<!DOCTYPE HTML PUBLIC "-//W3C//DTD HTML 4.01 Transitional//EN"> 麻耶の失踪





麻耶の失踪

tamakuzi

 天風隊は鬼哭の里より退却を命じられ聖都クレアより数キロの地点にまできていた。
風華「軍は何を考えているのでしょうか?全く分からないですの。」
 風華は独り言を言いながらクレアに向かった。
 風華は聖都に戻ったことを麻耶に伝えるべく広間へとおもむいた。
風華「第12部隊聖クレア天風隊隊長風華ただいま戻りました。...あれ、やよい...さま?」
 しかし広間には弥生の姿だけしかなかった。
風華「弥生様、麻耶様はどちらへ」
 弥生も少し返答に困っているが風華の質問に答えることにした。
弥生「分かりません。私も麻耶様のいらっしゃる場所は分からないのです。神官様も何も言ってはくれませんし...ただ...」
風華「ただ?」
弥生「ただ、私に後を継げと...」
 風華は一瞬耳を疑った、それは麻耶は神威巫女で無くなったという事である。
 風華は少しよろけるが体制を立て直し弥生に鬼哭退却の事を伝え広間を後にした。
 広間を出た風華は辛うじて壁に手をついて歩く事は出来たが自室に行けるかどうか分からないぐらいフラフラしていた。
 風華は前を見ていなかったのかコマ将軍にぶつかってしまった。
コマ「おや?風華さん大丈夫ですか?」
 そう言うとコマ将軍は風華に手を貸した。
コマ「(また『いえ、結構ですの。自分で立てますの』とか言われるんだろな〜)」
 しかし風華の返答はコマ将軍の予想していたものとは全く違っていた。
風華「す、すみませんですの...」
 そう言うと風華はコマ将軍の手お借り辛うじて立つ事が出来た。
コマ「だ、大丈夫ですか???(す、少し暗い...)」
 流石のコマ将軍もこの風華の態度には驚きを隠せなかった。
 風華は軽く会釈をし再び歩き出した。
 コマ将軍もその後お見ていた。
コマ「(うぉ! またこけた。風華さんってあんなにトロイ娘だったかな〜?)」
 そんな事を思いながらコマ将軍は自室に戻っていった。
 部屋についた風華は倒れるように布団の上に寝転んだ。
風華「グズッ! 麻耶様、何処へ行かれたのですか? 私は如何すればいいのでしょうか? もう、もう私戦えないです。」
 風華が布団に顔を埋めていた時、部屋にカイザーが入ってきた。
カイザー「月風さんが幽閉されたらしいな。」
風華「幽閉? 行方不明になったのでは? カイザーその事を誰から???」
 確かに弥生も麻耶の事は全く知らなかった。しかしカイザーは麻耶の事を『居なくなった』ではなく『幽閉された』といったのだ。
カイザー「い、いや、単なる噂だよ。う・わ・さ。俺かて詳しい事分からんよ密偵でも忍でもないし...」
 確かに忍びでもないカイザーにこれ以上の情報を求めるのは尺かもしれない、そう風華は思った。
カイザー「気落ちしんときいや。まだ麻耶さん死んだんと決まったわけちがうんやし。」
風華「そ、そうですね。カイザー君、少し調べておいてくれますの...」
カイザー「ああ、わかった。」
 カイザーは風華が今にも自決しそうな気がしたがまずは麻耶の行方を調べる事に専念した。麻耶の行方がわかれば風華も元気になるであろうと思ったからである。
 一方風華はただ泣く事しか出来なかった。何かしなくてはと思うのだが体が動かないのである。
風華「う、うう、うわぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 その泣き声は廊下にも聞こえるほどであった。風華の部屋の前に人盛りが出来始めるが誰も風華の部屋に入ろうとはしなかった。いや出来なかったのかも知れない。
風華「うぐ、麻耶様何故です、何故この様なときに居なくなってしまったのですか...」
風華「う、うわぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 その夜、風華の泣き声はやむ事がなかった。

(2002.11.10)


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