人体実験

神那 美雪

 ある日美雪はいつものように祈祷のため境内を歩いていた。
しかし、今日に限ってヴェルナ・風華の両名は所用のためついて来ていなかった。
「ふぅ、今日は遅くなってしまいました。いそがないと・・・あれっ」
境内の広場に人影が見える・・・一人は倒れているのがわかる。
「まぁ大変!!・・・」
美雪が駆けつけるとそこには両足が痙攣し悶絶している刹那の姿があった。
「・・・かっ・・・神城さん!! しっかり・・・どうしたのですか!?」
刹那の頭を抱え上げちょうど膝枕になる体勢で神城を介抱する美雪。
「・・・神那さん・・・あっ・・・アザゼルに・・・気をつけろ(ガクッ)」
美雪の膝枕の上だからだろうか・・・悶絶の表情から安らぎの表情で崩れ落ちる。
「ちょっ・・・神城さん!! このままで落ちないで・・・神城さん!! アザゼルさんって一体???」
膝枕状態で介抱を続ける美雪の背後から急に叫び声が聞こえてきた。
「ふっふっふっ・・・僕を呼びましたかな? ・・・お嬢さん・・・」
「ほぇっ?」
声のした方へ向くも誰もいない。
「ほら・・・こっちですよ・・・」
美雪のちょうど肩に手がかかった。
「ひぃっ・・・!!」
お化けの類が苦手な美雪は思わず鳥肌を立たせ叫び声をあげた。
「・・・おや、驚かせたかな・・・私はアザゼル・・・なぁに一介の医者だよ」
「おっお医者様ですか? よかったですぅ・・・神城さんが悶絶して倒れてしまいましたのでよかったら見ていただけませんでしょうか?」
ニコッと微笑をうかべアザゼルに依頼する美雪・・・その姿にニヤリとするアザゼル。
「・・・お嬢さん・・・私はお医者であると同時に・・・」
「へっ?」
微笑んで美雪の背後に回るアザゼル・・・
「サイエンティストなのですよ・・・」
そして注射器を取り出す。
「・・・ちょっとした実験台になって貰おうと思いましてね・・・なぁにただの興奮剤・・・媚薬ですよ・・・女性に試したいため......(美雪の背後に周ってドス)
「えっ・・・きゃあ〜!!」
その場に倒れこむ美雪。
「“薬”が付いているから(真顔)作るのが医者の務めです」
「・・・・・貴方、琥音といい勝負ですね」
いつの間にか気づいた刹那が遠目から言い放った。
「・・・なっ・・・身体が・・・」
「いやね、あるひとから依頼ですので.....」
微笑を浮かべるアザゼルと両手を火照った身体にあてて身悶える美雪。
「うん、結構良くできているなぁ・・・この薬・・・」
アザゼルが満足そうに注射器を掲げる・・・とその時・・・
「遅くなりましたの〜。早く行かないと美雪さんが待っていますの〜」
境内を小走りで急ぐのは風華である。
風華は美雪が姉と慕っている将軍であり・・・風華もまた妹として可愛がっている。
「ちょうど良かった・・・ほれっ・・・」
ひゅっと投げた注射器が風華の首元にジャストヒット!!
「はぇぇ??? 何ですの〜???」
訳も判らないという表情の風華・・・そこへアザゼルが現れた。
「何 ・・・ちょっとした実験ですよ・・・」
「ふぇぇ〜、何か体が熱いです〜(目がポ〜、足がくらくら〜)」
「なお、私が開発した中和剤以外を飲ませると暴走する危険性があるのでご注意を(何処からともなく)」

「風華姉様・・・(ハァハァ)・・・(ご想像下さい)」
「美雪さん・・・そこですのぉ・・・(ご想像下さい)」
「いやぁ結構効きますねぇ・・・依頼主も大変満足でしょう・・・」
美雪・風華の悶えぶりを見て上機嫌のアザゼル・・・しかしその上機嫌さに後ろから近づく影に気づかなかった・・・。
「こんの外道が!!!」
「ぶへぇ〜!!!」
振り下ろされたゴールデンハンマー(オイ)の直撃をうけその場で悶絶するアザゼル・・・振り下ろしたのは肩まであるストレートの赤い髪でロープに重ね着をしている女性・・・蘭であった。
「お二方・・・大丈夫ですか? さぁこれを・・・」
二人に中和剤を飲ませる。

「ふぅ助かりました・・・」
「本当に・・・ありがとうですの・・・」
「いえいえ・・・女性の敵は見逃せないですからね」
美雪・風華・蘭はその場で談笑をはじめた。
そして・・・
「風華姉様!! アザゼルさんが・・・」
「いないですのぉ〜!」
・・・しかしその姿を遠くで見る影がひとつ・・・。
「・・・言い忘れていました。その薬は潜伏性があるのですよ・・・今日は暑い夜になりますよ・・・」


続く

(2002.10.16)


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