部隊編成前
エアード・ブルーマスター
「ふぅ……だりぃな………」
聖都からだいぶ離れたところにある川――そこで男はやる気なさそうに釣りをしている。
髪と瞳の色が蒼色と、一目でクレアの者ではないことがわかる。
男の名は『エアード・ブルーマスター』
半年ほど前にクレアにやって来、今はクレアムーン第二部隊『蒼風』の指揮官の職にある。
「借りを返すために軍に入ったはいいが……いきなり将軍かよ…よっぽど人手がなかったのか……?」
半年前…エアードは異なる世界で『真なる冬』と呼ばれる銀髪の巫女と交戦、
その後この世界に来たのだがすぐに行き倒れ同然の状態に………。
後もう少しであの世に行くところをクレアの者に救われたのである。
そして、自分を助けてくれたクレアに借りを返すため、軍に入ったのであった。
「……あー! エアード将軍、そんな所にいたんですか!」
一人の女性――エアードの副官、曇空時雨がエアードを発見して駆け寄ってくる。
「げっ……もう来たのかよ…」
「『もう来たのかよ』、じゃありません! まったく…また仕事さぼって釣りに行って!」
「…お前、俺を発見するのが早くなってないか? 前は半日かかっても見つけられなかったのに…」
「エアード将軍がワンパターンなだけです。決まった場所にしか行きませんから」
「むう……」
「もう…明日はもう一人副官の方が来るんですから、きちっとしたところを見せないと…ほら、いきますよ!」
「いてて…! こら、耳を引っ張るな!」
「仕事さぼってる将軍が悪いんです。ほら、行きますよ!」
『蒼風』副官として結城沙耶が着任する前日のことだった…
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