Legion

キロール・シャルンホスト

「流石だ・・・バーネット将軍」
カルスケートの共和国第10部隊Legion陣地。
その指揮官用天幕の奥からそんな声が漏れた。
Legion隊指揮官キロール・シャルンホストの物だった。
帝国屈指の剛の者でもある帝国第13部隊ブラッディ・クルス指揮官
バーネット=L・クルサードのと一騎打ちにどうにか勝てはしたものの・・・
「剣も持てんか・・・私が老いたか・・・・」
バーネット将軍の繰り出すハルバートの斬撃を剣で受け止めたのだけで未だに腕に力が戻らない。
「力」のみならず「技」「スピード」の乗った斬撃・・・
まして、「遠心力」の篭った一撃だ。
キロールはその瞬間負けを覚悟した程だった。
キロールの武器ツインソードは二つに断たれ、手の中から弾き飛ばされ、最早これまでかと思ったほどだった。
だが、戦場で戦う「兵士」としての経験が「紅い死神」に勝った。
戦場にある武器は、自分の物だけではないと言う事だ。
長剣と戦斧。
この二つの武器はオーソドックスゆえに戦場なら何処にでも転がっている。
そう、死体が持っている武器の最たるものだ。
戦斧でハルバートを迎え撃ち、その間隙を縫って長剣で突きを放ったのだった。
あの一騎打ちを思い出すと今でも背筋に冷たい汗が流れる。
頭を振ってその思いを打ち払っている所に声が掛けられた。
「お呼びですか、将軍」
残り8人のLegion隊小隊長達だった。

キロールは今は前線に立てぬ旨を伝えると、彼等は口々に敵将を称え、そして・・・
「では、ケクリッツ小隊、シュタイン小隊、グナイゼナウ小隊、グロスマン小隊が最前線に立ち敵法術部隊に突撃を行います」
一人の小隊長が進言した。
続けざまに
「ブリュッヘル、ランリュウの2小隊が陽動部隊として敵左翼に向います」
また、別の小隊長が進言する。
「ボイエン小隊、ゴードン小隊は、リック・ベルクルス副将の帰還を待ち、その後突撃を敢行します」
キロールが口を出すまでも無く、プランが練られていった。
「宜しいでしょうか、将軍」
8人全員が同時に一糸乱れぬ共和国式敬礼を行い上司の裁可を待つ。
「・・・良くぞ育った・・・・最早、私が告げる言葉は無い・・・」
若い世代の巣立ちは、以前から感じていた。
今、共和国で奮戦している各将達。
だが、目の前の兵たちがよもやここまでとは・・・・
「私は、陣にて再び戦場に立てるように務める。貴公等と共に戦場に立つために」
そう言って、一拍置いた後に。 「行け!共和国第10部隊『Legion』・・・その意味帝国軍に教えてやれ!」
「了解!」
号令と共に己の仕事を果たすべく彼等は散っていく。
「・・・奴等が生き残れば、共和国はまだ戦える」
キロール・シャルンホストは静かに呟き
「グラハド、ラルフ、バロス、リディア、エーリッヒ、ミュフリング、ローン、リュッヘル・・・Legionを彩った精鋭達よ・・・私も逝くとしよう・・・・お前たちに恥じぬ戦の果て にな!!」
そう笑った、高らかに。
カルスケートの共和国第10部隊Legion陣地。
その指揮官用天幕の奥から漏れた笑い声。
その意味を知る者は、天幕の奥に居る指揮官のみであった。
<了>

(2002.11.26)


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