帰郷

グレイアス

俺は手紙を読んでいた。
長い時間を掛けて俺の手元にたどり着いた手紙。

それは、上の兄が流行り病で死んだ事、そして一番上の兄も事故で寝たきりになっている事を伝えていた。

懐かしい親父の字。

最後に、家の為にも戻って来て欲しいとの一文で手紙は終わっていた。
その日付は1年以上も前のものだった。

 いや、よくぞそれだけの日数で辿り着いたものだ。
家を出てから15年以上。その間、連絡もしなかったのだ。
外面ばかりを気にする家風に嫌気がさして、外へ出た。

(もう2度と戻る事はあるまいと思っていたのだが………)

上の兄は一人身で死んだ。一番上の兄夫婦は子供もまだ出来ぬ内に、兄貴が下半身不随になった。
そして、勘当同然の俺を呼び戻そうとするほど、親父は弱くなっている。

もう俺には関係ないはずの人々。
そう、関係ないのだ…。

俺はもう一度手紙に目をやった。



(結局、俺は捨てきれなかったようだな…)
 翌朝、旅装束に身を包んだ俺は溜息をつきつつ帝国へ足を向けた。
大きな戦を間近に控えた故郷へと……。

(2002.09.14)


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