生きること

ゲイル

(・・・ここはどこだろう・・・あっこのシーン見たことある・・・確か・・・)

そこは共和国の軍事作戦会議所、この日は確かグルス将軍がカルスケートに出陣するにあたってゲイル将軍が私とミズハさん、グルスさんを呼び集めてた日だ・・・それで・・・

「そろそろ最終決戦が近づいてきたようだ・・・これから各戦線は厳しくなっていくだろう・・・でもな・・・絶対死ぬなよ、生きて帰って来い! 絶対命令な。またここでみんなで酒でも飲もうな!」

って言ってたっけ・・・そのあと私はモンレッド、グルスさんとゲイルさんはカルスケート、ミズハさんはガイアに行ったんだ・・・

(生きて帰れ・・・か、私、今生きているのかな?)

夢が醒めだんだん意識が戻ってくる・・・意識が戻るにつれ下半身から疲れや痛みが伝わってくる。

「う・・・うぅ・・・」

目がだんだん覚めてくる。それに伴い現在の状況をちょっとづつ理解していく。

(ここは・・・あぁ・・・ユーディスさんに襲われた場所だわ・・・今は昼過ぎかな・・・私、どうやらとどめを刺されなかったみたい・・・あのまま森に捨てられたのかしら・・・)

起き上がり周りを見わたす。あたりには破り捨てられた下着やブラジャーをはじめ、破り捨てられた服の残骸が落ちていた・・・そして自分を見てみるとスカートは残っていたもののその他の部分は肌があらわに露出していた・・・

「・・・・・・」

改めて自分の姿を確認して顔を赤らめてしまう・・・

(・・・これじゃ襲ってくださいって言ってるようなものだわ・・・どうしましょ・・・あっそうだわ)

自身のロングスカートを手で破り、破りとったスカートの布切れを胸を隠すようにして後ろで結んだ。

「・・・まぁこれでいっか。さすがに上半身裸では帰れないもんね・・・」

(でもこれからどうしよう・・・大体ここはどこなんだろう・・・とりあえず歩いてみよう・・・)

とてもしっかりした歩き方とはいえないが何とか前に進んでいくミリィ。前方に見える小高い丘に向かって・・・


そして、丘を登ったミリィが見た光景は・・・

「あっ・・・モンレッドの砦が・・・」

小高い丘から北西方向に見えたその光景・・・共和国軍が必死で守ってきたガイ・アヴェリとモンレッドの境にある砦・・・その砦が燃えていてしかも帝国軍の旗がなびいていた。

「あぁ・・・首都ガイ・アヴェリはもう安全じゃないのね・・・」

ミリィの目には涙があふれていた・・・この戦争を止められない民への申し訳なさ、自分の無力さ・・・いろんな感情がこみ上げる・・・

「と言うことはここはガイ・アヴェリのモンレッド方面の入り口・・・」

そういいながら北のほうを見てみると・・・もうすでに帝国軍がガイ・アヴェリに帝国軍が・・・

「もう侵略されているの!?・・・そんなぁ・・・」

帝国軍と共和国軍、戦争を出来ることなら止めたかった・・・
首都へ侵攻する、それはその国を滅ぼすという行為・・・
もう戦争は止められないの?
そう思うとものすごく泣きたくなった・・・座り込んでしまいたかった・・・
でも・・・でも・・・

