<!DOCTYPE HTML PUBLIC "-//W3C//DTD HTML 4.01 Transitional//EN"> リュッカ激戦区戦線





リュッカ激戦区戦線

tamakuzi

「覇亜亜亜亜!!!」
(びゅ!)
(ぐちゃ!)
風華の近くで鈍い音がする。
また人が死んだ。風華の足元には肉の絨毯、そうその様な感じであった。
さらにツ〜ンとしたような甘酸っぱい香りがする。死肉のにおいだ。
「はぁはぁはぁはぁはぁ」
風華は周りを見渡す。味方は何人いるかと見渡したのだが人を見つけることができなかった。
もう何人切ったのだろう、もう疲れた、首都は麻耶様は無事なのだろうか、仲間は?
その様なことしか今の風華には考えられなかった。
「く、また敵か...」
風華の手にはいつもの薙刀が無かった。戦の中で何所かに弾き飛んだのろう。
かわりに風華の手には剣が握られていた。帝国の剣なので少し重く感じたが
今はその様な感じすらなかった。
「風華様...」
風華の周りには37騎ほどの兵士しか残ってなかった。風華にとって誤算であった。
帝国がこれほどの兵を送ってきたことが。今の今まになってリュッカに兵力を送って来ようとは。
「ふふ、何かで読んだ軍記物語のようですね。」
「?????」
兵士達にはさっぱり解らなかった。無理もない、兵士達は軍記物語など読んだことが無いのだ。
「あと...どの位持ちそうですの?」
風華はいきなり話題を変え始めた。しかしその質問は愚問であった。37騎に対して敵は1000騎である。
どの位? 1時間? それとも...半時間?兵士達にはその様なことは解らない。1分後には
この絨毯の1部になっているのかも知れないのである。しかし兵士達は笑っていた。
兵士達はクレアの為、そして風華の為に死ぬ覚悟はできていた。
風華はそんな彼等を、死んでいった彼らのことを考えると自分の不甲斐なさに打ち負かされ
涙が出そうになった、が戦場でそんな姿を彼らには見せられないのであろう
風華は涙が出るのをこらえていた。
「風華様、気になさらないでください。」
兵士の1人はそう言うと風華を励ました。
「(兵士達を励まさなくてはいけない指揮官が兵士達に励まされるなんて...)」
そうこうしている内に敵部隊が突撃をかけてきた。
兵士達は敵を風華に近づけまいと剣を振るった。
激戦の中で残った兵士達は近づいてくる敵兵より強かった。
「何をしてるんだ!その程度の部隊さっさと蹴散らせ!」
将軍には見えない、ただの指揮官なのだろうかその様に言うと風華に第2の突撃した。
風華は馬上から弓で敵を射抜いていった。風華の弓は威力こそ無いが恐るべき命中力で
敵の心の臓を射抜いていった。
「風華様!!!」
風華に1本の矢が襲うが弓でそれを弾き返した。しかしどんなに強い武将にも体力の限界がある。
風華は陣頭で長期に戦うことに慣れていなかった。風華の矢の命中率も下がってきていた。
風華は仕方なく近くに刺さっていた槍を持ち近づく敵をなぎ払った。しかし命中率が下がっている
今の風華には槍で敵の急所を刺すことすらままならなかった。
「(く、もう無理なの? 美雪さんの援軍がくる前に.....)」
風華はふと見覚えのある槍をみつけた。雪桜である。風華はそれを取り敵をなぎ払った。
敵も流石に引きが入ったのか攻撃の手が緩み始めた。
「(敵の大将がくる前に...)」
風華はそう思った。崩れた部隊でも指揮官がくると瞬く間に立て直る、そのことを知っていたのである。
風華は危険だが退路を開き引くことにした。先ほどよりも可能性が高くなっていたからである。
風華は先陣を切って退路を開き始めた。
必死にクレア兵に退路が開き始めた。しかしその前にはおよそ700騎もあろう部隊がいた。
風華は軽く笑った。まさかここに兵が伏していたとは思わなかった。
しかし近づく部隊から歓声が湧きをこった。クレアの部隊である。
その先頭にいたカイザーは一気に帝国軍になだれこんだ。
流石の帝国軍も一旦引くことにしたのだろうか兵を引いていった。
風華は追撃をしようとするカイザーを止め本陣に引くことにした。

―本陣―

風華は本陣に帰ると疲れた体を引きづり泉に向かった。体を清める為にである。
風華は泉に入りながら今回のことを考え出した。部隊も400騎にまでなってしまった。
服を着、一旦陣に戻った。風華が陣地に戻ったときはもう辺りがくらっかた。
7時と言ったところであろうか。軍議を開くもこう体が疲れていたのでは策も思いつくはずも無い。
風華は兵士達に米を均等に分配し始めた。そして酒を出し豪華な食事を兵士達に振舞った。
この意味を兵士達は感ずいていた。討ち死にである。
しかし風華の口から出たのは思いがけないものであった。
「ここを去りたい者は今すぐ、また今すぐは出にくい人は夜にでも去って頂いても構いませんの。
編成時に配布したのと先ほど配布した米があれば3日は大丈夫ですの。」
風華の言葉に驚いた兵士達は歓声を上げ風華についていくことを明らかにした。
しかし風華はニッコリしながら悲しさがこみ上げるような複雑な思いが襲った。
風華は士気を高める為にこの様なことをしたのではない。しかし結果がそのなってしまったのだ。
その夜、風華は次の戦いの策を考えつつ深い眠りについた。

―END―

(2002.10.19)


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