病気
神那 美雪
いつものように美雪は宮廷の中庭で他の将軍たちとの会話に華を咲かせていた。
ただいつもと違うところは、美雪がいつもの元気がないことである。
「くしゅん・・・」
ふいに、美雪が女の子らしく両手で顔を覆いながらくしゃみをした。
「美雪さん・・・大丈夫ですの・・・?」
心配そうな眼差しで美雪の背中を覆う風華。
「んっ・・・大丈夫です・・・姉様・・・」
気丈に振舞う美雪ではあるがいつもと様子が違うことに風華は気づいていた。
「美雪さん・・・顔が赤いですの・・・もしかしたら風邪をひいているのでは」
「・・・そうかもしれません・・・」
足元がふらつく美雪を風華が支えた。
「美雪さん・・・身体が熱いですの! ・・・そんな身体でこんなところにきちゃだめです! お部屋までいきますの!」
「・・・」
美雪からは返事がない。
熱と今までの疲れでぐったりしている状態。
「美雪さん・・・しっかりするですの!」
必死に風華が美雪の意識を戻そうと努力するも美雪はまぶたを閉じたまま荒い呼吸をしている。
一方偶然そこを通りかかった一人の男性がいた。
「はぁ〜・・・メイリィさん・・・いつになったら僕に振り向いてくれるのだろう・・・!? あれは!!」
「あっコマさん・・・調度よかったですの・・・美雪さんが倒れてしまって・・・私一人じゃ抱え上げられませんでしたの・・・コマさん手伝ってはいただけませんか?」
「ふむっ・・・見たところ風邪のようですね・・・このような寒い中巫女衣のみで外に出るから・・・」
コマの当然の一言に風華もハッと気づく。
「そうでしたの・・・美雪さんこのままじゃ寒いですの!」
「そ・こ・で・・・」
コマがニヤリと微笑を浮かべはなった一言・・・後に彼はこのことをこう振り返った。
『その一言がすべてだった』と・・・
「暖めるならば人肌がいちば・・・ぐげっ」
鞘に入ったままではあったが風華の自慢の薙刀で一閃。
「何を想像しながら言っているですの!」
「いや・・・俺むはただ・・・当然のことを・・・」
「顔がにやけていますの!」
「いや・・・元々このような・・・」
何か言い返そうとしたが風華の睨み付けに出てきた言葉を飲み込んだ。
女難・・・その言葉が彼の全てを物語る・・・。
風華はいそいそと自らの上着を美雪にかけ抱えあげて美雪の居室へと向かった。
美雪を布団に寝かせ冷えた布で美雪の汗をふき取る。
「美雪さん・・・しっかりして下さい・・・」
心配そうに風華は美雪の手を強く握りしめた。
そのころ美雪は夢の中にいた。
小さなころ自分にいつも自慢話を話していた、豪快だけど優しい父・・・ちょっと病弱な自分を一生懸命励ましてくれた兄・・・そして、いつも自分の近くにいてくれ優しく見守っていてくれた母・・・そんな優しい家族に囲まれた美雪・・・
このような風景の中で・・・ずっといたいと考えていたそのとき、とっさに声が聞こえてきた。
「美雪さん・・・美雪さん目を覚まして・・・」
どこかで聞いた優しい声・・・母様?
美雪が薄目を開けた・・・まぶしい光とともにロングヘアーに大きなリボンが視界に入る。
「美雪さん・・・よかったですの! 目を覚ましてくれましたの!」
風華が勢いよく抱きつく・・・その目にはうっすらと涙を浮かべ。
「姉様・・・私・・・いったい・・・」
「美雪さん、こんな寒いのに巫女衣だけで外にでると風邪をひいて当然です。」
とはコマの台詞・・・コマもあの後薬を届けに美雪の居室へ来ていた。
「美雪さん・・・丸一日目を覚ましませんでしたの・・・このまま目を覚まさないのかと・・・私・・・」
再び美雪に抱きつく風華・・・その涙に連れ涙する美雪。
「美しい姉妹愛ですね・・・では私はこれで・・・薬は置いていきます。」
コマが立ち上がったとき美雪が声をかけた。
「ありがとうございました。コマさん・・・見直しました」
「いえ・・・当然のことをしただけですよ・・・」
「美雪さん・・・おなか空きませんか?お粥作りましたの・・・」
風華が茶碗を持ち上げ美雪の口に粥を運ぶ。
「姉様ぁ・・・これは姉様が手作りで・・・」
「当然ですの・・・美雪さんのため作りました」
「美味しいです・・・姉様・・・」
「何ですの? 美雪さん?」
「美雪を絶対一人にしないで下さい。」
涙ながらに訴える美雪・・・身寄りのない者の定め・・・。
そんな美雪の不安を和らげるよう優しく髪を撫で風華は・・・最高の微笑みで
「勿論ですの! いつまでも一緒ですの!」
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