予期
ファミリア=スティーヌ
副官「将軍、例の者達が動き始めました」
ファミリア「そう…こちらもそろそろ気を付けなければなりませんね」
モンレッドからガイ・アヴェリに続く道中、馬上でファミリアと副官は
互いの顔も見ず、会話だけを続けていた。
副官「しかし、見事に将軍の予想通りに動きましたな」
ファミリア「セルレディカと謁見をした日、確信しました」
副官「やはり、ラグライナ皇帝は…」
ファミリア「間違いありません。もう10年以上前になるでしょうか。
私がまだシスターとして大陸各地を回っていた頃、何度も見た症状です」
寒さの強くなる季節の中、漆黒のコートに身を包んだファミリアと副官は、
眉1つ動かさずに、ただ軍を率いて進軍を続けていた。
副官「一旦、帝都に戻りますか?」
ファミリア「彼女達が動き出した以上、目に見える不信な行動は控えましょう。
今はまだ、表沙汰にするには、帝国に入り込んだ意味がなくなります」
副官「そうですな…ところで、逸材は見つかりましたか」
ファミリア「帝国は、セルレディカと言う強い光の一枚岩によって支えられた国。
皇帝亡き後、それを継げる者は何人か見つけましたが
その者を支えていける者は、いまだ見つかってはいません…しかし」
副官「彼女ですな?」
ファミリア「えぇ、ただ、彼女が継いだとしても、
彼女を支えていけるだけの逸材が見つかるかどうか…」
副官「しかし見つけなければなりません。
見つからなければ、再び帝国を中心とした戦乱が世を巻き込みます」
ファミリアは何も答えず、目の前に広がるクァル・アヴェリ樹海を見つめながら、
ただ軍を進めていた。
ファミリア「彼女次期女帝とし、反派閥を押さえ込む策は整いました。
あとは彼女を支えていける逸材を見つけるだけ…私では器不足なのです」
一旦歩みを止め、髪を掻き上げるとファミリアを先頭に軍は
クァル・アヴェリ樹海の中へと突入していった。
ファミリア「決して帝国の為に戦おうとは思いませんが、こちらにも事情があります。
気は進みませんが…行きますよガルデス共和国…」
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