淫虐

カオス・コントン

「む…うぅ〜ん……」

不意に寝苦しさに襲われて目を覚ます。
(はて…まだ暗いけど、何時くらいだろ)
寝ぼけ眼をこすりつつ身を起こし…そこで自分の身に起きている異常に気付いた。

「………手が動かん…」

 そう、顔の方へ持ち上げようとした右手は、しかし変わらずベッドの上にあった。 というか両手両足ともガッチリ固定されていて、起き上がろうとしてもわずかに身じろぎ出来ただけである。
 調べてみるとどうやら大の字の格好でベッドに縛り付けられているようだ。
(えーっと、ちょっと待てよ…。確か今日まで国境沿いを視察して回ってて、久しぶりに家に帰ったんだよな。 んで「疲れたからまずは一眠り」ってベッドに直行して……)
 そして、そこから先の記憶がない。まぁバッチリ爆睡していたのだろう。
(とはいえ、オレに気付かれずに縛り上げられる人間なんてそう居ないよな。
てゆーかこの状況でここが自分の家って時点で犯人は一人しかいないけど…)
 ようやくシャッキリしてきた頭の中でぼやいていると、その「犯人」が声をかけてきた。

「あら、お目覚めですか?」

 どこか楽しそうな、声――両の手足を縛られている中、なんとか動かせる首をひねり、その「犯人」の声のする方へ向き直る。

「お目覚めですか、じゃないすよ。 寝苦しくてたまんないんすから、早く解い…て、ふわぁ……」

 向き直って抗議しかけたところで思わず感嘆の声がもれる。そこには予想通り、彼の妻であるエヴェリーナ・ミュンスターの姿があった。 ただ、その格好は――。
(す、透けてる。 レースのスケスケ……た、たまらんッ!)
 そう、今のエヴェリーナは身体の線がそのまま透けて見えるような薄手のネグリジェ一枚という格好だった。大事な部分はあまりよく見えない作りになっているが、それがまた劣情を煽り立てる。

「あらあら……ウフフ、相変わらず素直ですね〜♪」

 正直に反応するカオスのモノに目を細めるエヴェリーナ。そのままゆっくりとくすぐるように指を這わせてゆく。

「ぅッ……え、エヴェリーナさん? どうしたんすか、今日は(^^; 」

 微妙なタッチで這い回り愛撫してくる指先に身震いするカオス。その耳元へエヴェリーナが囁きかける。

「何もありませんよ。もう半年近くも、なんにも……ね」
「う゛…いやその、考えなかった訳じゃないんすよ。 ただ疲れてたから、先にちょっと一休……むっ!? んん……」

 弁明しようとしたところをキスでさえぎられる。そのまま口内で深く結ばれながら緩急をつけて愛撫され続ける。

「ウフフ…いいんですよ。お疲れなんでしょう? 今日は私が、ゆっくり可愛がってあげますから…」

 柔らかな微笑みを向けながら、手をうごめかせ快感を送り続けるエヴェリーナ。その動きがさらにカオスを高ぶらせてゆく。

「ちょ、待ッ…たまってるんすから、そんなにしたら……」

 ぎゅぅっと眉根を寄せ、早くもこみ上げてくる射精感に耐えるカオス。その様子にエヴェリーナも頬に手を当て少しだけ考えこむ。

「そうですねぇ…………うん、それじゃあコレで…」

 言いながら新しく細い縄を取り出すエヴェリーナ。それに気付いたカオスの顔が明らかにひきつる。

「あの、エヴェリーナさん? まさかそれで………ぅあぐっ!」
「ウフフフフ……これで心配いりませんね。 カオスさ〜ん、いっぱい感じさせてあげますからね〜♪」

 ぎりり、とモノを締め付けられる痛みに低い呻き声をもらすカオス。みるみる冷たい汗のふき出てくる頬にエヴェリーナの柔らかい唇が触れ、ゆっくりと舐め上げる。

「んフ、はぁぁ……カオスさぁん…」

 少しクセのある髪を撫で梳きながら苦痛と快楽にゆがむ顔を愛おしげに見つめ、そしてまたキスの雨を降らせてゆく。その間も空いた手は休む事なく猛り立った勃起を締めつけ、しごき上げる。 親指と中指でカリ首を締めつけ、人差し指で鈴口を責めてやるとあっという間に透明な汁があふれ出した。

