老将

カーチャ・ボルジア

モンレッドの会戦はついに評議委員長のラヴェリアまでが参加するほど緊迫していた。首都防衛の要である砦は帝国軍のモリス、ユーディス、カオルィアの各部隊に攻撃され、防戦で手一杯である。クレアでも首都決戦が開始された。この戦いも終章に近づいている事は誰の目にも明らかであった。
そんな戦闘の最中、カーチャの騎兵部隊はカオス、バルドル両部隊との連携作戦で敵第二騎兵部隊を壊滅させることに成功していた。敵将モリスはカーチャ部隊の捕虜となった。だが、モンレッドには新たにアオヌマ部隊が進出して来ている。戦況は予断を許せない状況が続いている。そんな折にカーチャはラヴェリアの陣地に呼び出された。

「カーチャ、捕らえたモリスを拷問しているという噂を聞いたが、本当か?」
「大した事はしていません。逆さ吊りにして鞭で打っているだけです。」
「それを拷問というのだ・・・ お前の趣味は分かっているが、相手は老人だぞ。あまり無茶はするな。」
「私が知りたい事が分かれば、責めるのは止めます。ほぼ話してくれました。」
「なんだ? 知りたい事というのは?」
「ハルバートのサーネ・ボルジア家の場所と警備状況です。場所は城塞都市の南東部。周りは堀で囲まれているので賊は簡単には侵入出来ないだろうと言うことでした。でも。アタシは行きます。」
「戦闘を放棄して行くと言うのか。軍法会議ものだぞ。第一、お前の馬術が如何に優れていると言っても、ハルバートまで戦時下に行くのは無理だ!」
「しかし、ラヴェリア閣下も聞き逃す訳にはいかない情報もモリスは吐いてくれました。」

モリスからの情報には鬼委員長もその耳を疑った。共和国も含めて、捕虜となった女性兵士を帝国皇帝はボルジア家へ献上しているというのだ。女達がその後どうなっているのかは分からない。だが、そこまでしてセルレディカがボルジア家を優遇しているのは何か理由がある。おそらく、それにはカンタレアが絡んでいるはずだ。

「理解して頂けたかしら? アタシがモリスを責めている理由が?」
「分かった・・・ 尋問は認めよう。だが、これ以上は評議委員に任せろ。なにしろお前の事だ。更に何かしようとしているだろう?」
「ええ・・・ 針金をモリスの尿道に差し込んでから針金を赤く焼くつもりです。」
「や、止めろ・・・」

その時である。カオス部隊がユーディス、カオルィア両部隊の攻撃を受けて消滅したと連絡が入った。敵部隊の総攻撃を受けたら、もう砦は守れないだろう。
「私も出る! ユーディス部隊を壊滅させる! カーチャ! お前も出陣準備をしろ!」

委員長の部隊が敗れれば、戦争は後がなくなる。カーチャ部隊は臨戦態勢を整えて待機した。実際はラヴェリアの部隊がユーディス部隊を壊滅させたために出番はなかったのであるが、それは後の話である。いくら叩いても潰しきれない帝国軍に脅威を感じずにはいられない。

「さてと・・・ 次の戦闘の前にモリスの拷問を再開するか。ゆっくりしているとラヴェリアがうるさいし。アメリア、彼はどうしている?」
「それが・・・ 逃げました・・・」
「!!!」
「アタシ達が戦闘態勢に入った隙を突かれました。トイレに行きたいと言って、そのまま窓から逃げたみたいです。」
「・・・・・・ 亀の甲より年の功だな・・・」

(2002.11.17)


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