誘い(いざない)

カオス・コントン

 はぁ、はぁ……少し乱れてきた息を整えつつ考える。
(オレ、いったい何やってんだろ…)
 エモノを握り締めながら、ふとそんな思いが湧きあがる。が…このまま負ける訳にはいかない。

「てりゃぁっ!」

 しゅぱぱぱっと目の前に相対する強敵――もはや天敵に近いかもしれない――にその手にした縄を走らせる。が……

「まだまだ、ですねぇ…【パラリ】」
「ぬぁ、またかーーー!?」

 アッサリと戒めを解いてくれる相手――エヴェリーナさんの余裕の笑みを前に、思わず頭をかかえる。ホント毎度毎度どーやって抜けてるんだろ…。さすがに疲れてきたらしく抜けるのに時間がかかるようにはなってきたけど。

「さ……もう降参ですか?」

 なんて、考えてたトコにこのセリフ……自分も呼吸を整えながらのくせに、相変わらず余裕な態度を崩さないのが小憎らしい。そしてオレも、縄を構えつつもう何度目か分からない同じ言葉を返す。

「いやっ……まだ、オレはまだまだやります!!」

 にしてもホント、何でこんな事になったんだろ……。


〜〜以下、しばし回想〜〜

 確か始まりはエヴェリーナがマジックの実演を見せてくれるというので家を訪ねた事だった。ちなみにカオスは以前からエヴェリーナ相手に悪さが見つかると「お仕置き」とかアシスタントという名目で危険なマジック(いちおー死なない程度の)に付き合わされてきたのだが、何度も繰り返すうちに慣れてきて本当にアシスタント的な役をする事も出てきていた。そのため最近はヒマを見て、エヴェリーナにアレコレと教えてもらっている………はずなのだが。

「……そして、ここの結び目をこう…て、カオスさん? どこを見ているんです」
「いやぁ…見れば見るほど縄の映える身体……って、げっふんふん! いやいや、えーとなんでしたっけ。その〜〜(^^;」
「【ふぅ】……もういいです」

 エスケープマジックの説明中、いつものように説明より緊縛姿に見とれているカオスに、いつものように嘆息するエヴェリーナ。普段ならそのまま耳を引っ張り上げて説教モードに入るのだが…その後が今日は違っていた。

「はぁ、今度はオレが縛るんすか……今日はもう、エヴェリーナさんの練習て事すかね」
「いいえ、ロープワークの技術を知らないと縄抜けはできないでしょう? 今日はこれ以上教えても無駄みたいですし、それより一度アナタの技術の程を見ておこうかと」
「なるほろ……けどいいんすか? そのまま妖しい世界に突入しちゃうかも…w」
「それはご自由に」
「ハハ、やぱし……………って、なにぬぅ!?煤i ̄□ ̄)くわっ 」
「ただし、あくまでも完全に抜けられないように出来たらですからね。そう簡単には……」
「不意打ちごめーーーんっ!!」

 しゅぱぱーん! 突然エヴェリーナの上半身に縄が走り、その豊かな胸を強調するように縛り上げる。
 確かな手応えに勝利を確信し、思わずガッツポーズのカオス。が……

「甘いですよ、カオスさん……【パラリ】」
「ウソぉっ! てゆーか、今どうやって解きました!?」

 まったくの余裕で縄を抜けてしまったエヴェリーナに信じられないという顔で詰め寄るカオス。ちなみに自分も二秒で縛りを完成させるという人外な事をやらかしているのだが、その辺は気にならないらしい。