「生きて帰れば何かできるかも・・・生きて帰って何かしなければ・・・」

座り込んでる場合じゃない! そう自分に言い聞かせて歩き出すミリィ。
しかし・・・予想以上に帝国軍が近い・・・見つからないようにしなければ・・・



ザァァァァァァァ
ものすごい雨が降り続いている・・・もう2時間は降り続いているだろうか・・・
「はぁ・・・はぁ・・・」

どれぐらい歩いたのかしら・・・どのくらい経ったのかしら・・・
帝国軍に見つからないように森の中を歩き続けて・・・

「寒いよう・・・寒いよう・・・」

季節はまだ初春・・・ただでさえ肌寒いのに雨によってさらに体温が奪われていく・・・服はもうボロボロ・・・体ももう限界に近い・・・

「もうすぐ・・・もうすぐよね・・・」

そう自分を励ましながら樹海を抜けていく・・・そして・・・

「あっ! あれは・・・」

少し見晴らしのいい場所に出たミリィ。そこで見た光景は・・・

「あの青い旗・・・そして白い旗・・・」

ミリィにしてみれば見覚えのある二つの軍旗。

風に青くたなびく三本の細布。
共和国が誇る若き勇将 カオス・コントン率いる青嵐隊の旗印。

そして青の生地に白鳥の舞っている姿。
共和国参謀・ミリィの直属の上司の ゲイル率いる白馬騎兵団の旗印。

あともうすぐ・・・もう近くまで来た・・・
あそこまでいったら助けてくれる・・・

嬉しくてちょっと涙がこぼれそうになる・・・
もうすぐだ・・・

「ふふふ・・・ようやく見つけたよ・・・衛兵を殺してこんなところにまで逃げているとはな・・・」

不意に後ろから声をかけられる、ミリィがその声に反応して後ろへ振り向くと・・・

「う・・・うそでしょ・・・」

そこには帝国兵20人ぐらいがいた・・・しかも騎兵だ・・・
なぜこんなおく深くまで帝国軍が!?
ガイ・アヴェリの街も近いのに・・・

ただでさえ武術は得意ではない。
それでなくても体はボロボロ・・・
しかも相手は馬に乗っている・・・


逃げられない・・・
そう思った・・・もう体も動かないよ・・・わたしももうここで終っちゃうのかな・・・

「くくく・・・観念した様だな・・・だがな、貴様の脱走で私は危うく責任をとらされるところだったんだ。この恨みその体に刻み込ませてもらおうか・・・」

・・・また犯されるのね

「ほう・・・あきらめはいいほうだな、くくく・・・もうすでに帝都への護送車も着いているだろう。ここで犯され、ついでに帝都で娼婦同然に弄ばれるがいい、はっはっは。」


・・・私の人生、やっぱり最後まで幸せになれないのね

「くくく・・・まずはその胸のぼろきれをとってやる。」

・・・物心つく前に親に身売りされて

「ほう・・・なかなかの胸じゃないか・・・」

・・・小さいときからいろんな辛苦を味わってきたよね

「いいもみ心地だな・・・大きめだしな。」

・・・軍人として育てられたけど剣もあまり上手じゃない
      それでよく怒られたり殴られたり・・・

「ちっ・・・無反応か・・・」

・・・それに部隊の指揮も下手だもん
      お前は無能だって普通に言われてきた・・・

「まぁいい・・・さて下半身をいただかせてもらうか。」

・・・そして・・・私の嫌いな戦争が始まっちゃって・・・

「まずはそのスカートが邪魔だな。」
・・・無能な私は何もすることが出来なかった

「くくく・・・どれどれ・・・どんな下着をはいてるんだ?」

・・・ゲイルさんの副官を務めたときだって

「なんだ、ノーパンか。ひゃひゃひゃ・・・そんなに襲ってほしかったのか。」

・・・長期の遠征で私だけ病気になって
      みんなの足を引っ張るだけだったんだよね・・・

「その邪魔な布切れ(スカート)をまずとってやろう・・・」

・・・でもなんとか役に立とうとして
      みんなのまえでは強気に振舞っていたんだよね・・・

「ふはははは、どうだ、皆の前で自分の体を曝け出している気分は?」

・・・そういえば私
      まだ何も役に立ってない・・・

