戦前夜

tamakuzi

リュッカの港の北にある森で風華の部隊は駐屯していた。
部下A「風華様は?」
部下B「いや、居ないが...戦争の前にどちらに行かれたのだ?」

―クレア第13部隊本陣より北に100m先の森の中―
風華「・・・・・」
風華の前にはいつも腰に備え付けている護身刀「白菊」と大木に立てかけ祈りをささげている。
風華が出陣の前に何時もしている儀式である。
兵士達の無事帰還できるように、そして作戦の成功を祈るものであった。
風華は立ち上がり刀を再び腰に備え付けた。時間にしておよそ10分間のお祈りというところだろうか。
そして本陣に立ち戻ることにした。隊長の居ない本陣では大慌てであった。
それこそ今敵軍がわずか500騎でも現れたものなら全滅するであろうほどの混乱振りである。
しかしその中で唯一落ち着いていたのは副官のみである。
風華が出陣前にふらりと何所かに出かけることを知っていた。
そんなさなか風華が戻ってきたことにより陣の内部はやっと落ち好きを取り戻した。
副官「何所に行かれたかはお聞きいたしません。しかしできるものなら一言おっしゃっていただきたく存じ上げます。」
副官が厳しい顔つきで言い放った。無理もない、あの間に敵の夜襲でもあるなら全滅である。
風華「はいですの...」
風華はしょんぼりしながらうつむきかげんで答える。
こう見ているとどちらが上官なのかわからなくなってしまいそうな錯覚にとらわれてしまう。
やっと軍議に入ることができたのは風華が陣に戻ってきて30分は経過したころであった。
副官「リュッカに駐屯中の帝国軍およそ千騎、さらにリュッカの北方に謎の部隊がおよそ九百騎確認されています。」
書類を読む副官の横で風華は饅頭をつまみにお茶をすすりながらニコニコしその内容を聞いていた。
副官の書類を読む手がゆれる。おそらく怒りの現れであろう。しかしその怒りが一気にさめる。
風華「北は...そのままにしておきますですぅ。」
風華が口を開いた。副官である彼女も風華の作戦や兵法はよくは知らない。
ゆえに興味があったと言っても良いだろう。
風華「陣をでたら兵を3隊に分けますの。1隊目(A)を1千騎、2隊目(B)を700騎、3隊目(C)を300騎。
まずAを前線に出しますの。森の中から出るので敵さんには1千騎しか居ないときずくまでに少し時間がかかりますの。
それに敵さんが気づいたときにはBが敵の後方を攻撃しますです。」
副官「しかしCはどうするのですか? やはり退路を断つため移動させますか?」
風華「今までの作戦なら敵さんも気づいてると思うですぅ。そこでぇ...」
風華が机の上にある地図と駒を動かしながら作戦を説明する。
風華「側面を攻撃するですぅ〜。Aはその間も防戦してもらいたいです。」
まさにこのリュッカにある森を利用した作戦である。ゲリラ作戦で敵を撃破しようというのである。
風華「あと...降参した兵士さん達は助けてあげてくださいです。」
副官は微笑した。風華が戦争を好んでいないと聞いていたからである。
だから作戦もなるべき死者の出ないような作戦を立てると言う事も聞いていた。
風華の頼みに誰も意義を唱えなかった。風華自身もホッとした様子でニッコリしながら軍議をしめた。
風華が立ち上がり外に出るのを見て副官もそれについていく。
風華が夜空を見ながらため息をついていた。
副官「甘いですね。もっと冷酷になれば幾らでも合理的な策も有るでしょうに...」
風華「敵の兵士さんにも家族が居るですぅ。だからできるだけ殺したくないですぅ。
どんなに甘いといわれても...。」
副官「なら...お辞めになったほうが良いですよ。」
風華「でも先輩のようになりたい、そう思ってこの道を選んだですの。だから...」
風華の目にうっすらと涙が浮かんでいた。副官もそれに気づいたのであろう。風華を見ず、空を見上げることにした。
風華「でもお仲間の皆さんを1人でも守れるなら...」
彼女の気持ちに察しているのであろう副官はハンカチを渡し
副官「今日は冷えますね、風をひいては作戦に響きますよ。今日はもう寝ましょう。」
その言葉を聞くと風華もコクリと頷き天幕に入っていた。明日のために.....

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久しぶりのSSなので中々うまく書けなかったですがこれからも書いて行きたいです。


(2002.10.08)


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