Dead End
バーネット=L・クルサード
「キリカ!」
帝国軍第13部隊『ブラッディ・クルス』陣内にバーネットの声が響く。
「そんな大声出さなくても聞こえてますよ」
バーネットの声にやや眉根を寄せつつ、側にいたキリカが答えた。
「で、何です? 用もないのに呼んだわけでは……」
「当たり前だ。ソフィアとシズマの2人に伝令を頼む」
「はい」
バーネットの言葉に軽く返事をすると、キリカはすっと眼鏡の位置を直す。
「これから敵本隊に突撃を仕掛けるんで、2人にも協力してもらいたいと伝えてくれ……ソフィアの方はアリスに伝えた方がいいかもしれないが」
「了解しました」
キリカがバーネットの言葉を文書表現に変え、さらさらと紙面にペンを走らせる。
ものの数分で伝令書が出来上がり、それを陣幕の外にいた伝令兵に手渡して作業終了。書類処理能力に関しては帝国でも1,2を争うほどの腕を持つ彼女の手にかかったことで、あっという間に作業が終わったのだ。
「あー……キリカ」
「何度も呼ばなくてもここにいますよ」
一息吐く間も無く、バーネットに再度呼ばれる。
「ついでに、本隊にも連絡。これはキリカが直接行ってくれ」
「私が、ですか?」
一瞬きょとんとした表情を浮かべるキリカであったが、直ぐに気を取り直して再度、バーネットの言葉を待つ。
「ああ。直接頼む。『テンプル・ナイツ』3部隊と共に敵本隊への突撃を要請。拒否権はナシだと伝えてくれ」
「了解」
返事の後、一瞬の間。
「……拒否権無しって相手は司令ですよ!?」
「司令が拒否したら勝てるもんも勝てん」
きっぱりと言い放つバーネットにキリカは諦めたように首を振る。
「どうなっても知りませんよ?」
「そこをフォローするのがアンタの役目でしょ」
「……そうですね」
「それじゃ頼むよ」
そう言ってバーネットはキリカへと背を向け、後ろ手に手を振りつつ、追い払う仕種をする。
「解りました。ですが貴女の発言は大幅に変更して伝えさせていただきますね」
「構わんよ」
さっさと行ってくれ、という意思表示であるが、キリカはそれを気に留めた様子もなく淡々と確認を取ると去っていった。
「さて……」
やや離れた位置に陣を構えるレナスティーナの部隊を見やり、バーネットは1つ溜息をつく。そして、鋭い視線に殺気を込めた。
「……どこぞのじゃじゃ馬に自分がやった罪の重さを知らしめてやりますかね」
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