「あらあら……かなりキツく締めたのに、もうこんなにして。 もうイキたくてたまらない、というところかしら」

 鈴口をこじ開けるようにグチグチといじってやると、ひとひらの贅肉さえ残さず鍛えあげられた引き締まった腰が見事なアーチを描く。 しかし最後の抵抗か、それでも低く呻くだけで決して声をもらそうとはしない。

「フフッ、まだ楽しませてくれるんですか? それじゃあ私も、お返しをしないと……ね」

 きつく閉じられた瞼に優しく口付けると、形のよい柔らかな唇がゆっくりとカオスの身体を伝い下りてゆく。 たくましい中にも少年を思わせる線の細さを残した身体を味わいながら、その中心――茂みの中から天を突くモノへと行き着く。 と、目の前のモノがピクッ…と震えた。それは快楽から来るものではない、緊張による震え――ここからが本番だという事を知るがゆえのものだ。
 その様に目を細めながら、ゆっくりと赤黒く充血しきったモノへ唇を寄せる。しかしすぐには口唇愛撫を始めず、くわえかけては熱い吐息だけを残して離れ、また別の角度から触れるか触れないかの微妙なタッチで唇を触れさせる。 その微妙な刺激が期待と緊張を煽り、ますますカオスのモノが熱く大きく張り詰めていく。
 そして何度目かの熱く湿った吐息がカオスのモノに触れ――次の瞬間、亀頭全体がさらに熱くヌルリとした感触に包まれた。

「ッ……くあぁっ!」

 びくぅっ! 鍛えあげられた身体がしなやかにのけ反り、その口から初めてハッキリと快楽に震える声が漏れる。しかしそれは始まりにすぎない。 柔らかな唇が先端といわず幹といわず吸い付き、小さな舌がチロチロとくすぐるように這い回る。まるで何が行われているのか教えようとするかのように、大きくいやらしい水音を響かせながら―。

「ぅっ…あ! く、はぁッ……うぐ、ぐぅぅ…っ」

 ギシギシと縄を、結わえ付けられているベッドをきしませながら、鍛えこまれた身体が何度もビクビクと跳ね上がる。そしてその中心で最も激しく躍動するモノを頬張り唇をすぼめて吸い立てるエヴェリーナの瞳にも、いつしか情念の炎が灯り始めた。

「ん……ふあぁ、こんなに熱く…震えて……」

 チロリと裏筋を舐め上げてやるとエヴェリーナの身体を跳ね飛ばすような勢いで大きく仰け反る。
 少年の面影を残す細身ながら、十二分に鍛えられある種の牡臭をも漂わせているアンバランスな肉体――それを自分の舌先でいいように躍らせ弄ぶ。 激しくわななき、時に彼女を跳ね飛ばすかのように暴れる「ソレ」は、倒錯した愛おしさを呼び起こし、征服感と嗜虐心を同時に満たしてくれる最高の「獲物」だった。

「はむ、ぅん……んフ…ぁん……」

 とろけるような甘い声を漏らし、仰け反るカオスの腰を抱くようにしてさらに濃厚な口唇愛撫を施す。ほっそりした白い指を蠢かせて若く引き締まった尻肉を揉み立てながら顔を振り、熱い唾液をたっぷりと溜めた口腔内で牡のモノを扱きたてて追い詰めてゆく。 が、そこで予想外の事が起きた。

「ぁむ、ん……んんッ!? ぷぁっ!」

 それまで一方的に責め立てていたエヴェリーナが慌てて顔を離す。 その顔へ、何度も爆発寸前まで上りつめながらも決してイケないままだったカオスのモノが勢いよく絶頂の証を迸らせた。

「あ、ァ………ふぁぁぁ……」

 突然に口腔を満たした牡臭と頬を打つ熱い白濁がエヴェリーナの「女」を貫き、脳裏を白く焼き焦がす。
 コクン……青臭い精を飲み干しながら陶然とした表情で見下ろした瞳は、しかし自身を汚した牡槍が固く張り詰めたままなのを認めた瞬間、再び嗜虐的な光を宿していた。

「くす………フフフ、そうですよね。 あれで終わりの訳がありませんよねぇ…」

 エヴェリーナの白く美しい指がカオスの中心へと絡みつき、その下にある袋までもやわやわと揉みあげる。 その指先がカオスのモノを戒める縄がわずかに緩んでいるのを確かめた時、エヴェリーナの瞳が更なる期待と興奮に妖しくきらめいた。

