渇き
エアード・ブルーマスター
また一人、敵兵が血しぶきを上げて倒れていく。
今ので何人目だろうか…戦闘開始後しばらくは数えていたが、途中から面倒になってやめた。
視界に入る者全てを殺していく…立ち向かってくる者、逃げようとする者…区別はしない。
自分でもおかしいと思う。
この地で戦闘を始めてから、どうにも渇いている。
以前ここで紗耶を守りきれなかったせいだろうか…
それとも、水菜の部隊と再び戦っているせいだろうか…
「…………!」
一撃で死にきれなかった敵兵が、足を掴んでくる。
「し、死にたくな……」
「………………」
そんなことを言ってくるが、俺には関係ない。
首を踏みつけ、今度こそ絶命させる。
はじめに3人ほど殺したときから、おかしくなってきた。
唐突に渇きを感じはじめた。
敵が血を流すたび、敵の命が消えるたび、その時だけ渇きがマシになっていく。
気がつけば味方の部隊から離れており、味方の兵の代わりに敵兵の死体が俺を囲んでいた。
自分の姿を見てみれば、まわりの死体の物だと思われる血で真っ赤に染まっていた。
それを理解した途端、体が勝手に動いた。
さらなる獲物を求めに、さらに殺すために…
「やれやれ…そんなに殺しが好きなわけでもないのにな……」
ぼやきながら、新たにやってきた敵兵を上下真っ二つにする。
そこではじめて、自分が暗い笑みを浮かべているのがわかった。
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