果て無き夢へ
料理長
なぁ 成り上がって…来たぜ…
なぁ こっからだろう…俺の始まりは…
なぁ 見てるかよ…俺を、俺達を蔑んできた奴らよ…
なぁ 周りにはよ…『仲間』がいるんだ…
見せてやるよ! あの女に! 世のエリートって奴らになぁ!
カルスケート。最前線。
帝国第13部隊「ブラッディ・クルス」を見据え急速前進していた共和国第17部隊に対し、その部隊は突如側面を突いて現れた。
「…新手に挟撃されましたぜ、親分!」
「ここまで来てっ! くそ…突破するぜ、あくまで目標は帝国の13部隊だ!」
だが乱戦を喫した戦場において奇襲された山賊の集団に、これを切りぬける能力は備わっていなかった。
側面からの帝国兵の刃に一人、また一人と賊の者が切り捨てられていく。
だが何やら後方から攻撃を止める波が広がり、兵達は陣を崩さない様に後退を始めた。
しばらくすると、その中をかきわけてコックの姿をした一人の男が姿を表した。
「おやおや…酷い負け戦ぶりですね…。
女性に心を奪われて、自称巷で話題の移動厨房、通り抜けなさる気でいらしたのですか?
私、この帝国食料輸送部隊『クッキング』の主任を務めている者です。」
「食料輸送ってか……舐めやがって……どいつもこいつも帝国ってのはよぉ!」
アームズはおもむろにポケットから包丁を取り出すと切先をグルスのいる方へ向けた。
「華の一騎討ち……私とどうでしょう?」
(なぁ なんなんだよ…こいつら…)
「ふざけるなよ!」
30
(なぁ 行くぜ相棒…いつだってこれだけなんだよ俺には!)
グルスは目の前にいる男に剣先を合わせ、飛び立った。
20
昔からそう。必死に走った。
15
(なぁ いつか、届くんだろ?)
―――アームズはゆっくりと胸の辺りに手をやった。―――――
―――八年間眠らせていた…もう一つの腕を―――――
10
(なぁ 剣に込めた気ってなぁ、誰にも負けねえ自身があんだ)
―――あの時皇帝を狙った弾が詰まったままの―――――
―――時が止まったままの――――
5
「受け取りやがれっ! 俺だって…俺だって!」
ぱん。
5
4
5
6
「あれ……空………届いた…?」
まもなくして共和国首都への道が開き、第17部隊の壊滅は戦場に広まった。
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