彼と彼女

アザゼル+鴉

「はぁ!? 今......何て言った?」
男、リヴァイアサン(鴉)が女性、パンドラに聞き返す。
「うん。少し居すぎたかもしれないけど私は旅人だから......」
あるきっかけで2人は仲良くなり、リヴァにとってパンドラは唯一の親友だった。
しかし、当の彼女は再びこの家を出ると言う事だった。
彼女曰く、自分は旅人。一つの所に居座るのはどうも.......
リヴァは少し悩んだあげく、
「お前にとってそれが一番良いのなら俺は止めないけどな」
この一言で彼女は再び旅に出た。
彼女と過ごした日々。リヴァにとってもパンドラにとってもとても楽しい日々だった。
2人とも心の底から笑った。
「それじゃあ.......ね」
名残惜しそうにパンドラが足を進める。
「ちょっと待ちな」
唐突にリヴァが止める。
「え?」
思わず振り向き、リヴァの顔が目の前に映った。
「あ............」
2人の時間は一瞬.......止まった。
リヴァの口がパンドラの口から離れる。
「・・・・・・・・・・」
パンドラはしばし呆然。
「別に色気が無くても俺にとってはちゃんとした女だ。今度会う時は.......また、楽しく笑おうな」
その言葉にパンドラは思わず、リヴァの顔面を拳で殴った。
「ぐぉ!」
「全く.......それはこっちが言いたいです」
言葉を聞いたリヴァは土の上で寝そべり、笑った。
パンドラは笑顔のままその場を後にした。
それからしばらくの年月が経った。
「結構.....良い街なんだけどなぁ.......」
パンドラは聖都クレアを見つめながら言った。
彼女は自由人。風のように歩き回り、何処かへと行く。
多分、彼女にとって一番良い街だろう。
また...名残惜しい感情があらわれた。
「パン......ドラ?」
「え?」
聞き慣れた声、そして自分の名を呼ぶ人物。
「あ.......」
彼女の目には懐かしい顔が映った。
「如何して.....ここに?」
パンドラが尋ねる。
「色々あってな....俺はクレアの将軍」
「ウソぉ!?」
2人は夜も深けても色々懐かしい会話を親しんだ。そして、彼の今の事も。
「本当だよ。まだ、部隊は持っていないけど立派な将軍」
「信じられないなぁ.....色々な戦場で恐怖の対象が今度は軍人さんなんて.....」
「全くだ.....なぁ、パンドラ」
「ん?」
「お前の腕なら多分、あっという間になれると思う」
「勧誘? 冗談でしょ?」
「・・・・・」
「知ってるよ。クレアの状勢」
「頼む....俺と一緒に戦場に立ってくれ」
初めて彼の口から『頼む』と言う言葉が出た。
私は考えた。クレアは他の都市、特にラグナイナ。其処より遥かにマシな所。
そして、ラグナイナは数も力もある。だが、クレアは.....
案外あっさり答えが出た。
「私の力が役立てるならね♪」
多分、私にとっても彼にとっても良いと思った。

(2002.09.13)


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