「そう簡単にタネ明かししたら面白くないでしょう…? それより、もう終わりですか【フフリ】」
「くぁっ、カチーンと来た! もーーー絶対に逃がしませんからねっ!!」

 宣言しながら胸の前でビシッと水平に縄を構えるカオス。それを余裕の笑みで迎えるエヴェリーナ……かくして二人とも予想だにしなかった長い長い戦いが始まったのだった。

〜〜回想終わり〜〜


(……しかし、あれからもう何回縛ったんだろ…さすがに手がへばってきたぞ)
 少し握力の落ちてきた手で縄を握り直し、心の中だけでぼやく。実際、実用的な捕縛術から見せるための縛りを混ぜた我流のものまでアレコレ試してきたのだがどれもそれ程の効果は上がっていない。まだネタ切れという訳ではないが、本当にこの人を逃がさない縛りなんてあるんだろうか……そんな考えさえ浮かんでくる。んがしかし、ここまで来たらもう意地である。
(そうだ。縛り魔と呼ばれた事もあるこのオレが、こうもサクサク抜けられて大人しく引き下がれようか…いや下がれんっ!)
 ぐぐいっとコブシを固めつつ目をやれば、エヴェリーナの顔には少し赤みがさし息もあがっている。そう、体力差からいけばカオスの方が有利なのは自明の理だ。
(とにかく今は攻めの一手だっ。このまま休ませずに落としちゃるっ!)
 決めたが早いか、再びエヴェリーナの身体に縄を走らせ……が、思った以上に疲れていたのか縄の受け渡しを途中で取り落としてしまう。そして勢い余った右手は思いきりエヴェリーナの胸を掴みあげる。

「っ……ぁ! ふあぁ!?」
「わっ、すんませ…、って…………へ?」

 てっきり叱られると思ったカオスだが、予想もしなかった甘い声に動きが止まってしまう。そ〜っとエヴェリーナの様子を窺うと、こちらも自分で自分の声に驚いているようだ。
(ん〜……顔赤い、息荒い、そして…目元が潤んでる? もしかして…)

「…………ふむ…【もみもみ】」
「…ん、あぅッ………ちょ、カオスさんっ…!?」

 てっきりすぐに手を引くと思っていたカオスに胸を揉みしだかれ、思わず声を漏らしてしまうエヴェリーナ。キッと睨みつけて制止しようとするが、緩急をつけて甘い刺激を送りこまれ抑えようもなくその瞳が震えてしまう。

「まま、そー恐い顔しないで。ちょと確かめてみたいだけすから……ね?」

 さらにカオスが耳元にささやきながら唇を這わせる。触れるか触れないかの微妙なタッチでなぞり上げられ仰け反るエヴェリーナだが、その胸をハンパに絡みついた縄が締めつける。

「はッ…ぁ……くぅぅ………」

 苦しげな中にもどこか甘い響きのある吐息がエヴェリーナの唇からこぼれ出る。それを満足げに見やりながらカオスの手が責めの中心を胸の先端へと移していく。

「どーやら間違いないかなぁ。エヴェリーナさんに「こっち」の素質があるなんて…いやー、嬉しいすねぇ♪」
「…ッ…はぁ………な……何、を…?」
「そぉんなトボけなくても…コレすよ。コレ」
「くんッ……」

 胸にかかった縄を引き、軽く締めつける。二度、三度……縄が締まる度に揺れるエヴェリーナの乳房。その先端で震える、服の上からでも分かるほど固くしこりたった蕾にカオスの指が絡みつく。ヒクンッと仰け反る背中にまさぐるように手を這わせ、空いている胸にもキスを繰り返し性感を引き出していく。

「さってと……だいぶいい感じになってきたし。ついでにコレ、何とかしちゃいますか…」

 そう一人ごちて未だエヴェリーナを拘束している縄に手をかける。再びの責めを覚悟し身を固くするエヴェリーナ……が、その身体から急に息苦しさが消えた。不思議に思い静かに目を開くと、縄は全て解かれカオスの手の中にまとめられている。

「え……? どう…し……」
「そりゃあもちろん、こーするため〜♪【しゅぱぱぱ……ビンッ】」
「くッ……ぁ! あぅッ! ふぁ…ぅ……」

 一度気を抜いたところに再び縄が絡みつき、エヴェリーナが声をあげる。それまでとは違ったキリキリと締め上げられる痛みと息苦しさにしぼり出すように強調された胸がフルフルと揺れる。しばしその様を楽しんでいたカオスだが、やがて再びその手がエヴェリーナの身体をゆっくりと這いまわり始める。

「ん〜、思った通り。ステキですよ、エヴェリーナさん…」
「…ッ……はぁ…あッ、あぅッ、はぁ…ぅ……」

 縄で胸が圧迫されているために浅い呼吸しか出来ず、ぜいぜいと喘ぐようにして空気を求めるエヴェリーナ。そこを絶え間なくカオスの責めが襲い、半開きになった唇から抑えようもなく恥ずかしい声が漏れてしまう。そしてエヴェリーナが十分に感じているのを確認すると、それまで胸の周りに留まっていたカオスの手がするすると腹部を伝い下りさらに下の方へと伸びてゆく。

