雨天

キロール・シャルンホスト

「雨・・・・か」
帝国軍と共和国軍がにらみ合うカルスケート。
共和国の陣にて一人の男が雨に打たれて呟く。
「待機・・・そして、雨・・・・どうにもツイテませんな」
男の呟きに応えるように、おなじく雨に打たれている老兵が口を開く。
「そうだな・・・」
男は無愛想に告げて天を仰ぐ。
空からは大粒の雨が降り注いでいる。
「・・・・奇襲には良い天気だな」
「行軍には最悪ですな、兵の志気は下がり、疲労が溜まりますからな」
「違いない」
男は、そう応えた後、瞑目して雨音を聞く。

ざざざざざざざざ。
男は、雨の音が嫌いではなかった。
静かな室内で雨音を聞きながら本を読むのは味があると思っている。
下手な音楽より遥かに安らぐのだ・・・・・
最も、男は演奏者を部屋に呼べるほど高給取りではないが。

ざざざざざざざざ。
雨は降り止む気配を見せない。
そんな中、両軍の兵は互いににらみ合いを続けている。
互いに殺しあう為に。
・・・この雨は、何者かの嘆きであるのかもしれない・・・・・
未だに戦争を続ける者達に対する・・・・
そこまで考えて、男は苦笑した。
らしくないと・・・・

今日もカルスケートに動きはないようだった・・・・・

(2002.09.21)


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