白の悪夢

エアード・ブルーマスター

雪と氷に埋め尽くされた白銀の世界…そこで男と女は対峙していた。
蒼い髪と瞳を持った男と、銀髪の巫女。
巫女はその世界の全てを『静止』させた…
男は巫女の行いを止めようとしたが間に合わなかった…
しばらくの空白…二人は言葉を交わした後、お互いを殺しにかかった。
男の剣が、蒼い閃光となり巫女の体に襲いかかる。
巫女の冷気が、男の体を、そして魂を凍らせていく。

どれくらいの時が経ったのだろうか…
二人はお互いの技により満身創痍の状態だった。
突如男の体が蒼い彗星と化し、巫女を襲う。
それに合わせたように巫女の冷気が収束し、白き結界となり男の体を包む。
一瞬の閃光の後…男の剣は巫女の左胸を貫いていた。

巫女の体が白き大地に横たわり、雪に埋もれていく。
男はしばらく巫女を見つめた後、一筋だけ涙を流した。




「……チッ………なんて夢だ………」
起きてからの第一声がこれだった。
周囲の状況から判断するに、今はまだ夜なのだろう。
額に手を当ててみれば、じっとりと汗をかいていたのがわかる。
「…見た夢が……夢だからな……」
さっきの夢は、半年前『真なる冬』と戦った時の物だ。
寒空一族が作った『真なる冬』は、一族の巫女の体を乗っ取りその体を使って世界を死滅させる。
そして半年前、『真なる冬』はある巫女の体を使い、一つの世界を死滅させた。
その直後、俺がその場で殺した。
奴が使っていた体の名前は『寒空小雪』………俺にとって、大切な奴だった。
「長い時間を生きてきたんだ。一人の人間のことくらい、既に吹っ切れてるもんだと思ってたが…うまくいかないもんだな」
そう言って俺は寝床から抜け出し、風に当たりに行く。
…少しでも早く夢のことを忘れたかった。
今のままでは、明日からの軍務に支障が出そうだ。
――そう、今は過去のことを振り返っている暇はない。

(2002.09.11)


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