連戦
ベルンハルト・フォン・ルーデル
かつて沃野であった草原、そこは今血みどろの泥濘と化していた。
その泥濘のそこかしこに転がるクレアの鎧を纏った屍を踏み越え、隻腕の男はゆっくりと馬を進める。
長雨により補給の途絶えた前線への、軍師エルを副将とした食料輸送部隊。
そしてその輸送を阻止しようとしたクレア軍。
輸送部隊を包囲し、護衛部隊への攻撃を加えたクレア軍に対し、帝国軍は苛烈な反撃で応じた。
結果としてクレア軍の意図は挫かれ、大量の屍という形をとって男の足元に散乱している。
先ほど、切り開いた包囲網の一角から輸送部隊が目標地点に到達、男の任務は、成功という形でひとまずの終了を迎えた。
しかし、一つの報告が男の表情を再び引き締める。
「クレア第5部隊、神剣抜刀隊を確認!」
……「ヤツ」が、来たようだな……
口元に僅かに微笑を浮かべ、男は指示を出すべく右腕を動かす。
帝国軍第三騎士団、その数約1,600。
――彼らにとっての本当の戦いは、これから始まる。
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