日常

キロール・シャルンホスト

ガルデス共和国首都のガイ・アヴェリの場末の酒場は喧騒に満ちていた。
現在、ラグライナ帝国とガルデス共和国、クレアムーンとの間に緊張が
極度に高まっているはずだが、そこには昼間から酒を飲んでいる共和国の兵士達の姿があった。
多くの兵士達の喧騒の中だが、ある4人の兵士達が囲むテーブルの回りは静かだった。
「大将、ラグライナはやる気ですねぇ・・・ご苦労なこった」
使い古された剣を持つ兵士が口を開いた。
「・・・ああ」
上座に座る兵士が一言告げた。
「ご苦労なのはうちらも同じ」
驚いたことに女の声が混じる。
兵士のうち一人は女性らしい。
「・・・・違いない」
他の兵士達・・・特に若い兵達と違い彼らは淡々と酒を飲んでいる。
「さて・・・あの連中何人帰って来れるかねぇ・・・・」
騒ぐ兵士達を見やり一人感慨深げに呟くのは若いと形容される年頃の兵士。
「・・・似合わないねぇ、リック」
涼やかな声で笑う女兵士。
「ほんとに、あんた可愛くないなぁ・・・リディア姐さん」
じゃれあう二人を尻目に最年長と思しき兵士が上座に座る兵士に問う。
「隊長・・・じゃない、もう将軍閣下でしたな・・・今回の戦はきついでしょうな」
将軍と呼ばれた、他の兵士と装備も然程変わらない男が答える。
「そうだな・・・・」
「リックの物言いではないですが動員されたヒヨッコども・・・何人帰ってきますかな」
「知らんよ・・・」
そう言って将軍と呼ばれた男は席を立った。
「おや、大将。もう飲まんのですか?」
リックと呼ばれた兵士がそう声を掛ける。
「・・・今日は止めておこう」
そう答えて将軍と呼ばれた男は店の外に向かっていった。
「相変わらずだねぇ、隊長も・・・・あれじゃヒヨッコどもが敵に会う前に震えちまうよ」
リディアと言う名の女兵士は可笑しそうに笑い、残り二人はその言葉に頷き同意していた。

(2002.09.03)


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