嵐の予感

ベルンハルト・フォン・ルーデル

雨の粒がルーデルの肩で弾け、ルーデルは無言で空を見上げた。
その視界に、重く垂れ込めた雲が映し出される。
(……少々、荒れそうだな……)
ルーデルは心の中でそう呟き、視線を前に戻した。
その眼前に展開するのは共和国第10部隊、Legion。
共和国最高の勇将と称される、キロール・シャルンホスト将軍
の率いる部隊である。
突撃の命令を下すべくルーデルはゆっくり腕を上げ、そして振
り下ろした。
その号令に答え、第三騎士団は徐々に速度を上げつつ共和国第
10部隊へと一直線に突き進む。
密集隊形をとった共和国第10部隊が、それを迎え撃った。
互いの槍がすれ違い、その穂先に貫かれた人馬が次々と血煙を
撒き散らしつつ絶命する。
思考の暇もなく絶命した人馬の屍を飛び越え、第三騎士団の第
二陣が敵陣深く突入し、繰り出される槍先が共和国第10部隊の
兵士達をなぎ倒した。
その様子を前線近くで見やり、ルーデルは僅かに顔をしかめた。
共和国軍の動きが、予想以上に鈍い。
(……らしくないな、シャルンホスト。何があった……?)
そう敵将に心の中で呼びかけつつも、その手は容赦なく敵軍を
駆逐すべく指示を飛ばし続ける。
手加減すべき謂れなど無論ない。
この程度で倒れる男なら、所詮はそれまでということだ。
(……卿と戦うためにここまで来たのだ。俺を失望させるなよ、
 シャルンホスト……?)
そう心の中で呟くルーデルの口元に、冷たい笑みが宿っていた。

(2002.11.10)


年表一覧を見る
キャラクター一覧を見る
●SS一覧を見る(最新帝国共和国クレア王国
設定情報一覧を見る
イラストを見る
扉ページへ戻る

『Elegy III』オフィシャルサイトへ移動する