散劇において
    最も気に入らない
    ところでありますが、そのことを今更愚痴っても始まりませんね……。

    で、そんな危険な状況の中、民主党の岡田さんがマニフェストの原案となる政策のアウトラインを発表したのですが、
    この中に非常に気になる表現が含まれていたことを確認してしまったのです。

    民主、単独過半数目指す 小選挙区で170議席以上

    民主党は衆院解散・総選挙を「政権交代が早まる」(岡田克也代表)と歓迎、
    民主党単独政権の樹立を目指し、原則として300小選挙区すべてに公認候補を擁立する方針だ。
    小選挙区で170議席以上の確保を目標に掲げ、比例代表と合わせて単独過半数の議席獲得を狙う。
    自民党が分裂選挙に陥ることにも期待している。

    岡田氏は解散・総選挙を「日本刷新解散」と位置付け、
    「この4年間はニセ改革が横行した。本当の改革をやるのは誰かが問われる選挙だ」と表明。
    郵政民営化ではなく、財政再建、地方分権、年金改革、官製談合、アジア重視外交などを争点に、
    同党独自の政策をマニフェスト(政権公約)に盛り込む考えだ。
    現有の175人のほか、新人、元職など小選挙区の公認内定者81人を既に発表。
    未発表分を含め290選挙区での擁立にめどが立っており、近く追加を発表する。
    社民党との選挙協力は「数カ所」(幹部)と限定的に検討。

    (共同通信) - 8月8日19時38分更新

    「アジア重視外交」
    日本の政治家が「アジア重視外交」を提唱する際、
    「アジア」という単語は基本的に中国と朝鮮半島の2ヶ国を指しています。
    つまり、中国や韓国との対立関係を修復しようとしているつもりなのでしょうが、
    過去の岡田さんの言動や民主党のイラク派兵に対する反対ぶりなどを考慮すると、
    「アジア重視」という表現の言外には「アメリカとは距離を置く」ことが含まれているはず。
    北朝鮮や中国の脅威が眼前に存在するというのに、
    アメリカと距離を置くようなことをやっても大丈夫だとはとても思えません。

    私は「世界史コンテンツ版『明成皇后』」において──

    「日本は現在の親米外交を今後も継続すべきである」
    「膨張する中国を牽制する為、日米安保条約にインドを迎え入れたらどうか」
    「北朝鮮に対する空爆を検討するべき」

    ──などと書いたように、親米路線を主軸とした外交戦略が日本にとって大事であると考えています。
    日本の「友人」がいるとすれば、国民性や価値観、統治体制、
    言論の自由の保障、法治国家としての成熟度などから見て、
    中国や韓国や北朝鮮ではなくアメリカのほうが日本の「友人」に相応しい点は明白ではないでしょうか。

    もしも、岡田さんや民主党の首脳部が「アメリカと中国の間でバランスを取ろう」と考えていたり、
    「アメリカから離れ中国を主軸とした新しい同盟関係を作ろう」と考えていたとしたら、
    私はこの人達の外交センスを心の底から疑わざるを得なくなります。
    アメリカと中国を両天秤に掛けようとすることは、韓国の現大統領が試みて既に失敗していますし、
    大国であるとはいえ核兵器を持っていない日本が試みようとしても、
    アジア太平洋地域の不安定要因を不必要に増やすだけとなってしまいます。
    また、「中国を主軸とした新しい同盟関係は、現代に華夷秩序を復活させるだけではないか」という
    懸念が払拭できないため、私としては中国との同盟には到底賛同できません。

    過去に「ODA」の名目で数兆円も中国に金を「贈った」挙句、
    中国の国家主席だった江沢民氏から感謝の言葉ではなく
    「評価する」と言われたことは今でもはっきりと覚えています。
    その態度は、金を恵んでもらった普通の人の態度ではなく、相手を見下した王様のような態度でした。
    彼らの高圧的な態度が現政権になって変化したかどうかは不明ですが、
    靖国神社問題などにおける中国政府の姿勢を見ていると、残念ながら期待薄としか言えないのが現状です。


    民主党に対する警戒感が杞憂に終わるかどうかは、民主党のマニフェストを確認するまでは分かりませんが、
    過去に民主党幹部や岡田さんが見せてきた言動から類推すると、杞憂では終わらない恐れのほうが高そうです。

    ちなみに、小泉さんは記者会見で「(靖国神社参詣を)衆院選で争点にする気は全くない」と言いましたが、
    それ無理難題というもの。野党側からすれば靖国神社問題も立派な攻撃材料であり、争点の1つになっているはずです。


    (5)公共交通機関で発生が懸念されるテロへの恐怖
    これに関しましては、スペインでサパテロ政権が誕生する契機となった総選挙中に、
    マドリードに通じる通勤列車の車内で爆弾テロが発生し、多数の死者が出た事件を想起して頂ければ十分です。
    反テロ活動の一環(?)としてイラクに自衛隊を人道支援の名目で派遣している日本としても、
    マドリードで発生した事件は決して他人事ではないはずです。


    (6)久々の政治ショーが楽しめるという期待感
    今回の総選挙は、投票日が2001年9月11日に発生した同時多発テロの丁度4年後という、
    まるで計算され尽くしたかのような日程となっておりますので、
    政治ショーとしての派手さやインパクトの大きさは並大抵のものではないでしょう。
    現在のブッシュ政権にとって最高の理解者であり協力者である日本の小泉首相が、
    同時多発テロの丁度4年後に有権者からの審判に晒されるというのは、
    少々「話が出来過ぎではないか?」とさえ思えてきます。
    今回の選挙は、ブッシュ政権に対する「間接的な審判」の色合いも帯びていると言えるでしょう。

    今のうちから予言しておきますが、今回の選挙に合わせて、
    どこかのテレビ局が『華氏911』をテレビで放送するのではないか
    と思っています。
    この予言が成就した場合には、放送を行った放送局を容赦無く吊し上げる所存であります。
    まあ、外れてもらった方がありがたい予言ではあるのですが、
    以前の国政選挙で、テレビ朝日が投票直前の深夜に第2次世界大戦の記録映画を放送したこともありますし、
    今回も何処かの放送局が似たようなことをやらかすのではないかと思います。
    特に、今年は敗戦60年目という節目に当たりますからね。


    何はともあれ、今回の選挙は郵政民営化と構造改革だけがテーマではありません。
    どの党に投票されるかは皆様の御判断次第ですが、
    安全保障問題・外交問題も大きな論点として考慮する必要がある点は、
    是非ともお忘れ無きようお願い致します。

    ちなみに、どの政党を支援するかについては、自民党を割って出るであろう造反議員グループが
    政権公約を掲げる時まで待っておきたいと思います。
    実際の支持政党はほぼ固まっているのですが、新党結成を待ってあげるのも礼儀だと思いますし……。

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