目が覚めるとそこは

コマ・スペルンギルド

「あ、あの・・・メイリィさん・・・」
「えっ、なんですかコマさん?」
「あ、あのですね・・・」
「は、はい・・・」
「ぼぼぼぼぼ・・・僕と・・・」
「・・・僕と・・・?」
「ぼ、僕と・・・結婚してくださいッ!」
「えっ!? あ・・・あの・・・私・・・」
「は、はい・・・ッ!」
「あの・・・ご、ゴメンなさいっ! 私やっぱり、女難の人はちょっと・・・」
「('Д ̄;;;;;;;;;;;;;」
「ですから、私の事は忘れてください・・・。あなたと過ごした日々は・・・楽しかった・・・。
 さようなら・・・ッ!」
「ああッ!? メイリィさん待ってー! 待ってぇぇぇぇぇ!!!!」


「ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・え?」

僕―コマ・スペルンギルドは、大声を上げて飛び起きた。
飛び起きた・・・?
寝起きの頭で現状確認を始める。
いつの間にか寝かされていたベッド、着せられていた帝国のものと思しき寝巻き、体中に巻かれた包帯。
そして・・・。

「ここは・・・?」

そう言いながら周囲を見回す。
見慣れない部屋。
部屋の作りや調度品から考えても、まず帝国のものだ。
まさか天国に、こんないかにも来客用としか思えないような部屋など用意されているわけないだろう。
・・・生きてたのか・・・。てっきりあのまま逝っちまうものかと・・・。
と、そう思ったところで体中に痛みが走る。

「イデェッ!?」

自分がまだ生きているのだという事を実感する。
ドサっと後頭部から枕に向かって倒れこむと、そこには見知らぬ天井が広がっていた。
痛みのお陰で、しだいに頭がハッキリしてくる。
僕は・・・そうだ、メイリィさんを訪ねて帝国まで辿りついて・・・
そして、彼女の顔を見たら、張り詰めていたものが切れて、一気に倒れちゃったんだっけ・・・。

「・・・」

無言で天井を見続け、考え続ける。
多分ここはメイリィさんの家かどっかで、倒れた僕を運んで手当てしてくれたと、そういう事なんだろう。

「その通りだニャ」
「ぬおおッ!?」

いきなり耳元に飛び込んできた声に、激しく驚く。

「し、紫苑!? お前、いつの間に・・・」
「気にしちゃ負けだニャ」

気にしちゃ負けって・・・コイツ、僕の口調に似てきやがったな・・・。

「それより主、メイリィに感謝するニャ」
「え、メイリィさんに・・・?」
「そうだニャ。いきなり倒れた主を介抱して、3日間ほとんど寝ずに看病してたんだニャ」
「3日間も!? って、僕そんなに眠ってたんか・・・」
「アタシも昨日ここに辿りついたんだけど、驚いたニャ。
 主、重体で死んでもおかしくないような状態だったニャ」
「それで、メイリィさんは?」
「流石に疲れて、隣りの部屋で眠ってるニャ。あんまり大きい声出しちゃダメだニャ」
「そっか・・・」
「アタシもちょっと疲れたから・・・眠らせてもらうニャ・・・」

そう言うと、紫苑は僕の枕元で身体を丸め、すぅすぅと寝息を立て始める。
その寝顔が、いつもの皮肉っぽいコイツの性格からは想像も出来ない程普通の猫のそれで、
僕は思わずおかしくなってしまった。

「さてと・・・これからどうしたもんかな・・・」

僕は呟く。
クレアムーンに戻る気はないし、何より怪我で動けそうもないし。
とりあえず、この怪我が治るまでは、ここに居候させてもらおうかな・・・ちょっと図々しいけど。

これからの事に思いを馳せ、痛みの残る身体が気になりながらも、僕は再び深い眠りへと落ちていった。

(2002.12.17)


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