あるヘッポコ氷魔法使いの一日

コマ・スペルンギルド

よく晴れた日だった。
僕、コマ・スペルンギルドは、自分の右手に視線を定めて佇んでいた。

山奥の田舎から出てきて早5日、僕は港町のリュッカに辿り着いていた。
流石は港町、街中にはヒトとモノが溢れ、田舎育ちの僕の好奇心をいやがうえにも刺激する。
活気に溢れたその様子は、僕がこの街を気に入るには充分だった。

僕が田舎から出てきた理由は一つ。
そこそこ使えるようになったこの氷魔法とにわか仕込みの兵法を駆使して、
なんとか仕官の道を探す事。
まぁ、早い話がさっさと独立しろって事だ。
仕官ならば衣食住は保証されているし、
この戦乱の世での独立のきっかけには非常に都合がいいのだ。

が、ここで一つ問題が発生した。
一体どこの国に行こうか、である。
ラグナイア帝国、ガルデス共和国、そしてクレアムーン。
ぶっちゃけ、別に仕官先はどこでも構わなかった。
ただ、ラグナイアに行く気はそもそもなかった。
理由は・・・一番強いから(爆)。
一番強い所に入って弱い所を叩き潰すよりも、
弱い所に入って一番強い所を倒す方が性に合っている。
残るはガルデス共和国とクレアムーン。


「さてさて・・・」

そういうわけで、僕は改めて自分の右手に意識を集中した。
掌の中には、一枚のコイン。
このコインが自分のこれからを決定付けるのかと思うと、
ちゃらんぽらんな僕でもいささか緊張気味だ。

表が出れば、共和国。
裏が出れば、クレムーン。

僕は右手の親指に力を込めて、コインを中空へと弾き飛ばした。
コインは勢いよく回転して、空気を切り裂きながら落下してくる。

シュルルルルルル・・・・パシッ!

目の前まで落ちてきたコインを、横殴り気味に掴み取る。
しばしの間の後開いた拳の中には・・・裏になったコインが握られていた。

「クレアムーンか・・・」

僕は呟く。

「そういや、クレアって法術部隊が少ないとか聞いたなぁ。
 僕の力も、少しは重宝がられるかもな」


それだけ言うと、僕は足を街の西へと向けた。
クレアムーンへと続くその道へ・・・。

(2002.09.08)


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