ラスケートとの出会い
アメージュ・ラズリ
此処は半年前からアメラが席を置く部屋だ…。
アメラは何時もの様に椅子に腰掛け寝そべっていた。
「………暇ぁ……暇ったら暇ぁ……何か起きないかなぁ…?」
トントン…
そう思っているとノックの音がした。
「……誰だろ? どうぞ〜」
………カチャ…
暫く経ってドアが少し開いた。
そこから、少し可愛らしい様な大人っぽさと少女のあどけなさを持っていそうな女性が顔を出した。
「……し…しつれい……します……」
少し遅れてか細い声で挨拶をしてきた。
「……だれ?」
ビクゥ!!と音が出るかのごとく女性はまた直ぐに廊下へ顔を素早く戻した。
(う〜ん、誰だろ……? でも、面白い人だなぁ)
などと考えていた。
あたしは少し考えて、昔取った杵柄を利用することにした。
……コソコソコソコソ……
女性が部屋を覗いている。
(あ、入ってきた入ってきた♪)
「え…? あ…? う〜、居ない……何処に行ったのですか〜? しょうぐーん?」
(うわ、泣き顔だぁ……)
「うぅ……クスン……う…う…う………うええぇぇぇぇぇん!」
(わあ! 遂に泣いちゃったよ…)
「うええぇぇぇ、じょうぐ〜ん、どごれずがぁ〜」(将軍、何処ですかと言っている)
……パサッ
いい加減飽きたので隠れていた壁からアメラは出てきた。
……ススススス…抜け足差し足忍び足……
と、いう感じに女性に近づいていった。
……チョンチョン(肩を突付いている)
「……うえぇぇ……え? きゃう!?」
……ス…ゴンッ!
アメラから逃げようとした女性は足を踏み外して顔から大きく地面とぶつかった。
「……だ…大丈夫…?」
アメラは心配そうに見つめた。
「うぅ……だ…大丈夫です……多分……」
「そ……そう…ん?」
女性の膝元にアメラ宛の1枚の手紙が置かれていた。
「ん? ……あたしに? う〜ん、一体誰が……?」
アメラは手紙を開けて中を見た……が、直ぐに固まった。
アメージュ・ラズリ将軍へ
この子は貴君にお任せします…。
というか、マジで頼みます!
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と、だけ書かれていた。
「え…えっと、貴女名前は……?」
アメラはとりあえず女性に名前を尋ねた。
「……え…えっと、ラスケート……私の名前はラスケートって言います…」
女性=ラスケートはアメラに少しなれたらしく少しずつ話し始めてきた。
「えっと、ラスケートさんは、どうしてここに? やっぱり厄介払い?」
アメラは冗談で聞いてみた……が。
「……う……うぅぅ…うええええええぇぇぇぇ!!…」
(う……こりゃ超音波の域に行ってるよ……)
耳元でこれはないよと思いながらアメラはラスケートを宥め始めた。
「あ〜、ちょっと落ちついてね…ね?」
(子供がいたらこんな感じなのかな?)
「えっと、じゃあこの紙にラスケートさんの詳細を書いてね」
「……え…っと、呼び捨てで……構いません……」
ボソリとラスケートが呟いた。
「わかったわ、じゃあラスケート、自己紹介文を紙に書いてね」
2度目の申し出でやっとラスケートは紙を取った。
………カキカキ………カキカキカキ………
・・・・・30分後………1時間後………
(……な…長い……)
半分げんなりした様な顔のアメラの隣で黙々とラスケートは文を書いていた。
「……で、出来ました……」
「え? あ、うん、出来たのね…え〜っと、どれどれ……」
名前:ラスケート
出身地:ガルデス共和国の南東
年齢:24
体重、3サイズ:秘密…です
好きなもの:本
嫌いなもの:人ごみ、怒る人
趣味:読書
19歳の時に士官学校から卒業して、今まで色んな将軍の所へ回されました。
見た目で分かりますが私は内気で泣き虫です。
それに、人見知りもします。
こんな私でも宜しくお願いします、アメージュ・ラズリ将軍。
(う…う〜ん、なんて言えばいい紹介文なんだろ…)
アメラは冷や汗を掻きながら紹介文を机の中に入れた。
「えと…何でラスケートは人見知りなの?」(あー! 何言ってんだろ…あたし)
苦し紛れの打開策の為に言った言葉はそれだった。
「あの……父様と…母様が……私を大事に育ててくださって……それで…外の世界に出してくれなかったので……それで……」
ラスケートの話は段々とディープになって行った。
「………だ〜〜〜!! 暗くなったら駄目!!」
遂に耐えられなくなったアメラは切れた。
「きゃっ!? しょ……将軍……?」
ラスケートは驚き一杯の表情で尋ねて聞いてきた。
「だ〜か〜ら〜、声はもっと大きく喋ってよ、それとあたしの前じゃ暗くならない事! 分かった?」
「え…で…でも、将軍…」
ラスケートはアメラに訴えた。
「シャラ〜〜ップ!! それに将軍言わないでよ、あたし女友達が欲しかったから友達みたいに接してよ」
「友達」と言う言葉に反応してラスケートは顔を真っ赤に染め上げた。
「あ…あの?! で……でも……私…なんかが将軍のお友達って言うのは……ひゃっ?!」
うろたえているラスケートの口にアメラは手をかけて左右に引っ張った。
「そんな事いうのはこの口ねぇ〜〜〜?」
……縦縦横横まーる描いてまーる描いてチョンチョンチョン……
というふうにアメラはラスケートの口を引っ張った。
「や……やめへくらはい……ひょ……ラメーリュひゃぁん?!」(訳:止めてください、しょ…アメージュさん)
それを聞いてアメラは少し微笑んでから手を口から抜いた。
「やっと、名前で呼んでくれたわねラスケ♪」
「うう……痛い……ふぇ? ラスケ……って私の事……ですか?」
涙で潤ませた瞳をラスケはアメラに向けた。
「ん?ええ、そうよだってラスケートなんて面倒だから、いいでしょ?」
「え…えと…その…嬉しい…です」
ラスケは照れながら答えた。
「そう、じゃあ、友情の印として笑いあいましょ♪」
そう言ってアメラは無邪気に笑った。
「えっと……はい♪」
ラスケも笑った……とてもとても無邪気な笑みだった今までの暗さをかき消す様な太陽の笑いだった。
終
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