戦場に降る雨

ベルンハルト・フォン・ルーデル

夕刻から振り出した雨は夜半になっても降り止まず、馬上の男達から体力と体温を容赦なく奪って行く。
泥濘の中に累々と転がるのは、かつて馬上の男達の敵であり、そして味方であった者達。
先ほどようやく終了した、激戦の爪痕である。
地に臥した人影のうち、まだかろうじて命の灯火を維持している者の多くがこの雨で死期を早めるのだろう。
かつて帝国軍の前線部隊を苦しめた長雨は、今度は異なる形で医療班に所属する者達を苦しめていた。

帝国軍第三騎士団とクレア第7部隊の激戦。この戦いで両軍の死者は軽く1,000人を超えた。
兵数の三分の一強を失った帝国軍と、半数近くを失ったクレア軍。
だが、明日になればまた敵を変え、場所を変えて戦闘は続くのだろう。
戦争とは、そうしたものだから。

流された血を洗い流すかのように。
生きるもの全てを静かなる死の世界へ誘うかのように。
雨はただ、静かに降り続ける。


――リュッカの激戦は、未だ終結の様子を見せない。

(2002.10.01)


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