ガイ・アヴェリ速攻戦

ゲイル

「ついに来たか・・・」

帝国将軍ヴェルヴェット・ヴィシャス率いる風神騎士団が首都ガイ・アヴェリに侵攻して来たのだ。

「議長、こたびの戦、長期化すると内政が滞り、前線方面の援軍も出せなくなります。」
とカーチャ・ボルジア将軍。
「ここは共和国総力を上げて叩き潰すべきです」
とその副官アメリアが続く。
「諜報員からの情報によりますと

指揮官 ヴェルヴェット・ヴィシャス
兵科 騎兵
兵数 1603

となっているようです、ヴィシャス将軍は一騎討ち、速攻を得意としている将軍で早急に手を打たなければ首都を蹂躙するように行動されるでしょう」
スパイマスター、エヴェリーナ・ミュンスター評議委員が現在の状況を説明する。
「ヴェルヴェット・ヴィシャスという男、以前部隊が衝突したことがあるのですが、守備側なのに突撃で迎え撃とうとするような荒っぽくて攻撃型の指揮官です。隙が少なからずあると見ています、その隙をうまく突けばすぐに壊滅させることも出来るでしょう。」
漆黒の騎馬軍団指揮官ゲイル参謀官がこう主張する。
「敵に隙が無く、打つ手が無いのならガイアから援軍を要請して身動きのとれないように敵を包囲するのがいいでしょう」
Shooting Star指揮官ショウ・ラングド将軍が提案する。
「ふむ・・・全員速やかに攻撃に賛成のようだな。具体的な作戦はどうする?」
議長・ラヴェリアがたずねる。
「僕が先陣をきり、闇夜に紛れ、森を疾風のごとく駆け抜け、正面から戦闘準備できていないうちに急襲します、敵が乱れている隙に議長、カーチャさんが側面を突いてください。」
と自ら進んで策を提案したのはゲイルだ。
「しかしゲイルさん、あなたの部隊正面を突くにしたら残り少なすぎないですか?たしか600とちょっとだと思いますが・・・」
心配そうにショウ将軍が尋ねる。
「いや、こういう夜襲は少ないほうがいい。600もあれば十分すぎる結果が出せるでしょう。心配しないでください、こんなところで無駄に命を使うほど馬鹿じゃないですよ。」
「よし、わかった、よほど勝算があるのだろう、あなたに任せよう、では至急準備してくれ、半刻後俺も後から行こう。」
「はっ!!」
すぐに会議室を出て準備に向かうゲイル、
「カーチャ殿、俺がでてその半刻後に出撃、東側から攻撃してくれ、俺は西側から突こう。」
「わかりました。」
「では解散だ、残りの部隊も戦闘準備を怠るな!」

「帝国軍・・・俺自ら引導を渡してくれる・・・」


「いいか! これより漆黒の騎馬軍団は首都に入ってきた風神騎士団に夜襲をかける! 共和国民を帝国軍の恐怖から守り、首都を平和な状態に戻すぞ!!」
「大将! 待ってくれっす、この兵力で突っ込むんすか?」
「ん? グルスか・・・まぁ見ていろ、私の指揮を。」
「相手に突撃されたら一巻の終わりっすよ」
「ふっ・・・突撃というものはな、勢いをつけて相手の部隊の陣形を切り崩していく戦法だ。守備のとき突撃陣を構える、これはかなり無謀なことでな、一気に近づき交戦状態に持ち込めばいい。勢いを殺された突撃陣は攻撃力が落ち被害が少なくなる、もともと守備に向いていないから正面から攻撃しても与えれる被害は非常に大きい。ある程度勝算がある、決して無謀なことではないよ。」
「・・・わかりやした、決して無理はしないでくださいよ。」
「わかってるって、死なない程度に帰ってくるよ。」

「疾風のごとく駆け抜け敵の正面から夜襲をかける!漆黒の騎馬軍団出陣だ!!」
「おー!」
方天画戟を天に掲げ残り少ない兵たちに鼓舞するゲイル。
「いくぞ、遅れずについて来い!!」


「共和国民の平和を脅かす帝国軍め・・・この命砕けようと貴様らの侵攻はこれ以上許さん・・・」


ガイ・アヴェリ南西部 風神騎士団野営地

もうあたりは闇に染まってからかなり経つ、深夜11時といったところだ。帝国軍も夜襲には十分警戒していた、しかし共和国首都ガイ・アヴェリは果てしなく森が続くような地形だ、慣れていないとあまり先が見えない。偵察部隊を前線のほうに出してもあまり得られる情報は少なかった。

一方漆黒の騎馬軍団は・・・

「出来るだけ音を立てずに進め、無駄な声を出すな。」
もうすでに街を出てから半刻が過ぎている、議長の部隊もそろそろ動くだろう・・・
「そろそろ到着よ。」
副指令官ミズハが戦闘準備をしながら知らせる。
「よし・・・全軍鋒矢の陣形をとれ! 勢いを殺さず敵を切り崩していくぞ!」

※鋒矢の陣
代表的な突撃陣、突撃をするならこれ。
相手の部隊を切り崩していくのに非常に有効である。
矢の先のような形をしている。簡単に言えば矢印のような形。
非常に攻撃力の高い陣形。


戦いはいきなり始まった・・・

当初漆黒の騎馬軍団が夜襲に成功し混乱している前衛部隊をことごとく打ち破った。ゲイル自身も方天画戟を握り直して敵兵5,6人を一気に倒した。
しかし、さすがに1600人もいる相手である、中核のあたりまで切り込んで行った後は混乱も収まりだしていて前衛のようにはいかなかった。
「残り300人きってしまったか・・・」
「ゲイル殿、このままでは敵に囲まれ全滅の危機でございます。」
「うむ・・・もうすでに半刻以上戦っているな、これ以上この場にいたら他の部隊の攻撃に巻き込まれる・・・よし、全軍敵陣を離脱し後方に下がれ!」
漆黒の騎馬軍団が突如引き返しだしたので追撃にでる風神騎士団、しかし追撃を予測していたゲイルは後方に配置していた伏兵100人を迎撃に当たらせた。しかし、勢いに乗る前に食い止め、かなりの被害を与えたが多勢に無勢、伏兵は全滅してしまった。が・・・
「議長の軍勢、西方から突撃を開始した模様!!」
このとき追撃にでていた風神騎士団は本陣と前方がかなり開いてしまい統率の執りづらい状況に陥っていた、その隙に鬼議長率いる共和国の精鋭たちが突っ込んでいった。次々へと討ち取られていく帝国軍、それほどすさまじい突撃だった。
この後カーチャ部隊が東側から狭撃、風神騎士団は一気に壊滅へと向かった。わずか戦闘開始から一刻ぐらいの時間で・・・

「ヴェルヴェット・ヴィシャスは討ち取ったか?」
「いえ、壊滅の前に姿をくらましたようです。」
「まぁいい、どの道こんな奥深くまで入ってきたんだ、各地域の警備隊に捕まるだろう。」


ガイ・アヴェリ速攻戦は翌日の朝、共和国民に大勝利として知らされた。

(2002.11.02)


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