知将!?
ベルンハルト・フォン・ルーデル
「ルーデル閣下…!」
背後からの呼びかけに対し、ルーデルはグラスを止めて振り返った。
本国からの伝令兵とおぼしき人影が、彼の元に駆け寄ってくる。
それを見たルーデルは僅かに顔をしかめ、残り僅かとなったグラスを横の机に置いた。
書簡の内容は、容易に想像がつく。
現在帝国軍の第三騎士団を中心とするリュッカ方面軍は、クレアの神剣抜刀隊他数部隊の攻撃を受けて後退を余儀なくされており、現在リュッカ地方に駐屯する軍はルーデル直属の1,000騎を割り込むまでに減少している。
対するクレア軍は未だ5,000の兵力を温存しており、書簡の内容が積極攻勢を意味するものでないことは、もはや自明の理であった。
伝令兵がもたらした書簡に目を通し、ルーデルは微妙に表情を動かした。
差出人の名前は、ユーディス・ロンド。
モンレッド方面軍の参謀役を務める、若き知将である。
書簡の内容は、こうだった。
こちらから援軍を送りますので、援軍が着くまで、攻撃は仕掛けないでください〜(^^;
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ルーデルは僅かに微笑しただけだった。
どの道、「通常攻撃」を仕掛ける気はない。
ルーデル直属の第三騎士団には、「突撃」以外の選択肢はないのだから。
出陣の準備を整えるルーデルに、別の伝令兵が駆け寄ってくる。
………何事かと視線で促すルーデルに、伝令は恐縮しながら次の書簡を差し出した。
その書簡には、こう書いてあった。
………ルーデルの頬を、一筋の汗が流れ落ちる。
余談だが、ルーデルがユーディスの知略を評価するようになったのは、このことがあってからだと言われている。
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