暁
ベルンハルト・フォン・ルーデル
払暁。
明るさを増す周囲の中、そこだけ闇を残したかのような一団が、リュッカの街を見下ろす丘に姿を現す。
掲げられた漆黒の軍旗には、虎を模した紋章の下にIIIの一文字が縫い取られている。
帝国正規軍の一つ第三騎士団、2,000名がその位置に陣取っていた。
朝日を浴びて黒く輝く甲冑に混じり、唯一甲冑を纏わぬ隻腕の男は、眼下に広がる状況を見下ろして冷たい笑みを浮かべる。
(……帝国の正軍師に手を出そうというのだ。相応の覚悟は、あるのだろうな……?)
リュッカの森は、再び赤く染まろうとしていた……。
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