その異名にかけて
永倉 光成
−シチルの街北西・クレアムーン国 防衛線陣地−
優に6000に達する帝国軍部隊の猛攻をしのぎきった第3部隊及び蒼翼隊・・・。
「我が隊の残存兵力は?」
「600騎と少々です」
「ふむ・・・」
最前線にて、蒼翼隊の盾の役割を担う光成麾下第3部隊の陣地である。
光成は僅かな思案の後、文を一枚、手早くしたためた。
「・・・これを、コマ将軍の元へ。それと小隊長を集めよ」
−貴隊の援護に心から感謝する
この後の防衛はお頼みします−
永倉光成
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内容は、ただそれだけの物であった。
「千騎長の名、伊達ではないことを教えてやろう・・・!」
「さて。皆も承知のことと思うが、我らは聖都防衛の鍵を握っている。
敵軍は精強で数も多く、友軍の増援はまだ遠い。だが一部を敗走させられれば
保持することは十分に可能である。この上は、残存兵力を結集し
攻勢に出ようと思う。最前線における指揮は私が取ろう」
皆が息をのむ。
「犬死には無用。蛮勇も許さん。ただし、死ぬことが忠義を現す
ただ一つの方法でもない。負傷者はもとより、聖都に戻ることで
救国を成さんとする者は戻れ。出撃は一刻後だ。・・・以上」
「・・・光成閣下に、礼!」
宗冬が号令をかけ、皆それぞれに主君への礼を取った。
− 一刻の後 −
「・・・宗冬。どれほど残った?」
「第3部隊に所属する総員であります」
「そうか・・・」
光成は僅かに微笑む。酔狂な部下達だと、光成は一人ごちた。
その者達を率いることができることへの感謝と共に。
「よし、これより南面に展開する帝国軍第10部隊に総攻撃を掛ける!」
光成は、自らの槍を高く掲げた。その穂先にはクレアムーンの御旗。
「皆 最後までクレアムーンの将であれ!」
「将軍閣下に続け、全軍前進!」 (了)
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