宿敵
カオス・コントン
共和国領モンレッド郊外、首都も程近い街道沿いに2つの軍が対峙していた。
一つは帝国軍第19部隊『ラピス・ローズ』、もう一つは共和国軍第4部隊『青嵐隊』である。
「だいぶ、数が減ったな…」
自陣を振りかえり帝国軍第19部隊の将、ユーディス・ロンドが呟く。しかし彼の心は目の前の陣営には無かった。
「ミーシャ……今度こそ…」
そう、今度こそ必ず助け出す。
その思いを胸に、キッと眼前の共和国第4部隊へと視線を移す。ここに至る前に打ち破った共和国軍第7部隊の中に愛する妹の姿は無かった。となれば考えられるのは一つ、ミーシャは目の前の第4部隊に捕われているに違いない。
(待ってろ…すぐ、助けてやるからなっ)
決意も新たに突撃の合図を送ろうと腕をふり上げ……そこで動きを止める。
ちょうどその時、目の前の敵陣から一つの人影が歩み出てきたのだ。
(一騎討ちでもしようっていうのか…?)
まっすぐに歩み寄ってくる人影を不審そうに見ていたユーディスだが、その人影が抱えているものを確認した途端、馬に鞭を入れる。
「なっ…将軍、どうされたんですか!」
「どけぇ! ミーシャが…あそこに、ミーシャがいるんだっ!」
「罠かもしれません。もう少し様子を見て……」
「罠があったら踏みツブせばいい! とにかくオレは行く!!」
もはや側近の声など聞こえていない。周りの制止を振り切り、アッという間に人影の…いや、愛する妹のもとへと駆ける。
「ミーシャっ、しっかりしろ…ミーシャ!」
男からほとんど奪い取るように妹を受け取り、必死に呼びかける。すると、やがてうっすらとミーシャの瞳が開かれた。
「…ぅ………にい、様…?」
「そう、オレだよ。もう……もう、大丈夫だからなっ」
ぎゅうっと抱き締め優しく語りかけると、力無いながらもミーシャも小さく笑みを返す。しかしそれが限界だったのかすぐに再びの眠りについてしまった。 そして兄妹の再会を見届けた共和国軍の男が一礼して立ち去ろうとした時、それを遅れて追いついてきた側近たちに妹を託したユーディスが呼びとめた。
「待て! お前、何者だ? これだけの敵が来ても全く慌てるでなし…もしかして」
「………共和国軍『青嵐隊』将軍代理、カオス・コントン」
かぁっ! その名を聞いた途端に全身の血が沸騰する。
そう思った瞬間には、すでに目の前の男を殴りつけていた。
「おまえっ……お前が、ミーシャを…っ!」
湧き上がる怒りに身をまかせ、勢いもそのままに殴りかかり……いきなり、ガクリと視界が揺れる。
「っ……!?」
次の瞬間、目の前には地面があった。そして手には草と土の感触…そこで初めて、自分が前のめりに崩れたのだと気付く。一応ミーシャの無事を確認した事で、安堵感と共にそれまでの疲労が一気に噴き出したのだ。
「ありゃ…またずいぶんと無理したみたいっすねぇ」
そんな己の体の変化に戸惑うユーディスに、およそノンビリとさえしている声がかけられる。
キッと視線を上げると、殴られた頬をさすりながら見下ろすカオスと目が合った。
「うるさいっ! こんなも……」
「おっとと…ストップ」
尚も向かってこようとするユーディスを手をかざして制止し、ひたと見据えてカオスが言葉を続ける。
「これ以上やるってんなら、こっちも黙ってられないすけど……いいんすか? ここが死に場所で」
口調もトーンも同じ――しかし先程とは比べものにならない重さで、一言一言がユーディスの心臓にのしかかってくる。これは脅しやハッタリではない、ただ事実を突き付けているだけなのだと気付かされる。
そしてそれが、ユーディスに冷静な思考を取り戻す機会を与えた。
(こいつは…許せないっ、許せるはずがない! けど、ここで犬死にする訳にも…っ)
ギリリと音が立つ程に、どうにもならない悔しさに歯噛みするユーディス。無理矢理に押さえこまれただけにより熱く、より激しく、その瞳が怒りに燃え上がる。
そしてそれを見てとったカオスの口元に、ニイィ…と笑みが浮かぶ。
「い〜ぃ目です……さすが、キロール将軍と互角に渡り合ったってだけはありますねぇ。 戦場で会うのが楽しみですよ」
そのまましばし無言の対峙が続き……やがてほぼ同時に視線を切り、自陣へと戻ってゆく。
帝国と共和国、それぞれの若き勇将が激突する寸前の邂逅の時であった。
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PL:久しぶりの掲示板投稿〜w
しかしたまにはカッコいいのを、と思ったのですが……
全然カッコ良くならねぇ!!(吐血)
お前は大人しくギャグとエロに生きてろという神の啓示なのか……グフッ。
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