「…ッ! だ、め……これ以上は、もうッ…」

 カオスの目的に気付き身をよじって抗議するエヴェリーナ。縄の絡みついた不自由な状態のまま、動ける限りに肩を揺すり身体をひねって逃れようとする。が……結局カオスの手をさえぎる事はできない。

「はぅッ……ぁ、ふあぁッ!」

 布地の上から敏感なスリットをこすり上げられ、ぎゅうっと足を閉じる。それでもカオスの手を止める事は出来ず、すでに十分に濡れそぼっている秘裂を思うさま弄ばれる。

「んふふ、まさかこんなに喜んでもらえるなんて……嬉しいすねぇ」
「ち、が……んんッ! そ……そんな、シュミは…」
「や、別に縄で感じたとは言ってないんすけど〜」
「………ッ!」

 カオスの何気ないツッコミに、上気していたエヴェリーナの頬がさらに真っ赤に染まる。その長い睫毛が恥じらいに震え視線から逃れるように顔を背けてしまうが、その姿がさらにカオスを興奮させる。ショーツを横にズラし十分に準備の整っている秘所をさらけ出させると一気に指を突き入れる。

「ふあぁっ!? はッ…あぅ! や、はッ……こん、なッ…まま……ぁ、あァ……」

 最も敏感な部分を激しく責め立てられエヴェリーナの全身が強張りヒクヒクと震える。弱々しくかぶりを振って少しでも性の快感から逃れようとするが、その中心をぐちゅぐちゅと音を立ててかき回されると、もうはしたない声を抑える事ができない。そしてそれでも必死に堪えようとする耳元に再びカオスが唇を寄せる。

「まぁ…そんなこと言わずに。ゆっくりと、教えてあげますから……ね?」
「くッ……ん! い、アッ……そ、そんな…こ……ふぅんッ…」
「ま、本格的にこの味を覚えてもらうのはまた今度……まずは一歩、踏み出してみましょうか」

 言うなり、秘所を弄っていた指が大きく……別々の動きで、その膣内をかき回す。最も敏感な突起を摘みあげながら、キリ…と縄を絞って上半身にも責めが加えられ、エヴェリーナを追いつめていく。

「ひぅっ!? あぁッ…あッ………はッ…ぁ! あああああああああっ!!」

 弓なりに仰け反った身体がビクンッと一際大きく跳ね、しなやかな脚が限界まで突っ張り……くたり、と力無く投げ出される。今までにない深い快感の余韻に震えながら、エヴェリーナの意識は白い闇の中へと落ちていった…。



「……ん…」
「あ…エヴェリーナさん、起きました?」

 次にエヴェリーナが目を覚ましたのはカオスの腕の中だった。すでに縄は解かれ、さっきは息も吐かせぬほどに激しく責め立てた手も今は優しくその髪を撫でている。
 ゆっくりと撫でられながら寄り添ったまま静かな時間が過ぎ……やがて、エヴェリーナの方から伏し目がちに口を開く。

「………あの、カオスさん…さっきの事なんですけど……」
「ん、何です…?(^^)」
「覚悟はいいですね?【キラリ】」
「…………え゛っ…」

 しゅばばっ! 突然カオスの周りに縄がひらめき、がんじがらめに縛り上げる。そしてまったく展開に付いて行けず床に転がるカオスを腕組みで見下ろすエヴェリーナ。

「あ、あの〜、いったい……(^^;」
「別に、いつもの事ですよ。悪さをすれば『お仕置き』が待っている…当然でしょう?」
「いやっ、えと…あれは………」
「完全に抜けられなくできたら、という約束でしたよね。 さ……始めましょうか」


 言い訳に窮するカオスをテキパキ磔台に縛りつけると、羽ぼうきを手にしたエヴェリーナの瞳が妖しく煌く。

「さっきは楽しませてもらいましたから……たっぷり、お礼をしないと…ね【ニヤソ】」
「あ〜、いや、そのお気持ちだけでもう十分……って、わっひゃっひゃっ! ひ〜〜、くすっ…くすぐった……やめて〜〜〜!!(^▽^;;; 」

 ――その後「磔くすぐりヂゴク3時間耐久の刑」により笑い死に寸前まで追い込まれるカオスだが……実は案外バランスの取れているかもしれない二人であった。

(2002.10.19)


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