別の出会い
アザゼル+鴉
近くの住民から山賊がしょっちゅう現れるから何とか倒して欲しい。
やれやれ....しかし、本当に久し振りだ。
『依頼』で動くとはな.....
話によるとその山賊達は俺の首を狩りたいそうだ。
ま、まだ誰も盗ってないからな。
別の話によるとわざわざ帝国から来たそうだ。
少しは腕のたつ奴が居ると良いけどな。
最近は暇だったので近くの鍛冶屋で戦斧を創った。
我ながら良い出来だ。
丁度良いからこいつで山賊と戦ってみるか。
新しい相棒の名前は........うし。アビスウォー。意は深淵の戦争。
「そんじゃま、山賊退治といきますか」
アビス(こいつ)の大きさは俺の肩ぐらい。重さは.....パンドラ二つ分かな?重装備状態の。
最近、普通は出回ってない仮面を集めるのが趣味?になってしまった。ので、そのうちの一つ。
口元が開いた丁度目の周りを隠すことが出来る仮面を付けていざ出陣。
山賊の行動パターンは傭兵時代に身に染み付いている。
急には動かず、なるべく近隣の町や村などから食料を溜め込んで長期移動をする.....
まだ被害を受けていない町、村は....
「み〜つけた♪」
少し....テンション高いか、俺?
「さ、山賊だーーーーー!」
「逃げろーーーーー!」
山賊達が一軒一軒に火を放つ。
人々を脅し、ここから去らせる為だ。
人々が居なくなり、放たれた火は消されていた。
「よし、食料をかっぱらいな」
山賊の頭......女? 珍しいなあ.....ま、いっか♪
ほんと....自己規制効かなくなりそう.....
「かぜに〜〜〜ゆられてぇ〜〜〜〜」
気の抜けた声が辺りに広がる。
「だ、誰だ!?」
「依頼を受けててめーらを潰しに来たもんだ文句あっか?」
アビスを山賊の頭に向ける。
「命が惜しくないのかい?」
あ、俺のタイプ.......壊れるかもしれない(涙)
「あんたらは俺の首が欲しくないのか?」
「・・・・本物なら欲しいねえ。けど....本物ならこんな罠に簡単に引っかかるのかい?」
家の屋根の上にまだ別勢力が存在した。
いずれも弓矢部隊。頭良いなあ....少なくても俺よりは部隊指揮能力は高いいんじゃないか?
「簡単でよくある手....しかしされどと言う言葉が適任だなあ」
「てめぇ....本当にリヴァイアサンな」
男の言葉が終わる前に屋根から弓矢部隊が落ちた。
「本物なら殺しても暫く死体の状態を維持出来るが?」
「やってくるじゃないか.....こいつの首を取るよ」
女の頭の一言で残りの山賊達が一斉に襲い掛かってきた。
「悪いけど俺は無闇に人の命は奪わない主義なんでね」
全員当て身.....
一回も戦斧を振っていない....全員素手。200近い連中を素手で....
しかも傷は一切付けていない。
「さて....あとはあんただけだ」
強い.....だが、噂では仮面と所持武器が違うぞ? どう言うことだ....
「愛刀の戒神は現在、打っています。仮面は偶然変えてみました」
こっちの心を読んでるのか!? こいつ....
いや待て! 心理戦に持ち込む気か? 下手に考えるのはよすんだ....
「で.....このまま戦わないで逃げるのか?」
最初(はな)からこいつの首を取ることだけ考えてれば良かったんだ!
「かっ.......」
「目先のことを考えないで戦うとこうなるぞ?」
彼女は一気に距離を詰め様として焦った為かリヴァイアサンの行動に反応するのが遅かった。
一発殴れる距離まで近づいた時、脇腹に痛烈な蹴りを入れられ、そのまま一軒の壁に衝突をした。
「は....がぁ.....」
蹴られた脇腹を抑えて立ち上がる。
「ちなみに名前を聞きたいんだけど....よろしいかな?」
冷静だ....本当に冷静だ....むかつく程に冷静だこいつは。
「はぁ....はぁ....ルベンド....サーシャだ.......」
?
今こいつの顔歪まなかったか?
「ルベンド.....となるとお前はディパンの孫に当たるのか.....」
「てめえ! 祖父ちゃんを知っているのか!?」
私が頭を勤めるこの山賊団は祖父ちゃんのそのまた祖父ちゃんの世代から続いているそれなりに有名な山賊団....なんでこいつは祖父ちゃんの事を知ってるんだ?
「ぶっちゃけた事を言うけどディパンは汚れ過ぎていたぞ」
言っている意味が解からない......如何いう意味だ!?
「・・・・・貴族の子供を誘拐して身代金を取る前にまだ5歳の幼女を殺したそうだ。バラバラにして親に送り返した。これがディパンが汚れている理由だ」
祖父ちゃんが....そんなことを?
よく....自慢話をしていたあの祖父ちゃんが....?
「奴の時代から居る奴なら知っているぞ....俺はその依頼でディパンを殺した」
「てめぇが.....祖父ちゃんを?」
「二言は無い」
「うわああああああああああああ!」
その後は.....何も覚えてない。
祖父ちゃん....本当なの?
リヴァイアサンの言ったことは本当なの?
「・・・・・・・・・ら」
誰?
「だ........ら」
え?
「大.......しら」
何も聞こえない.....
「大丈....い? .頭」
あ......
「大丈夫ですかい? お頭」
「・・・・・・・ここは?」
「覚えてないんですかい?ここはあっしらが襲った村ですよ」
だんだん彼女は思い出していく。
「! リヴァイアサンは!?」
今となっては宿敵、奴の名を思い出す。
「威勢のいいこと」
「きさまぁ!」
「お頭!」
ディパンの時代から居る山賊がサーシャを止める。
「何故止める!? こいつは祖父ちゃんを!」
「お頭......奴が言ったのは本当です.....」
「え?」
今まで怒気に満ちていた彼女の怒気が静まる。
「生前....ディパンのお頭は切羽詰まっていたんです....何としても金が欲しくて...だから.....あんなことを....」
今にも泣き出しそうだった。
それはそうなのだ。今まで彼女がどれだけ祖父を慕っていたか.....どれだけ好きだったか。皆分かる。
「お頭が....ディパンのお頭を慕っていたのは十分に皆知ってやした。だから今日まで言えなくて......」
「そん.....な.....祖父ちゃんが.....」
再び彼女は気を失った。
「・・・・・・やれやれだ」
リヴァイアサンはそこを後にした。
後日。
彼女は目覚める。
全体に木の言い匂いが広がる部屋で。
「で....俺が暫く預かれと?」
リヴァイアサンの声だ....
彼女はおぼろげな感覚でドアに耳を傾ける。
「へい....うちらのとこに居ると逆につれえ思いをする可能性がありやすから.....」
昨日....告白してくれた奴だ....
「・・・・・別に良いが、もう戻ることが無いかもしれないぞ?」
「それはそれで全員覚悟してやす。どうか...お頭のことを.....」
「頭上げてさっさと去れ。いつまでもここに留まってたら死ぬぞ」
頭.....下げたんだ.....今まで見た時無いのに.....
「・・・・・それでは失礼しやす」
「おう」
暫く時間が過ぎた......
「何か言いたかったんじゃないのか?」
やっぱり気付いていたんだ。
そう思いながら戸を開き、リヴァイアサンの顔を見る。
「大好きだった.......信頼していたものがいきなり消えた.....」
彼女はその場に蹲り、泣いた。
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