「でも、ずいぶん頑張りましたしね…そろそろフィニッシュにしましょうか」

 静かに告げながら、サオを握るエヴェリーナの手が強く締まる。 と、ゴシュッ! と一気に扱き上げた。

「うッ……あ゛ぁっ!!」

 ビグンッとカオスの身体が弓なりに仰け反り、その牡器官からわずかだけ絶頂の証が迸る。 しかしエヴェリーナの手はそのまま休む事なく扱き続け、何度も苦痛と快楽の交錯する絶頂へと追い上げてはカオスの精を搾り出す。

「ぐぅっ…! 止、め……あぅッ! エヴェ……さ……あぐ、あぁぁッ!!」

 ビゥッ! ビュルルッ!! 鈴口を切り裂くような勢いで牡の絶頂液が飛び散り、カオス自身の身体を、そしてエヴェリーナの手や胸までも白く汚してゆく。 やがて溜まっていた精を出し尽くしヒクヒクと空打ちの脈動を繰り返すだけになったところでエヴェリーナが指をほどき、極限まで強張っていたカオスの身体はゆっくりとベッドへ沈み込んだ。

「はあぁ………カオスさん、とっても素敵でしたよ…ウフフフフ」

 興奮に濡れた吐息を漏らし、大きく上下する胸板へ頬をすり寄せるエヴェリーナ。 触れ合う部分から伝わる熱さが、絶頂の余韻から来る震えがさらなる興奮を呼び、誰に触れられてもいないのにその花弁は熱く湿って甘美な蜜をたたえ始めている。 と、カオスの乱れぶりを楽しんでいたエヴェリーナの視界が突然反転した。

「きゃあっ!? な、ぁ……痛ッ、痛い…」

 ちゅぐっ……水音を響かせ、カオスの指が秘められた花園へもぐり込む。そこへ来てようやくエヴェリーナも身体を入れ替えられ押さえこまれた事を悟っていた。

「あッ、痛ぅ……カオス…さん……やめ……ぅッ…」

 乱暴にかき回される感覚に身をよじるエヴェリーナだが力の差は圧倒的である。何とか逃れようとしてもわずかに悶える程度の動きしか出来ず、それはよりカオスの興奮を煽り楽しませるだけだった。

「どうして? ここまで燃え立たせてくれたのはエヴェリーナさんじゃないですか……そ・れ・に、こっちはもう準備OKみたいですよ」

 獣性にギラギラと輝く瞳を向けながらカオスが己のモノをあてがう。 牡の欲望を剥き出しにして迫るその姿は、エヴェリーナの心に巨大な野犬がのしかかってきているような錯覚さえ覚えさせる。
(ダメ…止めないと。 こんな……このまま、してしまったら…)
 そう、このまま抱かれてしまえばカオスの欲望が尽き果てるまで蹂躙され、征服され尽くしてしまうだろう。それを避けるなら今、止めるしかない。

「ダメですよ、まだこれからなんですから……サビシイ思いをさせた分、たぁ〜〜っぷり可愛がってあげますから…ね」

 エヴェリーナの心を見透かしたように優しい声で告げながらカオスが腰を進める。ゆっくりと花園を割り開き押し入ってくる熱い欲望がエヴェリーナの細身を震わせ、その心を甘美な絶望が覆ってゆく。
(ハァ……あぁッ、ダメ…もう……)
 もう、逃れられない――その思いがエヴェリーナの自由を奪い、抵抗する力が抜けていく。 そしてそんなエヴェリーナの変化を敏感に感じ取ったカオスが、完全に一匹の牡と化して襲いかかった。

「ふ、くぅぅッ……はァ…あン、あぁ……ン」

 ただ己の快楽のままに突き上げ、かき回し、むしゃぶりつく。ほとんどテクニックもない、まさにケダモノ同然の責め……しかしエヴェリーナの成熟しきった身体はその暴虐を受け止め、いつしか新たな悦びをも見出し始めていた。

「あッ、ンぅ……カオス…さん……あぁ、ダメっ…こんな……こんな、ぁ……あはああぁぅっ!!」

 ヒクヒクとエヴェリーナの陰唇が牡の肉槍を貪り食うかのように痙攣し、腰の奥に重く甘く性の快感を溜めていく。 しかし野生全開になってしまったカオスが一度の行為で満足するハズもない。 深い絶頂の悦びに虚ろな視線をさまよわせるエヴェリーナへ再び覆い被さり、すぐにまた激しく性の快楽を貪り始めた。

「ふふふ、まだまだ…ですよ。 今夜は、寝かせませんからね…」

(2003.04.15 / 2003.04.16)


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