酒豪

ベルンハルト・フォン・ルーデル

男が妻と死別したのは、ある秋の日だった。母の死を実感できず、
泣きじゃくる子供達を持て余した男は、子供達の前に一本の瓶を置
いてこう言った。
「ルーデル家の男は、強くなければならん。たとえ酒でも、負ける
わけにはいかん…。わかるな…?」
とまどいつつも父の剣幕に押されて頷く兄と、意味もわからずに頷
く弟に、男はグラスを渡し…そして酒を注いだ。
………やがて弔意を告げに訪れた義弟が見たものは、空になった瓶
を抱いて眠る二人の子供と黙然とグラスを傾ける父親の姿だった。

グラスの中の氷が回転し、澄んだ音がルーデルの意識を引き戻す。
……………回想は、始まった時と同じく唐突に終了した。
昔を思い出すのは、老人になってからすればいい。
父や兄、そして叔父と思い出話をするのは、さらに後で良いだろう。
彼らは、もう時間とは無縁の世界にいるのだから……。

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以上、ルーデルの回想SSです。
ルーデルはこのことを他人に話すことはありませんので、PL限りでお願いします。


(2002.09.15)


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