約束
ベルンハルト・フォン・ルーデル
モンレッドの戦場に向かう前日の夕方。ルーデルは突然ナギサに呼び出された。
約束の場所を訪れたルーデルに、ナギサはいきなりこう言った。
「行くな、ルーデル君。」
訝しむルーデルに、ナギサが畳み掛ける。
「行くんだったら、約束しろ。……必ず無事で帰って来るって。
約束できないんなら、行くな。」
なんだ、そんな事か……と言いたげに肩をすくめたルーデルの頬にナギサの拳が炸裂した。
「アタシの気持ちなんて、何も考えてないんだろ……!」
「いつも黙って戦場に行って……!」
「いつも大怪我して帰ってきて……!!」
「今度こそ帰ってこないんじゃないかって、心配してるのに!!!」
容赦なくルーデルをグーで殴り、そしてそのままルーデルの胸に顔を埋めておいおい泣き始める。
ルーデルは、動かなかった。
守れぬ約束は、するべきではないと思っていたから。
約束を守れなかった戦友を、あまりに多く知っていたから。
……だから、泣きじゃくるナギサに黙って背を向けた。
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