「くくく・・・まだ無反応を続けているのか・・・まぁいい、とりあえずその体に私の精を刻みこんでやろう。」

・・・まだ私
     共和国の人のためにも
       お世話になった人たちのためにも
         そして・・・私なんかを仲間と認めてくれた人たちにも

         まだなんの役にも立ってないよね・・・

「隊長、ここを早く脱出しないと共和国の連中に気づかれますよ。」

・・・生きて帰るって命令も守れないのかしら・・・
      ここで力尽きて帝国に連れて行かれたら・・・

「そうですよ、もうちょっと安全なところでやりましょうよ。」

・・・私のために悲しんでくれる人なんているんだろうか
      こんな私のために泣いてくれる人なんているんだろうか・・・

「・・・そうだな。」

・・・イヤだよ、そんなのイヤだよ

「まぁちょっと待て、この小娘にこのわしの面を汚したことを後悔させてやる。すぐ終らせる。」

・・・何も出来ずに・・・
      何の役に立てずに・・・
         迷惑ばかりかけて・・・
            そしてひとりで無残な最期と遂げるなんて・・・

「さぁて・・・まだ濡れてないようだがいただくとするか・・・」

「そんなのイヤだよ〜!!」

「うわっ、いきなり大声をあげるとは・・・くそっ・・・この女どこにこんな元気があったんだ・・・」

「誰か助けて・・・誰か・・・」

「とりあえず前の穴に差し込んでやる、覚悟しろ!!」
「隊長!! 大変です、前方からものすごい勢いで共和国軍が来ます。」
「なにっ!? くそっ・・・」
「隊長、もう逃げられないですよ・・・」
「ええぃ・・・しょうがない・・・」

薄れ行く意識の中、ミリィにはもうそんな声は聞こえなくなっていた・・・


・・・あれ?音が聞こえなくなったよ・・・
・・・私・・・まだ生きているの?
・・・私犯されちゃったのかな?
・・・好きな人に抱かれることなく終っちゃうのかな?
・・・そういえばなんだかあったかい。
・・・それに気持ちいな、ベッドで寝ているのかな?
・・・そういえばここどこだろう?


(ムクッ)

「ここは・・・?」

どうやらどこかの部隊の天幕の中のようだ。
ベッドがある、そして机もある・・・
自分を見てみるといつもの格好をしている・・・
帝国軍に捕虜として運ばれたんだろうか・・・
でも・・・なんだろう・・・懐かしい感じがする・・・
たしかここは・・・

(ハラッ)

「あっ!」

天幕に入ってきた人物をみて思わず涙があふれる・・・

「あっ、ミリィ、気がついたか?」
そういいながらものすごく嬉しそうな笑顔で私のほうに歩いてくる。
共和国第二部隊白馬騎兵団の指揮官ゲイルさんだ・・・
私、助かったみたい・・・生きて帰ってこれた・・・

そう思うとなんだか泣きたくたってきた・・・
いろいろ報告しないといけないのに・・・
いろいろ言うことがあるのに・・・
なんでだろう・・・こんなにうれしいのに・・・
なんだか涙が止まらない・・・

「う・・う・・・」

(普段は強気で涙なんか絶対見せないミリィが・・・私の前で泣いてる!?)

「うわぁぁぁぁ・・・」

ベッドに近づいていたゲイルさんに思いっきり泣きついた。

辛かったよ・・・
痛かったよ・・・
苦しかったよ・・・
寒かったよ・・・
寂しかったよ・・・
一人で心細かったよ・・・

いろんな苦しみが彼女から涙として流れていきゲイルの服を濡らしていく・・・

「ミリィ・・・」

私はずっとゲイルさんの胸の中にうずくまったまま泣き続けている。
そんな私をやさしく包み込むように抱いてくれた。

「・・・生きてて良かった・・・本当に生きてて良かった・・・」

私の首筋に熱いしずくが落ちてきた・・・
こんな私のために泣いてくれているの?

そう思うと涙が止まらなくなっていた・・・


「初めて人のあったかさに包み込まれたような気がする・・・」

(2002.11.28)


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