白の来訪
エアード・ブルーマスター
「ぬっがぁぁぁぁぁっ!!!」
叫びながら何度も壁にヘッドバッドをする。
当然の事ながら額が割れ、あっという間に顔面が血に染まる。
浴室での一件から一日経った今…彼、エアード・ブルーマスターは思いっきり壊れていた。
「ふぅ…とりあえず、少しは落ち着いたか…」
顔面血まみれの状態で爽やかに言う。
床には壊れた壁の破片と血溜まり…どこから見てもイッてる人だ。
「どうして俺は昨日、あんなことをしたかな…?(−−;」
未だ流血してるにもかかわらず、昨日の事を思い出す。
シチルでの敗北後、エアードは水菜部隊の捕虜になりバライの街へとやって来た。
普通の捕虜とは違い、エアードはかなりの好待遇を受けていた…水菜がそのように計らったのであろう。
趣味の釣りも結構頻繁に行くことが出来たので、昨日も釣りに行っていた。
結局何も釣れなかったので、汗を流してから夕食まで昼寝でもしようと思い、浴室へ行ったのだが…そこで事件が起こった。
裸で絡み合ってる水菜とメイリィ…しかも、水菜の方はかなり凄い状態。
ごまかしてその場から去ろうとしたが失敗…結局、勢いに任せて水菜を抱いた。
一日経って考えると、いろいろなことに気づく。
「水菜としてしまった……これはやばいぞ、かなり……紗耶の事はどうしたんだ俺…(−−;」
自分を慕っている元副官の少女のことを思い出す。
エアードは彼女とも関係を持っていた…
そして、一つの答えにたどり着く。
「もしかして…俺は二股かけてる状態なのか?」
「一般的にはそう言うかもねー」
「あれか…俺は外道か? 人間失格か!?」
「そうだねー」
自分の導き出した答えに驚愕し、叫ぶエアード。
そして、それに答える声…
「…………………………あれ? おかしいな…この部屋には俺しかいないはずだが…(・・」
そう言って、声のした背後を振り返る。
半年前、エアードが自分の手で命を奪った女性…銀髪の巫女、寒空小雪がそこにいた。
まわりには鬼火らしき物が浮かんでおり、体も少し透けており存在感が薄い。
「久しぶりだね、エアード♪」
「小雪…本物なのか…?」
「本物だよ〜。ただし、幽霊だけどね」
小雪は生前と変わらぬ様子で笑う。
それが、エアードに半年前のことを思い出させる。
「小雪、俺は『いやぁ〜、私が死んで半年しか経ってないのにいい目にあってるみたいだね♪』」
「………へ?」
「まさか、二人も相手にしてるとは思わなかったよ…手、早かったんだね?」
小雪は笑顔を見せているが、こめかみの部分が怒りを表している。
いわゆる『コロす笑み』だ。
「い、いや、その……(−−;」
「一周忌過ぎたならともかく、半年でねぇ…しかも、するまでの期間短いし。私の時は、ずいぶんかかったのにね〜♪」
…マズイ
…マジデマズイ
…コレハヒジョウニマズイ
「え〜と、小雪さん?それには事情が…(・・;」
得体の知れぬ恐怖を感じつつ、エアードは小雪に言い訳をしようとするが…
小雪は、とびっきりの笑顔でエアードを見つめた。
「マジ死ね♪」
「あの…エアードさん、起きてますか?」
コンコンと、水菜はドアを叩く。
エアードが昼過ぎになっても部屋から出てないと聞いたので、様子を見に来たのだ。
「入りますよ……ひゃっ!?」
そっとドアを開けると、部屋から冷気が流れ込んでくる。
奇妙に思い、部屋をよく見てみると…
「…っ!」
部屋の中央には、冷気の元…凍りかけのエアードが置いてあった。
冷蔵庫に入れてたトマトがちょっと凍ってた…そんな感じの状態だ。
水菜は急いでエアードのそばに行き、体を揺さぶる。
「エ、エアードさん、しっかりして下さい! ああ、ど、どうすれば…」
オロオロしながら、水菜はエアードの体を揺さぶり続けていた…
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