沈黙の瞬きの意

アザゼル+鴉

「・・・・・・・・・・・」
「たすけっ!」
少年と言える体格の男の前で首を飛ばされた男が屍の上に乗る。
「・・・・・・・・・・・」
「うわあああああああああああああ!」
「ぎゃあああああああああああああああああ!」
「かっ!」
『戦場で人が死んでイクノガ当たり前だ。ソシテ殺すのも当たり前だ』
俺は戦場で人を殺すの当たり前だと思っていた。
まだ、ガキだったからな。
だが、俺が14ぐらいの時、アイツと出会った。
アイツは俺の腐れ切った心を潤した。
とても暖かい優しさで.........
「今日も.....行くの?」
彼女は気配で俺が戦場に行く事を悟った。
彼女は生まれ付きの盲目だった。
だが、それをもろともせず彼女は生きた。
誰からでも愛されるようになった。
俺もその1人だった。
とても愛らしい笑顔。俺は.........それに満たされた。
会ったのは俺がへまをして、この町に辿り着いた時。
死ぬかと思った。
だが、彼女が声がをかけた。
「大丈夫ですか?」
今思うと......俺はなんも考えずに戦場に出てた。
理由は俺が生まれ付き高い身体能力を持っていたこと。
ある組織の連中に連れて行かれ俺は傭兵にされた。それが正しいな。
俺はそこで『リヴァイアサン』と言う名前を貰った。いや、付けられたと言った方が良いな。
初めは練習などで人殺しを慣らされた。
連中のやり口。
相手の人間は適当な所から金で釣る。
それで相手は不足しなかった。した時は無理矢理孤児を誘拐して『相手を殺せば一生を見てやる』孤児はそれだけで簡単に釣れる。
そして戦場に出る時は違和感すら沸かなかった。
だろうな。
話を戻すが、彼女の両親も優しかった。
組織の連中が俺を連れ戻したい。そう言った時は何故か名残惜しかった。
俺はここに住みたい。そう言って組織の連中を説得した。
俺の本当の意味での生活が始まった。アイツは俺より年上だったため俺に色々教えてくれた。
俺は色々教えた。組織でして来た事など。
組織の連中ががこれぐらいでそうそう潰れない。十分、承知で。
俺に給料が渡された。
アイツに何かを買ってやりたかった。
そう思い俺はラグナイナのいろんな店を回った。
ようやく見付けた良い品。
だが、高かった。下っ端同然の俺の給料で買える値段じゃなかった。
「坊主、特別だ。ちゃんと後にも払いに来るんだったらやるよ」
商人として甘い人間だったが俺は約束を守り、アイツの誕生日にそれを渡した。

初めて自分の贈り物が喜ばれた。
所詮、汚れた仕事で作った金だが本当に嬉しかった。
アイツの笑顔を見た時は一晩眠れないほどだった。
そして俺は仮面を付けた。
白と黒の左右に分かれた女形の仮面。
これもあのラグナイナの例の商人から。
俺は傭兵としての真の意味で実力を発揮した。
たまたま入った池の近くに弱った生物を見付けた。
そして、持ち帰る。
アイツに良い事と言われた。
俺は何と無く緑色の謎の生物の顔を見てたら『トベリ』そう聞こえた感じがした。
だから俺はトベリと名付けた。
俺が戦場で名を知られ「満月の魂の収集者」とか『無慈悲な死神』とか言われるように頃。
アイツはもうすぐ死ぬと言われた。
原因不明の病気らしい。
俺は組織の連中にすがった。
アイツを失いたく無いからだ。
連中が調べた結果、心臓が弱ってきており余命約一年と宣告された。
戦場で人が死ぬのは当たり前。そして、普通に死ぬは長い事だ。
だが、アイツは死ぬ。
如何しても信じられなかった。
持っている金であらゆる所を回った。
だが、どいつもこいつも助けるのは無理だと言いやがった。
それを俺はアイツに告げた。
そしてこう言われたよ。
「貴方と過ごした日々は楽しかった。私の目は見えないけど貴方は優しい人。私.....貴方と死ぬ前に結婚したいなぁ」
俺はアイツと最後の最後の前に夫婦になりたかった。
死ぬまでの日々を俺は傭兵の仕事をそっちのけで過ごした。
まぁ、近々俺が出るほどの戦場での依頼は無かった為組織の連中の了承を得た。
あいつ等にもこれぐらいの気配りはあったんだと改めて思う。
そして俺とアイツは町の小さな教会で結婚式をした。
出席者はアイツの両親ぐらい。
けど俺はそれでも良かった。
アイツと一緒になれた。
次の日、アイツは愛らしく優しい笑顔で寝ていた。

何故か涙は出なかった。
アイツの顔を見ていたら......
俺はアイツと色違いでおそろいの雫状の紅いピアスを外した。
俺のしているピアスは蒼。
ラグナイナの例の商人曰く、それは昔儚き日々の末結ばれた2人が付けていたもの。
俺とアイツにはおにあいだ。
蒼い雫の寓意(タロットなどの意味合い的な事)は満たされ、潤い、喜び、もしくは無慈悲、恐怖、殲滅。それを聞いて俺は蒼にした。
紅い雫のは優喜、もしくは定められた死、盲目。
あの商人は俺達の事を知っているように言った。
事実、もともとの持ち主もこれと同じだったらしい。
全く.......運命の女神は物好きだ。
俺はその町を離れた。
アイツなら離れた方が良いと言うに違いないと思ったからだ。
組織の連中にその町を守る様に言った。
もう俺は組織の中では必要不可欠だったのだ。
だから連中は言う事を聞いてくれた。
まぁ、最も上層部幹部がしれくれたのだ。直々ね。
幹部の連中もそこがえらく気に入ったらしい。
今でも『妻』の命日には足を運んでいる。
たった一,二年の付き合いだったのに長く夫婦であったように感じられた。
・・・・・・・・・・今の戦況は芳しくない。
俺が居るリュッカは確認された帝国の部隊が3。内の一つは何かしら渚将軍と関わりがあるらしい。俺は手を出す気は無い。当人達が望んでいる事だからな。
それを解かっているらしく他の2つの部隊も鬼哭を目指している。
その前に俺と刹那さんの部隊が待ち構えているからな。
部下が見て来たにはモンレッドが共和国と帝国が五分五分の状態らしい。
どちらかの部隊が行く可能性はあるようだ。それはそれで楽だからな。
どっちにしろ.......敵は敵だ。
俺は自分自身の為にも戦う。

俺はクレアを抜け出しラグナイナに向かった。
無論、変装して。
案外簡単に入れた。護身用の短刀を持っているだけでな。
俺は表通りから離れ細い路地を進みある店に付く。
「景気はどうだい?」
店の主人が言う。
「良くは無い。だが悪いとも言えない」
「今日はなんのようだ?」
これが合言葉。
「支払い」
「そうかい。軍人になって少しはまともな金が入るのか?」
「さぁ? でも落ち付けるよ」
「物好きだなぁ」
「昔のアンタもね」
俺はまだ払い終えていない物の代金を払い主人と飲み明かした。

(2002.09.18)


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