静寂と雑音
アザゼル+鴉
鴉基リヴァイアサンはリュッカにある山中の村の側にある家で待っていた。
本来は自ら行うべきなのだが、あえて待つ。
トべリは現在のリュッカの治安を考え、独断で帝国領内にある蘭の家に置いていた。
それからは蘭とトべリはここに顔を見せていない。
蘭は鴉が何を待っているか分かっていたからだ。
クレアの状勢は気になった。
だが、戻って奇跡でも起こるわけではない。
ましては部隊を引き連れる長としては周りに劣る自分が何か役に立つはずが無い。
十分分かっていた。
根本的な離脱理由は其れだ。
あいつはあいつで頑張っているのに......俺は.....
「弱いな.....本当に......」
グラスの中に親友の顔を想い抱きながら、酒を飲む。
静か。
実に静寂な時間が過ぎた。
ノースリーブのシャツにスーツパンツを見に纏った状態で外に出る。
久々に握る爆閲棍を手に。
暫く歩き、近くにある湖が寒さで凍っていた。
寒さには慣れている。
色々な意味の寒さも......
「ふぉふぉふぉふぉふぉふぉ......ようやく来てくれたか.....リヴァイアサン」
「主を待つのは少しながら面倒じゃったが.....これぐらい大丈夫じゃ」
「そろそろ声を聞かせてくれぬか?それ次第なのじゃ」
周りから老人3人の声が聞こえた。
赤竜や数々のクレア名門の代表者達を集め、最も力のある者達.....
元老会の代表3人が鴉の下を訪ねた。
「して......いまや忌まわしき存在と化した赤竜鵠と赤竜源帥を我らからの依頼ということで受けてはくれぬだろうか? リヴァイアサン」
「主も承知かと思うが源帥は今は亡き峰滝を暗殺した鬼者じゃ」
「更に源帥は孫である鵠に赤竜以外の家を無き者に知るつもりじゃ。故に主にこの両名を亡き者にして欲しい」
全く......どいつもこいつも.....
以前、戦乱の中にあった時でも別の元老会の代表が来た。
それも幾度となくだ。
いっそ....鵠らに手を貸そうかと思ったほどにだ。
「今主は戦線から離脱しておる。戦死したといえば容易く赤竜の家に近づきやすかろう.....」
そんなんで俺の双子の兄が騙せると思っているのか?自分達が汚れない様にしたいからそんな事を考えるだろうけどな。
「じゃが主がこれで動かぬというのであれば手は打ってあるぞ」
・・・・・・・・何を考えてやがる。くそ爺共が。
周りの木々から物音がした。
音のした方を見る
考えたな.......一家の力を持ってすれば.....ってところか?
鴉の目に映ったのは猿轡をされ、拘束されている静亞だった。
必死に抵抗はしているもののいかせん、静亞を掴んでいる男達の筋肉が常人並ではなかった。
女性である静亞には無理だろう。
「あのおなごを随分と気に入っているそうじゃないかリヴァイアサン......」
「羅門家の娘では一番の良物じゃなあ。わしはこれまで見た時が無いぞ......」
「何人ものおなご達を抱いた主が言うならそうじゃろうなあ......くくくくくくく.....」
このくそ爺共はあえて言わなかった。
一人の男が静亞の着ている服に手をかける。
そして一気に引きちぎる。
「むーーーーーーー!」
何人居るかわからない元老会の崇拝者達に見られているだろうな......
まるで他人事のように思った。
だが、一人の代表が言ったように正直、静亞の事は気に入っていた。
しかしあえてこちらも何も語らなかった。
また......暫くの時間が過ぎた。
静亞の露出した肌は更に白くなっていた。
静亞も一、名門家系の娘として鍛えられてはいるが鴉ほどではない。
今晩のクレア領内の寒さは一番だろう。そう思った。
静亞が少し震えるたび、丁度良い大きさの乳房が震える。寒さでか乳首が立っていた。
「好い加減.....答えぬとおなごの命が無いぞ?」
元から脅しの材料として静亞を誘拐.....連れてきたといったほうが正しいか。
事が終われば恐らく.....麻耶さんと同じ目に会わせる気だろう......
鴉がいたって冷静なのが腹ただしかった。
鴉は静亞が居る方へ向かって歩く。
「主.....何を考えておる?」
「おなごは主が我らにとって良き答えが出たら返すぞ」
「聞いておるのか! リヴァイアサン!」
「・・・・・・・・・」
それでも何も答えない。
大体100m前後まで来ると数十人という元老会の下僕共が現れた。
「答えを出せ。リヴァイアサン」
代表格が問う。
だが、鴉は無視して進む。
「! よせ!」
代表の一人がその代表格を抑えるような言葉を放つ。
しかし、その言葉を聞かず、代表格の者が鴉に襲い掛かる。
腕は良いが甘い。
正直.....本気で戦うときは鬼が出ると考えておくべきだ。
爆風で代表格の者と鴉の姿が見えなくなった。
「ぐぬぬぬぬ.....リヴァイアサン! どこじゃ!」
「てめぇの後ろだ」
一人の代表が死んだ。
「くっ! わしらを守るのじゃ!」
残りの代表二人の下に下僕共が集結する。
「下世な真似を.....!」
元老会の代表二人が一箇所に集まり警戒する。
しかし何もしてこない。
焦りと緊張が包み込む。
「ぶばああああああああああああ!」
背後で大きな叫び声!
一斉に全員が振り向く。
「100で1を相手にする時は一つの場所に居ないほうが生きられる確率があるって知ってたか?」
その声は巨大な爆音でかき消された。
急にだが、リュッカの山脈付近で大雨が降った。
洪水が起きる一歩手前。
ので辺りで火事が起きていた所はあっという間に鎮火した。
鴉は家に静亞を連れて帰り、抱いた。
初めは彼女は気を失っていたが後に意識を取り戻した。
「く....ぁ.........」
初めはあまり受けれてなかったが彼女は酔いしれた。
寒気は既に無くなっていた。
雨雫が流れ落ちるリュッカ。
五月蝿いこともあったが結局は静かな時間だった。
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