出陣の朝

グレイアス

「将軍! 帝国第8部隊、出陣準備完了致しました! いつでもシチルに向けて進軍出来ます!」
まだ若い伝令兵が俺の所へ報告に来た。
「うむ、ご苦労」
労をねぎらい、部屋を出ようとする俺に、伝令兵が物問いたげな視線を向けているのに気付いた。
「どうした? 何かあるのか?」
「一つ、宜しいでしょうか?」
声を掛けてみた俺に、質問で返す伝令兵。
「言ってみろ」
まだ若い兵士は、言葉を濁しながらも聞いてきた。
「その、我が隊は、『騎馬隊』なのに、なぜ『魔法兵団』なのでしょうか!?」
余程訊きにくかったのか、顔中汗をかいている。
「知りたいか?」
「はっ、はい!」
「本当に知りたいか?」
返事に詰まった彼に念を押してみる。
「…は、はい!」
少し間があったが、良い根性している。
「よし。ならば教えてやろう。これは軍機である。他言無用だぞ」
「はい!」
相手の緊張がよく判る。
「コホン…」
咳払いを一つ。
「良いか? よく聞けよ。これはな…」
「ゴクリ」
伝令兵のつばを飲みこむ音がやけに大きく聞こえる。

「…敵をおちょくるためだ」

「は?」
カクンと顎を落とした彼に軽く片目をつむる。
「今言った通りだ。さぁ、出陣だ、遅れるなよ?」
呆然としたままの相手を置いて部屋を出る。



帝国将軍グレイアス。彼が指揮する部隊は『騎馬隊』の『グレイブ魔法兵団』である……。


そして数日後、同様の問答が行われた。
そう、再編成の直後の事であった。


騎馬隊『グレイブ魔法兵団』改め、法術部隊『ファルタス騎兵師団』…。
その実力は現在、味方を呆然とさせる事に費やされている…。

(2002.09.14)


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