<!DOCTYPE HTML PUBLIC "-//W3C//DTD HTML 4.01 Transitional//EN"> 気持ちの問題





気持ちの問題

tamakuzi

「後は気持ちの問題...ですか。」
風華はクレアの城の中を歩いていた。負傷し捕虜になったもののどうにか聖都に戻ってこれた。疲れのためか2、3日ずーっと寝ていたらしい。肉体的にも精神的にも疲れきっていたのだ。しかし身体の方はもう大丈夫なのだが風華は戦場に行く気配が無かった。最早1週間にもなる。
「風華様どちらへ?」
兵士達が場所を聞いても風華は何も答えなかった。風華が行く場所。それは聖都より更に北にある湖である。半径100mほどの湖である。
「いつ見ても、とても綺麗ですの。」
氷のように冷たくそしてそこには液体のそれが無いのではと思わせるほど美しい湖である。対岸には鹿たちもい、動物達の憩いの場にもなっている。しかし湖の中にはそれといった動物はいなかった。風華は服を着たままその湖の中に入っていった。そして浮力に全てを任し湖に浮かび始めた。自分の体が徐々に風に流されていく。本来は氷のように冷たい湖であるが今の風華にとってそれは癒しの湖へと変わっていた。風華は手で水をすくい顔の上に持って来た。そして手から少しずつこぼれてくる水を飲み始めた。
「とても美味しい。本当に平和ですの。」
風華は目を瞑りそのまま沈んでいく。息ができないがとても心地よい感覚に見回れてくる。
「不思議ですの...。とても気持ちよく、そして何か癒されますの。水がこんなにも冷たいのに...」
風華が自然に身を任せ再び水面に戻ってきた。風華はそのまま陸に上がり火をおこし始めた。作画にこの時期のクレアはとても寒く、一面が銀世界である。風華は火に当たり始めた。その時、小鳥が2、3羽風華の肩に止まってきた。風華は指を差し伸べる。小鳥が指に止まるのを確認し自分の顔の近くにその指を持ってきた。
「どうしたの? 私に何か用事?」
風華は小鳥に話し始めた。小鳥はピヨピヨと鳴くだけであったが風華にはそれだけで十分であった。
「私を慰めに? どうしてですの? ...悲し...そう。そう私の心を分かっているのですか? ありがとう。」
風華が涙を流したが小鳥は風華の顔に擦り寄ってきた。まるで涙を拭くように。
「有り難うですの。もう大丈夫ですの。」
そういうと小鳥達は一斉に飛び立った。風華はスクッと立ち再び湖に身を浸し始めた。風華が聖都に戻ったのは1時間後であった。

(2002.11.24)


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