青嵐

カオス・コントン

第2次モンレッド会戦――数ヶ月に及ぶにらみ合いの末に再び戦端が開かれた戦場で、共和国きっての勇将キロール・シャルンホストが帝国の若き将、ユーディス・ロンドとの一騎討ちの末に負傷した。
一時期は帝国軍の一部が村に向けて進んでいるとの報を受け無理矢理出撃しようとしてちょっとした騒ぎになったが、今はそれも静まっている。そしてようやく落ちつきを取り戻した「Legion」隊に、隣接して陣を張っている「青嵐隊」のカオス将軍が「陣中見舞い」と称して突然訪れた。

「しょうぐ〜ん、お加減いかが……って、恐っ!?( ̄□ ̄;ノ)ノ 」

天幕に入るなり思わず一歩後ずさるカオス。それもそうだろう。
天幕の中は一種異様な殺気に満ち満ちており、その中でただキロールの瞳のみがギラギラと輝いていたのだから。
そしてキロールは不機嫌さを隠そうともせず、不意の来訪者に視線を向ける。

「・・・・・何用だ」
「あぁもう、お願いですから味方を威圧せんといてください(^^; そんなんだから、せっかく人気あるのに女のコが逃げてっちゃうんすよー?」
「・・・・・・・・・・」
「分かりました、もう言いません。だから視線だけで死にそうなくらい殺気叩きつけんでください…(−−;」
「・・・それで?」

一つ息を吐いて先を促すキロール。いくら年若く脳天気なところがあるといっても、カオスとて何度も実戦を経験している身である。この時期になんの意味も無く訪ねて来るはずもない。
対するカオスも少し表情を引き締めて答える。

「人の庭を荒らすバカタレはこちらで始末します。将軍は心置きなく帝国軍本隊との戦いに臨んでください。
 ……とまぁ、通り道だった事もありまして、それだけお伝えしとこうかと」

そのカオスの言葉が終わるのを待っていたように、キロールの耳に軍馬の蹄の音が聞こえ出す。

「だいぶ数が減ったようだな・・・やれるのか」

そう問われ、カオスがニヤッと笑う。まだそれほど凄みのある訳ではない……しかし、他を圧倒する何かをたたえた笑みで。

「青嵐隊の身上は――風。
 時に何者をも拒む壁として、時に切り裂く刃となりて、国を守り敵を屠る。
 ま……見ててくださいす」

言うなり、踵を返し天幕の外に駆け出す。待たせておいた乗騎に飛び乗ると「Legion」隊の後背を駈け抜ける「青嵐隊」に追いつき、その先頭に出ながら叫ぶ。

「命令はカンタンだ! 見敵必殺!!
 躾のなってないゴロツキども、見つけ次第ハリ倒せーーー!!!」
「いぇーーっさーーー!!」「OK、大将!」「どけどけぇ! オレらの部隊が一番乗りだぜー!!」

カオスの檄に応え、タイミングもセリフもバラバラな声があちこちから上がる。その足並みも決してきれいに揃っているとは言えない。が……それでも青嵐隊は、確かに一つのまとまりを持って突き進む。
目指すはモンレッド集落にある名も無き村の一つ。
その村で死と破壊を撒き散らさんとする者達の背後に、さらに巨大な「嵐」が迫っていた。

(2002.10.02)


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