軍規違反

ベルンハルト・フォン・ルーデル

その報が第三騎士団の本陣に届いたのは、作戦会議の最中だった。
……報告は簡潔だったが、その内容は深刻なものだった。

帝国軍第11部隊白鎧騎士団、共和国軍第10部隊Legionの攻撃を受けて壊滅。
指揮官、白峰渚は捕虜となる。

報告を聞いた上官がぐらりとよろめき、作戦テーブルに手をついて体重を支える。
その勢いで、地図の上に展開された敵味方の部隊を示す駒が宙を舞った。
一瞬気遣わしげな視線が、作戦会議の場を交錯する。
そういえば、上官は帝国軍第11部隊の指揮官と恋仲だったはずだ。
僅かな空白の時を置き、それでも何事もなかったかのように軍議は続く。
……軍議は、いつもより長引いた。
簡素な作戦が作戦テーブルで展開される。
静かながらも細密な打ち合わせが展開され……そして、終了する。
彼は頭の中で作戦会議の流れをもう一度整理し、僅かに眉を顰めた。

……普段よりさらに簡素な作戦。
……にもかかわらず、普段より細密な打ち合わせ。
……そう、まるで指揮官がいないことを想定しているかのような。

全てが揃った時、彼は若き指揮官の考えていることを理解した。
……誰も連れず、一人で恋人を奪い返しに行くつもりであることを。
ちらりと上官に投げかけた彼の視線を、静かな視線が受け止める。
……僅かに頷いた上官を見て、彼は自分の想像が事実であることを確信した。
ならば、彼も応えずばなるまい。
副将の役目には、緊急時の上官の代行も含まれているのだから。

……故に、その夜上官が一人姿を消しても、彼は驚かなかった。

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おまけ
副将   「…………結局、いつもどおり突撃すれば良いのですな?」
ルーデル 「………(俺が突撃以外の命令を出したことがあったか……?)」


(2002.11.24)


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