謀略の果てに・・・

ゲイル

白馬騎兵団はノスティーライナーで戦ったあと首都まで撤退し、ガイ・アヴェリでの籠城戦にそなえ急ピッチで部隊編成を進めていた。

「いそげ、まもなく大軍が城外に押し寄せてくるだろう。それまでに籠城戦の準備を急ぐんだ。」

忙しく指揮を執るゲイルに白馬騎兵団直属の偵察兵が報告に来る。
「ゲイルさま報告いたします。ラヴェリア議長隊、ノスティーライナーにて壊滅した模様、ラヴェリア議長は追撃を振り切りこちらに向かっている模様、どうなさいますか?」
「そうか・・・ラヴェリア殿は生きておられるのだな?」
「はっ、何とか無事に・・・」
「それなら大丈夫であろう、念のために先にミズハに一軍を任せて議長を守るように言ってある。議長が無事で帰ってきてくれればガイ・アヴェリ籠城戦もぐんと士気が上がるであろう。ご苦労だったな、今日はゆっくりと体を休めてくれ。」
「はっ」
偵察兵を下がらせ再び作業に入ろうとしたそのとき・・・
「ゲイルさ〜ん!!」
ものすごいスピードでミリィが走ってくる。
「んっ? ミリィか、まだ体力が戻ってないんだしあまり無理するな。」
「はぁはぁ・・・大変なんです、これを・・・」
「ん? なんだ・・・これは・・・」
ミリィにもらった書状を見て手が震える・・・

〜ミズハへ〜

このたびラヴェリアを殺す絶好の機会がやってきた
ラヴェリアは必ずその悪運で戻ってくるだろう
君はラヴェリアが帰ってくるのを見計い、隙を見て殺せ
手段は君に任せる、必ずしくじらずにやれ
あと、帝国についたらエル様に我々の処遇などよろしく言っておいてくれ
では幸運を祈る

この国の将来を憂う共和国評議委員一同より

「・・・おい、ミズハは今どこにいる!?」
「今は・・・もうすでに城外へ行ってしまってますが・・・」
「くそっ・・・(私がミズハに指示したばっかりに・・・)。白馬騎兵団は出撃できるか?」
「いえ・・・籠城の準備で50人ぐらいしか出動できません。」
「くっ・・・まぁいい、とりあえず行くぞ!!」
「はい!!」
「偵察隊! いるか?」
「はっ、ここに。」
「帝国軍がこちらに攻めてくるであろう、遭遇しないように道案内をつとめてくれないか?」
「わかりました、お任せを・・・」



出撃してから半日後・・・
「あのう・・・ゲイルさま・・・」
案内人が申し訳なさそうに口を開く。
「ん? どうした?」
「かなり迂回しながら、しかも慎重に行軍していますので・・・ラヴェリア議長とミズハ様の行かれた方向とはかなり別の方角にきていますが・・・」
「む・・・仕方ない・・・帝国軍は今どの辺りにいるのだ?」
「ノスティーライナー平原からガイ・アヴェリのほうに向かう準備をしている模様でございます。」
「現在地は?」
「峡谷を越えてノスティーライナー平原の西に来ております、あとしばらく進むとフェルグリア平原の入り口にさしかかります。」
「そんなところまできていたのか・・・そろそろ戻らねば・・・昼間に出撃してもう夜になってるしな・・・運良く議長が生きていることを願うしかない・・・」
「!?」
何かを見つけて馬から降りて確認しに行くミリィ。
「ん? どうした、ミリィ?」
「この武器は・・・ミズハさんの・・・」
「!? 何でこんなところに・・・」
落ちていたのはミズハが愛用していた1対のダガー。ミズハほどの武人がこんなところに武器を置いていくはずがない。しかし・・・すぐに答えは目の前に現れる・・・
「・・・嘘だろ・・・・・・」
崩れ落ちるようにして馬にもたれかかるゲイル。
目の前に落ちていたのは首無しの全裸の女性の遺体・・・
しかも犬に食われていた・・・
それだけなら残酷だが戦場でたまにあることだ。
だが・・・その遺体は・・・
信じたくなかった・・・だが・・・立証する証拠はいくらでもあった。
死体の周りに落ちていた服・・・
いつもミズハがつけていた髪飾り・・・
ミズハ愛用のダガー・・・
「・・・どうしてこんなことに・・・・・・・・・!?」
そして・・・ミズハの死体のそばにあったもの・・・
それはゲイルにとって一番見たくなかったもの・・・
ラヴェリア議長の・・・長刀・・・

なぜここに・・・
その疑問はすぐに解けた。
あのラヴェリア議長がそう簡単に自分の長刀を人に渡すわけがない・・・
となれば・・・

(どさっ)
「!? ゲイルさん?」
気を失って馬から落馬するゲイル。
彼が意識を取り戻したのはまる1日後、ガイ・アヴェリの自分の邸だった。


しばらくして・・・
「ゲイルさま・・・報告いたします。帝国軍ガイ・アヴェリを包囲せず撤退を開始いたしました。どうやら後方都市で食糧輸送失敗が起きたようです。帝国軍は一部をガイア方面に駐屯させ本国に戻っていくようです。」
「・・・わかった、ご苦労だったな・・・ゆっくりしてくれ・・・」
報告しに来た偵察隊の者を下がらせる。
(とりあえず終ったみたいだな・・・この国の人たちを守ることは出来たかな・・・。・・・なにか全部無くしてしまったような気分だ・・・尊敬していたラヴェリア議長、少し怖い感じがしてたけど一緒に戦ったミズハ、馬鹿でいっつも私を困らせやがったグルス・・・みんな死んだ・・・自分の周りの人はみんな死んだ・・・ここにいたらまた周りの人みんな死んでしまうかもしれない・・・)

そして・・・ガイ・アヴェリの内乱が起こる前の1256年10周期21日、ゲイルはレディスに辞表と作戦書を提出し共和国を去った。

〜レディス殿へ〜

一部の議員の謀略によってラヴェリア議長が亡くなられ、混乱しているこの国を支えられる人物はあなたしかいない。速やかにこの議員の処理を行うよう行動されたし。そして、ラヴェリア殿の意志を継ぎ議長となり、この国に住む民たちが安心して暮らせるようにその政治手腕を発揮してもらいたい。去る者の身で勝手なことを言うようですが・・・

白馬騎兵団・漆黒の騎馬軍団指揮官 ゲイル


(2002.12.17)


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