強行軍
ベルンハルト・フォン・ルーデル
昼なお薄暗い森の中、下草を跳ね上げて疾駆する一団がある。
木々の間から漏れる光を受け、鎧が黒く鈍い光を反射する。
鎧のところどころが鈍色に輝くのは、先程の戦闘の証だろう。
帝国軍第三騎士団、その数約1,800。
強行軍を重ね、帝都からリュッカまでの道程を通常の半分程度で踏破したその集団は、なお行軍速度を落とすことなく前線へ疾駆する。
黒く輝く甲冑に混じり、唯一甲冑を纏わぬ隻腕の男は、無言で手綱を操りつつ思考をめぐらせる。
……急がねばならない。
……クレアの援軍が来る前に。
……クレア最高の将である、「ヤツ」が来る前に…。
やがて男は次の戦場に到達する。
戦うべき敵と、守るべき味方の元へ。
そしてまた、リュッカの森は赤く染まる……。
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